異世界でカフェを開店しました。

甘沢林檎

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11巻

11-3

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「お腹空いてません? 何か食べます?」

 お昼を過ぎているためか、デリアが気遣ってくれる。それにリサは手を振って答えた。

「調理実習で見本用に作ったのを食べてきたから大丈夫。ところで二人は何してるの?」
「補充用のナプキンをたたみながら、フェアの接客について考えてたの」
「私はスーザノウルに行ったことがないから、オリヴィアにいろいろ聞いてたのよ」

 どうやら二人はフェアをするにあたり、スーザノウルのことをお客さんから聞かれた時にどう説明するかを考えていたらしい。

「実際は、お料理に関することを聞かれると思うけれど、知識は深めておいた方がいいでしょう?」

 オリヴィアの言葉に、リサは「なるほど」とうなずく。よりよい接客を目指して準備してくれる二人がとても心強い。

「そこまで考えてなかったから、助かるよ~! こっちも、頑張っておいしいメニューを作るからね」
「ふふふ、期待してるわ」

 気合いを入れるように胸の前で両手を握るリサを、二人は微笑ましそうに見つめた。
 接客の方はひとまずオリヴィアとデリアに任せ、リサたちはメニューの方を考えなければならない。テキパキとカフェの制服に着替えて、厨房ちゅうぼうへ向かう。

「お待たせ~。いいのできた?」

 フェアの目玉であるパルゥシャのスイーツは、プリン以外はジークに一任している。リサはスーザノウルの他の食材を使った料理を担当していた。ヘクターは二人の補佐をしてくれる。

「いくつか作ってみた。ケーキ、タルト、ムースの三種類だな。ようやくパルゥシャの扱いに慣れてきたところだ」
「おお~、さっそくいろいろ作ったね~」

 ジークは冷蔵庫で冷やしていたスイーツを取り出し、調理台に並べていく。
 ショートケーキ風のスポンジ生地と、生クリームを使ったパルゥシャのケーキ。
 ナッツのクリームを敷き詰め、その上にカットしたパルゥシャをふんだんに盛り付けたタルト。
 ピューレにしたパルゥシャと生クリームでふんわりとした食感を出し、なおかつ綺麗な黄色をしたムース。
 形も食感も違う三つのスイーツを、ジークとヘクターは午前中の間に作り上げたようだ。

「それぞれ微調整は必要だと思うが、基本的にはこんな感じでいきたいと思う」
「うん、いいんじゃないかな。あと長期間のフェアだから、販売する順番も決めないとだね」
「確かにそうだな。お客さんが飽きないように工夫しないと」

 リサとジークが話すのを、ヘクターは「なるほど」とうなずきながら聞いている。

「じゃあ、私の方はひとまずプリンを作って、そのあと料理を考えようかな」
「ああ、期待してる。俺はムースにもう少し手を加えてみる」

 念願のパルゥシャプリンを食べられると思ってか、ジークはウキウキとした様子で自分の作業に戻っていった。

「ジークってば、ご機嫌だなぁ……」

 リサが小さく笑うと、なぜかヘクターはぎょっとした。そして小声でリサに聞く。

「ジークさん、ご機嫌なんですか? 全然そうは見えないですけど……」
「あ~、あれでもすごいウキウキしてるんだよね……顔には出てないけど、なんていうか……雰囲気が違うのかな?」

 ヘクターはまじまじとジークを見つめる。どう見ても無表情だ。
 しかし、ジークと出会って数年が経ち、今では夫婦として生活も共にしているリサには、内心はしゃいでいるのが手に取るようにわかった。

「声もはずんでたし、少し口元もゆるんでたし、本当にプリンが好きなんだなーって」

 ヘクターは再びジークを見て「声……? 口元……?」と言いつつ呆然としている。そんなヘクターをよそに、リサは試作を開始した。
 まずはジーク待望のパルゥシャプリンだ。
 熟したパルゥシャの皮をいて種を取り除き、果肉をサイコロ状にカットする。その中で形がいびつなものや、熟しすぎて柔らかくなっているものを集め、ミキサーにセット。パルゥシャがなめらかな液状になったらピューレの完成だ。
 次は鍋に生クリームとミルクを入れ、火にかける。沸騰する直前まで温め、そこに砂糖を加えてよく混ぜる。
 砂糖が溶けたら今度は、グリッツというゼラチンのような性質を持つ果汁を加えて、さらにしっかり混ぜるのだ。
 そこで鍋を火から下ろし、先程作ったパルゥシャのピューレを加えていく。真っ白だった鍋が黄色に変わり、ミルクとパルゥシャの香りが混ざり合う。
 次は氷水を張ったボウルに鍋の底をひたし、ゆっくりとかき混ぜる。冷めてとろみが出てきたら氷水から上げ、ガラスのプリンカップに注ぎ入れていく。
 カップの六分目くらいまで入れたら、サイコロ状にカットしておいたパルゥシャを一カップにつき数個ずつ入れる。
 氷水で冷ますのは少し手間がかかるが、カットして入れた生のパルゥシャの食感を保つことができ、なおかつとろみがつくことで果肉が底に沈むのを防ぐことができるのだ。
 ここまで来たら、あとは冷蔵庫でしっかり固めるだけだ。
 リサは作業をしながら、時々ジークとヘクターからチラチラと視線を向けられるのを感じていた。どうやら彼らはパルゥシャプリンのことがとても気になっているらしい。作り方は特に難しくないので、後で二人にも教えようとリサは思った。
 続いて、食事メニューの方に取りかかる。
 リサには今回、スーザノウルの食材を使ってぜひ作りたいものがあった。
 最初に取り出したのは、ある粉だ。
 そこで好奇心に駆られたのか、ヘクターがささっとリサのそばに寄ってくる。

「それ、なんですか? 倉庫にあったのを見ましたが、何の粉なのかわからなくて……」
「これはスーザノウル特産の泥麦どろむぎっていう植物を粉にしたものだよ。フォーのもとって言えば、わかりやすいかな?」
「フォーって、この粉からできてたんですね。へぇ~」

 泥麦どろむぎはお米の一種だ。フェリフォミアで食べられているものより、粒が長くて粘りねば気が少ない。
 以前、スーザノウルの料理人がカフェで料理を学びに来た時、リサはこの泥麦どろむぎの粉を使って、フォーというベトナムの麺料理を作った。
 スーザノウルは土地柄か小麦があまりとれず、代わりにコグルというトウモロコシに似た穀物を主食としている。泥麦どろむぎも地域によっては食べられているが、あまりおいしくないため、現地の人々は活用法を探っていた。
 そこでリサがフォーを教えたのだ。それ以来、フォーはスーザノウルでよく食べられるようになり、麺も製品化している。
 カフェでも何度かメニューに出しているが、麺を手作りするのは大変なため、もっぱら製品化された乾麺を使っていた。

「じゃあ、これでフォーを作るんですか?」
「今日作るのは違うものだよ」

 そう言って、リサはボウルを用意する。そこに泥麦どろむぎの米粉と、ジャガイモに似たムム芋のでんぷんを粉にしたものを入れ、ぬるま湯を加えて泡立て器でよく混ぜた。
 水の量を加減し、どろっとした液状になったところで、今度はフライパンを用意する。
 弱火でほんの少し温めたフライパンに、米粉とでんぷん粉の液を流し入れ、お玉で薄く広げていく。
 火が通ると生地は半透明になってくる。全体に火が通ったところでフライパンをひっくり返し、お皿にのせようとしたのだが――

「ああ! くっついちゃった」

 ひっくり返しても、生地はフライパンにくっついたまま落ちてこない。

「うーん……テフロン加工してないフライパンでは無理があったか……」

 リサが元の世界で作った時は、この方法でできたのだが、こちらの世界ではできないようだ。

「テフロン……? よくわかりませんが、焼く前に油を引いたらいいんじゃないですか?」

 リサの発言に、ヘクターが首を傾げつつ言った。

「それしかないかなぁ……。とりあえず油を引いてやってみるか」

 リサとしては、その方法はあまり取りたくなかったが、ものは試しだ。
 へばりついた生地をフライ返しでぎ取る。そうして綺麗になったフライパンに薄く油を引き、生地を伸ばした。
 先程と同じように全体に火が通ったところで、ひっくり返す。すると、今度はフライパンから簡単にがれ落ちた。
 試しに生地の端をちぎり、食べてみる。

「ああ……やっぱり油の風味がして、食感もいまいちだなぁ」
「俺も食べてみていいですか?」
「いいけど、失敗だからあまりおすすめしないかな」

 不出来なものを食べさせるのは気が進まず、リサは苦笑する。けれど、ヘクターは興味があるようで、自分も端をちぎって口に入れた。

「……ん? なんですか、これ?」

 思っていたのと違ったのか、ヘクターは微妙な顔をする。

「本当はライスペーパーを作ろうと思ったの。フォーをシート状にしたようなものだね」

 そう、リサは元の世界でいうライスペーパーを手作りしようと思っていたのだ。

「シート? それって何に使うんですか?」
「代表的なのは生春巻きだね。野菜や魚介や肉を、ライスペーパーで巻いた料理なんだ。普通の春巻きは皮に包んだら焼いたり揚げたりするけど、ライスペーパーはこのまま食ベられるから生春巻きっていうの」
「なるほど、だからシート状にするんですね」
「そういうこと。でもフライパンで作れないとなると、あれしかないか……」

 リサは次の手段を取ることにする。
 用意したのは水を張った鍋。その上に目の細かい布を被せ、表面がたわまないようにピンと張り、鍋のふちをぐるりと紐で縛る。
 その鍋をそのまま火にかけた。

「ええ、なんで鍋に布を!?」

 見たことのないやり方に、ヘクターは目を見開く。一方リサは、いろいろな大きさの鍋が置かれた場所をごそごそとあさっていた。

「これはちょっと大きいか……。こっちはちょうどいいかな?」

 そう言ってリサが持ってきたのは、ドーム状になった鍋のふただ。試しに布を張った鍋に被せてみると、やはり大きさがちょうどよかった。
 鍋の水は次第に温まり、布から蒸気が出てくる。火を弱めて蒸気の量を調節すると、リサはお玉ですくった米粉とでんぷんの液を布の上に落とした。

「え!?」

 驚くヘクターをよそに、リサは布の上に落とした液を、お玉で丸く伸ばす。そして、用意していたふたを被せた。

「あとは、長いヘラみたいなのが必要なんだけど……パレットナイフでいいか」
「これを使ってくれ」

 リサのつぶやきを拾ったのはジークだった。どうやら彼も気になってリサの作業を見ていたらしい。
 パレットナイフは、本来ケーキのクリームを塗ったり伸ばしたりするものだが、先端が丸く、薄くて長い形状が、今回の作業にはうってつけだった。
 ジークからパレットナイフを受け取ったリサは、しばし待ってから鍋のふたを開ける。

「あ、今度は良さそう」

 布の上には、蒸気で蒸された生地が見事に出来上がっていた。
 リサは慎重に端っこをがし、布との間にパレットナイフを差し込む。パレットナイフでがした生地を、ひっくり返した木製のざるに被せるように置いた。

「これがライスペーパーだよ」
「おお! さっきより、しっとりしてそうですね」
「そうだね! 本来はこっちの作り方が正しいんだよ」

 リサの言葉に、ジークが難しい顔をする。

「それにしても手間がかかるな」
「でも、乾燥させれば保存が利くよ。水で戻してすぐに使えるから、大量に作っておけば大丈夫だけど、定番メニューにするのはちょっと無理かもね。アシュリー商会で商品化してくれないかなぁ……」

 リサの元いた世界では、市販のライスペーパーが容易に手に入った。それだけに、わざわざ手作りするのは大変だと思ってしまう。
 もちろん手作りならではの良さもあるが、作業効率を考えるとカフェで常備するのは難しい。
 スーザノウルではフォーの乾麺が商品化されているので、アシュリー商会が無理なら向こうの商会にライスペーパーを売り込んでもいいかなとリサは思った。
 ひとまず今日使う分を十枚ほど作り上げる。
 ざるの上で冷ましている間に、巻くための具材の準備に取りかかった。
 生春巻きのいいところは、野菜をたっぷりとれるところだ。なので、新鮮な野菜をたくさん使おうと思っている。
 シャキシャキの歯ごたえがある、きゅうりに似たミズウリ。鮮やかな赤紫色の、にんじんのようなパニップ。みずみずしい葉物野菜で、レタスに似たサニーチェ。それと、エビのようなアッガーをボイルしたもの。
 具材の下準備をしたら、先程作ったばかりのライスペーパーを広げる。
 アッガー、ミズウリ、パニップ、サニーチェの順にのせ、両サイドを内側に折り込んでから、くるくると巻いていく。
 巻き方がゆるいと食べる時に崩れてしまうので、しっかりめに巻くのがポイントだ。
 具材をすべて巻き終えたら、次はソースの準備。今回は二種類のソースを作ろうと思っている。
 まずは定番のスイートチリソースから。
 ペルテンというパプリカのような形の唐辛子をみじん切りにし、リッケロというにんにくに似た根菜をすりおろす。
 それらを鍋に入れたら、花蜜はなみつ、ビネガー、醤油を加えて弱火で煮る。本当はニョクマムと呼ばれる魚醤ぎょしょうがあれば良かったのだが、この世界にはないので醤油で代用したのだ。
 花蜜はなみつが溶けてなじみ、リッケロのいい香りがしてきたら、沸騰直前で火を止める。あとは冷ませば完成だ。
 辛いのが苦手な人のために、別のソースも用意する。
 こちらはとても簡単。醤油、花蜜はなみつ、ビネガーを混ぜるだけだ。これにマヨネーズを加えてもおいしい。マヨネーズはお好みで使ってもらえるよう、別に添えることにした。



   第六章 スイーツがいっぱいです。


 使用した調理道具などを洗い、片付け終えると、いつの間にか夕方になっていた。
 そろそろ試食をしようとリサが思った時、ちょうどオリヴィアとデリアが厨房ちゅうぼうに顔を出した。

「二人とも、いいところに! これ二階に運んでもらえる?」

 リサが盛り付けた生春巻きを指差すと、二人は興味津々きょうみしんしんな様子でそれを眺める。

「これが新しい料理なのね!」
「早く食べたいわ~!」

 オリヴィアとデリアはそう言いながら、お皿をトレーに載せ、手分けして二階へ運んでいく。

「ジークの方はどう?」

 リサが声をかけると、ジークの方も出来上がったケーキを切り分けているところだった。

「おお、さっきより増えてる!」

 ジークのそばに行ってみれば、調理台の上にはお昼に見た時よりも多くのスイーツが並んでいる。

「時間があったから、いろいろ試してみようと思って」

 リサが生春巻きを作っている間に、あれこれ試作していたらしい。長期間のフェアということもあり、ジークなりにいろいろなバリエーションを考えていたようだ。
 どれもパルゥシャを使っているが、材料の組み合わせを変えた様々な形のスイーツが並ぶと壮観だ。

「食べるのが楽しみ!」

 パルゥシャプリン以外のスイーツはジークに一任していたため、リサも今回の試食で初めて食べることになる。新しいおいしさに出会える期待に、リサの心はわくわくした。

「俺はプリンが楽しみだ。もちろん生春巻きも」

 リサもジークもお互いの料理が食べたくて、ウキウキしながら試食の準備を進めた。


 二階のダイニングテーブルにカフェのメンバーが集まった。
 テーブルの上には、リサとジークが試作したフェアのメニューが並んでいる。中でも圧巻なのが、ジークの作ったパルゥシャスイーツの数々だ。
 ショートケーキ、タルト、ムースに加えて、リサが生春巻きを作っている間に仕上げたらしいロールケーキもある。
 リサが作ったパルゥシャプリンと生春巻きを合わせて、計六品が並んでいた。

「お食事メニューから試食した方がいいかな?」

 ひとまず生春巻きを試食し、その後スイーツを食べ比べた方がいいだろう。リサがそう提案すると、メンバー全員がうなずいて、各自おはしやフォークを手に取った。

「じゃあ、まずこの料理の説明をするね。これは生春巻きっていうの。揚げ春巻きはエドガー殿下の結婚式の時に作ったから、みんな知ってるよね?」
「じゃあ、これは揚げてない春巻きってこと?」

 オリヴィアがリサに質問する。

「同じ春巻きという名前ではあるんだけど、皮も中身も揚げ春巻きとは違うから、別の料理だと思ってもらった方がいいかも。とりあえず一度食べてみよう! タレは二種類あって、赤い方が甘くて辛いスイートチリソース。もう片方が醤油ベースのタレだよ。マヨネーズはお好みで、醤油のベースのタレに混ぜてもおいしいよ! どうぞ召し上がれ」

 まずは食べてもらった方がいいと思い、リサは説明を切り上げ、生春巻きを勧めた。
 メンバーは各々おのおのはしやフォークで生春巻きをまみ、小皿に入ったタレにつけて食べ始める。リサも出来を確認するため、生春巻きにはしを伸ばした。
 ちなみに生春巻きは巻いたままの状態ではなく、食べやすく切っておいた。断面からはいろどりの良い野菜とエビに似たアッガーが見える。
 それをはしで持ち上げ、タレにひたす。リサは醤油ダレの方を選んだ。
 他のメンバーが先にかじりつくと、「シャキッ」といい音がする。それを聞きながら、リサも勢いよく頬張ほおばった。

「お野菜たっぷりで、この甘辛いソースがとても合うわ!」

 オリヴィアが口元を手で押さえて嬉しそうに言った。

「この皮、すごくもちもちしてるのね」

 デリアが普通の春巻きとは違う点を指摘したので、リサは説明する。

「この皮はフォーの麺とほとんど同じ材料で作ったんだ。お米の仲間である泥麦どろむぎの粉から作るんだけど、それを薄く広げて蒸して作るの」
「言われてみればフォーと似てるわね!」

 オリヴィアがリサの説明に、納得したようにうなずいた。
 一方、ヘクターは初めて食べる料理に夢中でがっついている。

「おお、マヨネーズが合う! 醤油ダレにも合いますが、こっちのスイートチリソースにマヨネーズを加えても合いますよ!」

 生春巻き自体は、わりとあっさりしている。そのため、若い男性であるヘクターは、こってりしたタレの方が好きらしい。
 ジークもスイートチリソースをたっぷりつけて、もしゃもしゃと食べている。彼は甘党だが、辛いものも好きなのだ。


「オリヴィアとデリアから見て、生春巻きはどう?」

 リサは二人に率直な意見を求める。接客係としての視点と、女性ならではの視点から感想が欲しかった。
 もちろんジークとヘクターの意見も尊重するが、作るところを見てしまうと、どうしても料理の技術的な点に注目しがちだ。厨房ちゅうぼうで生春巻きを見ていた分、第一印象も薄れているだろう。
 その点、オリヴィアとデリアにとっては正真正銘しょうしんしょうめい、初めて見る料理だ。見た目、味ともに第一印象を教えてもらえるし、何よりカフェのお客さんの半数以上が女性。二人なら彼女たちと同じ目線で料理を見ることができる。

「お野菜がたっぷりとれるのは、すごくいいわね。ソースも一つじゃないから比べて楽しめるし」

 オリヴィアは野菜がたくさん入っているのが気に入ったようだ。ソースが二つあるので飽きが来ないのも嬉しいポイントなのだろう。
 続いてデリアが口を開く。

「おいしいんだけど、ちょっと食べづらいかなって。フォークだと途中でバラバラになりそう……」
「それなら手づかみでも大丈夫だよ。その方が食べやすいと思う」

 デリアの指摘はもっともだ。しかし、それは手づかみで食べれば解決する。

「じゃあ、お客様にお出しする時、その説明もした方がいいわね」
「そうだね、よろしく」

 納得したデリアが、接客時に一言加えることを忘れないようにメモする。

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