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10巻

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   プロローグ


 金髪の青年が大きな執務机に向かっていた。仕事の書類に目を向けてはいるものの、どこか気がそぞろである。
 時折ちらちらドアの方を見ており、何かを待っているようだ。
 落ち着きがなく、仕事にも集中できない様子に、部屋の隅にいる側近の男性がこっそりため息をく。
 そんな時、部屋の外から足音が聞こえてきて、青年は思わず腰を浮かせた。
 ノックの音に側近の男性が答えると、ドアが開き、一人の騎士が入室してくる。

「そろそろ到着されるようです」
「そうか!」

 青年は椅子から立ち上がり、いそいそとドアに向かって歩き出す。
 側近の男性も、苦笑しながらそれについていった。
 騎士に先導されて向かったのは、王宮の正門近くにある応接室。その部屋には何人かの使用人がいて、これから到着する人物を迎える準備を整えていた。
 使用人たちは部屋にやってきた青年をソファに誘導する。
 そわそわとしている彼を落ち着かせるためか、テーブルには湯気の立つティーカップが置かれた。

「殿下、久しぶりにお会いになるのですから、しっかりなさいませ。それに、これから先はずっと一緒にいられるのですから」

 側近の男性がいさめるように彼に言葉をかける。それにハッとした彼は、こくりとうなずいてお茶のカップに手を伸ばした。
 茶葉の香りが鼻腔びこうをくすぐる。一口飲むと果物にも似たさわやかな風味が口いっぱいに広がった。
 体が温まるとともに、安らかな気持ちに包まれる。
 先程までの落ち着きのなさが嘘のように、彼は穏やかな表情を浮かべた。
 そして――

「エンゲルド国より、メルディアルア姫がご到着されました」

 応接室にやってきた騎士がそう告げると、それから間もなく、数人分の足音が聞こえてくる。
 開け放たれた入り口にその姿が見えた瞬間、青年は思わず声を上げた。

「メルディアルア!」
「エドガー様!」

 集団の中心にいた女性がぱっと顔を明るくする。
 お互いに駆け寄った二人は自然と両手を握り合っていた。

「待っていたよ、メル」
「私も早くお会いしたかったです」

 両手をぎゅっと握りしめて、おでこがぶつかりそうな近さで微笑み合う。

「これからはずっと一緒だ」
「はい」

 片手をそっと外したエドガーは、嬉しさに紅潮したメルディアルアの頬を撫でる。
 メルディアルアはその手にみずからの手を重ね、頬ずりするように顔を寄せた。



   第一章 手紙が届きました。


 夏の暑さが落ち着き、朝晩は涼しい日が続くようになってきた。
 季節は秋。学生たちは長い休みを終え、新たな一年に希望と不安を抱いている時期である。
 人々が季節の移り変わりを感じる中、フェリフォミア王国の王都にあるカフェ・おむすびは今日も変わらず営業していた。

「お待たせいたしました。こちらでよろしいですか?」

 入り口のすぐ隣にあるテイクアウト専用の小窓から、黒髪の女性店員が箱に詰めたケーキをお客さんに見せていた。彼女はリサ・クロカワ・クロード。この店の店長である。
 元の名を黒川理沙くろかわりさといって、地球からこの世界にやってきた異世界人でもあった。
 小窓の外にいるのは、五歳くらいの女の子とその母親だ。

「はい、大丈夫です」

 母親が箱の中を見てうなずいた。その横で、女の子がケーキの並ぶショーケースに手をついて、精いっぱい背伸びしている。
 その様子に気付いたリサは、少し困ったように笑う。
 ショーケースの上にある小窓はそれなりに高さがあるため、どうがんばっても女の子が見るのは難しい。
 すると、母親が女の子の頭にポンと手を乗せた。

「あなたが選んだケーキがちゃんと入っているから安心しなさい」
「……本当?」
「本当よ。家に帰ったらお父さんに見せないとね」
「うん!」

 女の子の力強い返事にリサはほっとする。
 丁寧かつテキパキとした動作で箱を閉じて、紙袋に入れると、リサはそれを母親に渡した。

「気をつけてお持ち帰りください。ありがとうございました」

 母親は紙袋を片手に持ち、もう片方の手を女の子と繋いで帰っていく。女の子が母親を見上げながら「ケーキたのしみだねー」と言う声が聞こえてきて、リサの顔が自然とほころんだ。
 そんな母娘を見送ると、リサは小窓を閉める。

「リサさん、フルーツタルトを一つ、お願いできるかしら?」

 その声に振り返ると、ミルクティー色の髪の女性店員が、お皿を手に立っていた。
 彼女はオリヴィア・シャーレイン。長い髪をサイドテールにしており、垂れ目がちの目元には泣きぼくろがある。グラマラスな体型の色気あふれる女性だ。
 一児の母である彼女はおっとりした雰囲気だが、とても芯がしっかりしている。カフェ・おむすびでも接客を仕切ってくれていた。

「了解! お皿貸してもらえる?」
「はい」

 オリヴィアからお皿を受け取ると、リサはガラスのショーケースからフルーツタルトを一ピース取り出す。ホール状に並べてあったタルトはほとんど売れ、残り二ピース。
 閉店までの時間と客足を見て、補充するかどうか考えなければならない。
 リサはカウンターの内側にある台にお皿を置くと、近くに置いてあった粉糖ふんとうの容器を手に取り、逆さにしてフルーツタルトの上に振りかけた。
 粉雪のような粉糖ふんとうがフルーツタルトに降り注ぐ。全体が白くなったら、今度はカウンター下の冷蔵庫から別の容器を取り出した。
 先端をお皿の空いているところに当てて容器を握ると、中から赤いソースが出てくる。それはメイチといういちごに似た果物のソースだった。
 リサはメイチのソースで、お皿に模様を描いていく。
 白いお皿のキャンバスに、お花模様とランダムな大きさのドット模様が現れた。

「あら、可愛い」

 フルーツタルトのお皿をのぞき込んだオリヴィアが、微笑ましそうに目を細めた。彼女はタルトと一緒にオーダーされたお茶を準備してくれていた。

「運んでもらえる?」
「かしこまりました」

 フルーツタルトのお皿をオリヴィアに託すと、リサはホールが落ち着いていることを確認して、厨房ちゅうぼうへ足を向ける。すると、厨房ちゅうぼうから人が出てきた。
 焦げ茶色のボブをハーフアップにした彼女はデリア・オーウェン。オリヴィアと同じく、一児のママさんだ。
 彼女の持つトレーにはガラスのうつわに盛られたデザートが載っていた。パステルオレンジの丸いデザートは、メロンに似たリューミという果物のシャーベット。秋に入ったとはいえ、暖かい日も多く、こういった冷菓類はまだまだ人気だ。
 リサは、すれ違いざまデリアに声をかけた。

「私は厨房ちゅうぼうに戻るけど、何かあったら呼んでね」
「はい」

 微笑んでうなずいたデリアを見て、リサは厨房ちゅうぼうへと入る。その途端、スパイシーな香りがリサの鼻に届いた。
 香りの元であるコンロのそばには、大柄な男性がいて、大きな鍋をかき混ぜている。
 彼はヘクター・アディントン。カフェ・おむすびの料理担当だ。フェリフォミア王宮の見習い料理人だが、二年間という期間限定でカフェで修業をしている。
 リサは彼に近づき、鍋の中をのぞき込む。こぽこぽと煮立った鍋の中身はカレーで、みじん切りの野菜と挽肉ひきにくがルーとともに煮込まれていた。

「カレー、おいしそうにできてるね」
「うわぁ!」

 リサの声に、ヘクターはビクッと肩を揺らした。カレーが焦げ付かないよう混ぜるのに集中していて、リサの気配には全く気付かなかったようだ。

「びっくりした~、リサさんおどかさないでくださいよ」
「ごめんごめん」

 すでにランチタイムを過ぎている。今仕込んでいるこのカレーは、明日のランチメニューになる予定だ。
 少し前からカフェのメニューに登場するようになったカレー。はじめは独特な見た目と濃厚なスパイスの香りに、お客さんから『これ、本当においしいの?』と聞かれることもあった。カフェのメンバーでさえ、初めてカレーを見た時は同じような反応だったのだ。
 けれど、去年の夏くらいからピラフや揚げ物などに少しずつカレー風味を取り入れると、常連のお客さんから徐々にカレー味の良さが広まっていった。そして、満をしてカレーをメニューに取り入れてみたのである。
 すると、一度食べたらやみつきになる味が評判となり、定期的にメニューに入れてほしいという要望が殺到した。そのほとんどは、去年の秋にリサが料理指導をした騎士団の面々からで、あの時食べたスープカレーの味が忘れられないという。その結果、カレーは週一というかなりの頻度ひんどでランチメニューになっているのだ。
 明日も多くの騎士団員が店に来るんだろうな、とリサは微笑む。

「リサさん、味見してもらってもいいですか?」
「うん」

 ヘクターはコンロを弱火にすると、小皿にカレーを少量取り、リサに差し出した。
 神経を舌に集中させ、じっくりと味わってから、リサは顔を上げる。

「うん! いいね! 作りたてだからまだ味がなじんでないけど、明日になればいい感じになると思う」

 リサの言葉に、ヘクターはぱあっと表情を明るくさせ、小さくガッツポーズした。

「やった! 今日は自信あったんですよ!」

 リサから一度でオーケーをもらえたことが嬉しいらしい。無邪気にはしゃぐヘクターを、リサは微笑ましく思った。
 その時、厨房ちゅうぼうの裏手にある扉が開く。
 そこからひょっこり顔を出したのは、シルバーブロンドに青い目の男性だった。

「ジーク、お帰りなさい」
「ただいま」

 リサにジークと呼ばれた彼は、ジーク・ブラウン・クロード。リサの夫で、カフェ・おむすびの副店長だ。
 彼はフェリフォミア国立総合魔術学院――通称・学院の料理科で、リサとともに講師をしている。
 今日も授業があり、それを終えてカフェにやってきたジークは、ラフな私服姿だった。

「着替えてくる」
「うん、そのあと明日の仕込み手伝ってくれる?」
「了解」

 ジークは短く返事をすると、二階に上がっていった。
 学院は長い夏休みが終わり、十日ほど前から新学期が始まっている。日本出身のリサにとって、新学期といえば桜の季節というイメージだが、こちらの世界では秋から始まるのだ。
 リサが来てから設立された料理科も、この秋で三年目を迎え、一期生が最終学年に上がった。毎年新入生が増え、校舎も増築して少し広くなっていた。
 夏休み中、リサとジークは新婚旅行を楽しんだが、今はカフェと料理科を交代で行ったり来たりしている。なかなか大変ではあるが、去年採用した講師たちがそれぞれ授業を受け持つようになり、今年も新たな講師が増えた。そのため、リサとジークの生活にも前より余裕が出たのだった。
 リサがこの世界にもたらした料理は、それを作る料理人も、教える講師も、徐々に増えつつある。
 カフェ・おむすびを開いたのは、地球の食文化を広めたかったからだ。それが少しずつ形になっているのを感じながら、リサは今日も料理に打ち込むのだった。


 本日の営業もつつがなく終わり、閉店作業に入る。
 そんな中、オリヴィアがそういえばと口を開いた。

「今日お客さんが言っていたんだけど、数日前にエンゲルドのメルディアルア姫がフェリフォミアにいらしたらしいわよ。ご結婚はまだ先だと思うけど、王族の結婚式となると準備がいろいろあるのかしら?」
「なんといっても王太子様と結婚するんだから、豪華な結婚式になるでしょうね」

 デリアがうっとりとした顔で答える。

「じゃあ、メルディアルア姫はこれからずっとフェリフォミアにいらっしゃるってこと?」

 リサが疑問に思ったことを口にすると、オリヴィアとデリアが答える。

「そうなんじゃないかしら?」
「エンゲルドは島国だから行き来するのが大変でしょうしねぇ」

 二人の言葉に、リサはなるほどと納得する。
 片付けと明日の仕込みを終えると、ジークとともに店を出た。日もずいぶん短くなり、すっかり夜のとばりが降りていた。
 王都の中央にある駅まで歩き、そこから駅馬車に乗り込む。馬車といっても魔術具なので、実際に馬が引いているわけではない。
 ジークと並んで座り、揺られること数分。馬車が家の近くの駅に到着した。そこからクロード家の屋敷まではすぐだ。
 門をくぐり、十メートル以上ある小路を通って別館にたどり着く。リサとジークは結婚して以来、本館ではなくこの別館で生活していた。
 ジークが開けてくれたドアから中に入ると、玄関ホールで一人のメイドがリサたちを待っていた。

「お帰りなさいませ、リサ様、ジーク様」
「ただいまメリル」
「ただいま」

 メリルと呼ばれたメイドはクリーム色の髪を複雑に編み込み、白いレースのシニョンキャップを被っている。濃紺色のお仕着せは、五分丈のアンブレラスリーブに、ハイウエストなロングスカートが特徴だ。
 色や型が毎日変わるお仕着せは、すべてシリルメリーというブランドのもの。リサの養母アナスタシアがそのオーナー兼デザイナーであるため、クロード家の使用人はみんなおしゃれだった。
 リサとジークがリビングルームに進むと、もう一人の使用人であるヴァレットのクライヴがいた。ヴァレットとは主人の身の回りのお世話をする従者のことだ。

「お帰りなさいませ」
「ただいま、クライヴ」
「ただいま」

 リサとジークはクライヴに挨拶あいさつを返すと、リビングのソファに座った。帰宅したら、まず二人からいろいろと報告を聞いたり、翌日以降の予定を確認したりするのが日課だ。
 今日は特に報告されることも、確認するべきこともなかったのだが、メリルがあるものをリサに差し出した。

「リサ様宛てにお手紙が届いております。どうも王宮からのようで……」
「王宮から?」

 リサは怪訝けげんに思いながら手紙を手に取った。差出人を見てみると、なんとエンゲルドのメルディアルア姫だった。
 今日オリヴィアが言っていた話は本当だったようで、フェリフォミア王宮の紋章のスタンプが押されていた。
 封蝋ふうろう部分から開けて、中を見る。
 そこに書かれていたのは、姫がエンゲルドからフェリフォミアに移ってきたことと、結婚式まで王宮の離宮に滞在すること。
 そして――

「近いうちに二人でお茶会をしませんか、って……」

 リサが問うような視線を向けると、ジークがそれにうなずいた。

「せっかくだから行ってきたらどうだ?」
「そうだね。またお会いしたかったし」

 島国育ちで、はちみつを垂らしたような黄みがかった肌をしたエンゲルドの姫。日本人の自分と共通点がある彼女に、リサは親しみを感じていた。
 手紙にはリサの都合のいい日時に合わせると書いてある。幸い、次のカフェの休業日であれば都合が付きそうだ。

「メリル、お返事を出したいんだけど、明日お願いできる?」
「かしこまりました」

 メリルは楚々そそとした態度でうなずく。
 念のため、明日の朝食の時にアナスタシアたちにも話しておこうとリサは思った。



   第二章 王宮におでかけです。


 王都の街を車窓しゃそうから眺めながら、リサは馬車に揺られていた。向かいの席にはメイドのメリルが座っている。
 そして、もう一人――

「ふんふ~ん♪」

 鼻歌を歌いながら窓の外を見ているのは、緑の服を着た体長二十センチほどの精霊。リサと契約しているバジルだ。
 普段はリサの仕事場についてきたり、自由に王都を散策したりしている。今日は王宮という珍しい場所へのお出かけということで興味があったらしく、ついてきていた。
 王宮へは何度か足を運んでいるものの、リサが用事があるのはだいたい厨房ちゅうぼう。主に使用人が働いている建物にあり、しかも裏口から入るため、正装する必要はない。
 けれど、今日は違う。メルディアルアからの招待状はカフェ・おむすびの店長リサではなく、クロード侯爵家令嬢リサ・クロード宛てに来たものだ。
 正装まではいかなくともそれなりの服装で、なおかつ馬車に乗って正門から入る必要があった。
 正門前で一度馬車が止められ、門を守る騎士が御者に声をかける。その後、馬車のドアがノックされたので、メリルがドアを開けた。
 騎士はリサに視線を向けて、口を開いた。

「クロード侯爵令嬢、リサ・クロード様でお間違いないでしょうか?」
「はい、そうです」

 リサが登城することは事前に伝わっているはずだし、御者も入城許可証を持っているが、警備上こうした確認が必要らしい。
 なんの問題もなくドアが閉められ、馬車は門をくぐった。
 フェリフォミア王宮と一口に言っても、いくつかの区画に分けられている。ここは王族の居住している場所であり、政治の中枢でもあるのだ。区画によってセキュリティーレベルも異なっており、基本的に敷地の奥に向かえば向かうほど、警備は厳重になっていく。
 正門のところでされたのと同じようなチェックを数回受けた後、リサの乗った馬車はようやく目的地である離宮に到着した。

「リサ様、ようこそお越しくださいました」
「メルディアルア様、本日はお招きくださりありがとうございます」

 メルディアルアはわざわざ離宮の玄関ホールでリサを出迎えてくれた。ピンクゴールドの髪をハーフアップにして、柔らかいパステルイエローに差し色としてチョコレート色が入ったドレスを身にまとっている。ふんわりとして可愛らしい雰囲気は、以前会った時と変わりなかった。

「ほんの少しですが、お土産みやげを持ってきたんです」

 リサの言葉を聞いて、メリルが土産みやげの入ったバスケットをメルディアルアの使用人に渡す。今日リサが持ってきたのは、ドライフルーツやナッツなどの入った、いろんなフレーバーのマフィンだ。

「まあ、ありがとうございます」

 ほんのりとただよう甘い香りに、メルディアルアは目を輝かせた。
 挨拶あいさつもそこそこに、メルディアルアの案内でサロンへと移動する。離宮はリサの住むクロード家の屋敷と同じくらいの広さで、王宮の建物の中ではこぢんまりとしていた。
 ピンクやクリーム色など柔らかい暖色を使った家具やファブリックは、可愛らしいメルディアルアにとてもよく似合っている。
 お茶会がおこなわれるサロンルームは、玄関ホールの近くにあった。部屋に入ると、正面にある大きな窓から庭が見える。

「こちらへどうぞ」

 メルディアルアに案内されたのは窓際にあるテーブルセットだった。メリルに引いてもらった椅子にリサが座ると、その正面にメルディアルアも着席した。
 そうして二人だけのお茶会が始まる。
 主な話題はメルディアルアとエドガーの結婚準備のことだった。

「結婚衣装を依頼されて、養母が張り切ってましたよ」
「まあ、嬉しいですわ。製作時間が短くて心苦しいのですが、リサ様やアデリシア王妃のドレスが素敵でうらやましかったので、楽しみなのです」

 リサの結婚衣装もアナスタシア渾身こんしんの作でとても豪華だったが、メルディアルアはなんといっても次期王妃。シリルメリーでは全社をあげて製作しているらしい。どんな衣装になるかリサも楽しみにしている。

「メルディアルア様も、いろいろと準備でお忙しいんじゃないですか?」
「そうですね。でもフェリフォミアの方々がとてもよくしてくださいますから、それほど大変ではありません。ただ……」

 そう言って、メルディアルアが顔を曇らせる。少し逡巡しゅんじゅんしてから、彼女は意を決したように口を開いた。


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