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9巻
9-2
しおりを挟む第三章 そわそわしているようです。
翌日もヘクターの浮かれっぷりは変わらず……いや、さらにひどくなっていた。
開店前の準備も鼻歌まじりに行っている。
リサは『恋は盲目』という言葉を思い出し、しみじみと実感した。
恋をするのはとても素敵なことだ。ただ、ヘクターのわかりやすさと変わりように、リサは少し戸惑っている。
それに、ヴィルナの婚約者のことも伝えそびれてしまったため、リサの胸中は複雑だった。
そんなリサのもとへ、怪訝な表情を浮かべたジークがやってきた。
「……あれは大丈夫なのか?」
「うーん、どうだろう……」
ジークには昨日家に帰る途中、ヘクターがヴィルナに一目惚れしたらしいことを話した。
その時、ヴィルナに婚約者がいることを教えるべきかと相談したが、ジークからは『ヘクターが直接本人から聞いて玉砕すればいい』となんともドライな反応が返ってきたのだ。
まあ、確かにこれはヘクターの問題なので、外野がしゃしゃり出るべきではないのかもしれない。そもそも、ヘクターからヴィルナを好きになったと聞かされたわけでもないのに、勝手に決めつけるのもどうかと思う。
それに、もしかしたらヘクターの熱は一時的なもので、すぐに冷める可能性も無きにしも非ず。だからリサは、しばらく様子を見守ることにした。
――のだが、一夜明けてもヘクターがちっとも変わっていないところを見ると、本当にそれでいいのかという気持ちになってくる。
と、そこでヘクターがくるりとリサたちの方を振り返った。
目をらんらんと輝かせ、ずんずん近づいてくる。
「リサさん、ヴィルナさんの好きな食べ物って知ってますか!?」
「え、ヴィルナさんの好きな食べ物? えっと、確かモンブランをよく注文してた気がするけど……」
「モンブラン!! 可愛い……」
ヘクターは口元を綻ばせ、うっとりとした。
しかし、すぐにその表情が曇る。
「材料のブブロンの季節は、まだ先ですね……」
がっくりと肩を落としてしまったヘクターに、リサは「ああ」と気付いた。おそらくヴィルナの好物を作って、アピールしようと考えたのだろう。
だが、モンブランの材料であるブブロンという木の実は、秋にならないと手に入らない。ヘクターはヴィルナの好物を作るという手が使えなくなったことに落胆したようだ。
ちなみにジークはと言えば、我関せずというようにリサたちのそばから離れ、一人マイペースに開店準備を進めていた。
落ち込んでしまったヘクターが可哀想になったリサは、そっとフォローする。
「一番好きなのはモンブランかもしれないけど、甘いお菓子は割となんでも好きみたいだよ、ヴィルナさん」
その言葉を聞いて、ヘクターはガバッと顔を上げた。目を大きく見開き、リサとの距離を詰めてくる。
「本当ですか!?」
「う、うん……」
リサが内心で「近い!!」と叫んだその時、リサとヘクターの顔の間に、銀色のトレーが差し込まれた。
ゴチンという音とともに、ヘクターのおでこにトレーがぶつかる。
「あだっ!!」
おでこを押さえたヘクターと、リサがトレーの持ち主を見ると、そこには冷ややかな目をしたジークが立っていた。
「ヘクター、私情を挟むのもそのくらいにしとけ」
普段から無表情でとっつきにくいジークだが、今はそれに拍車がかかっている。笑みなど欠片も浮かんでおらず、それどころか冷たい怒気を感じさせるジークの様子に、ヘクターは顔を強張らせ、「ひぃっ」と引き攣った声を上げた。
「ははは、はい!! 仕事に戻ります!!」
浮かれモードから一転、焦って作業に戻ったヘクターを、リサは唖然としながら見つめる。
ジークが、やれやれというようにため息を吐いた。
「リサもだぞ。ヘクターに構うのもほどほどにしろよ」
さっきの冷たい口調とは違い、気遣うような口調で言われて、リサはようやく気付く。どうやらかなり近い距離まで迫ったヘクターを遠ざけてくれたようだ。
嫉妬も少し入っていたのか、ジークはリサの返事を聞かずに作業に戻っていく。
そんなジークの気持ちが嬉しくて、リサは笑みを浮かべると、自身も開店準備に励むのだった。
カフェ・おむすび本店で働いているメンバーは、ヘクター以外みんな既婚者である。
恋愛経験があり、それなりに人生経験も積んでいる年上のメンバーたちが、わかりやすすぎるヘクターの行動に気付かないはずがなかった。
接客担当であるオリヴィアとデリアの二人も、すぐさまヘクターの異変に気付いた。
それもそのはず、いつもなら厨房にいてホールにはめったに出てこない彼が、今日に限って頻繁に顔を出すのだ。
そわそわと落ち着きなくホールを見回しては、がっくりと肩を落として厨房に引っ込み、時間を置いてまたやってくる。
これは何かあるなと、接客担当の二人は思った。
オリヴィアが、ホールに出てきたリサを呼び止める。
「ねえねえリサさん、ヘクターくんが、ちょこちょこ顔を出すんだけど……」
「あー、たまにいなくなると思ってたら、こっちに来てたのね……」
リサは苦笑を浮かべた。
訳を知っていそうな様子のリサに、オリヴィアは好奇心のこもった眼差しを向ける。
「そわそわしながら誰かを探しているように見えたけど、もしかして好きな人でも待ってるのかしら?」
オリヴィアはカマをかけるように尋ねた。
リサは「あー……」と困った顔で頬をかく。
「やっぱりバレバレだよね……。昨日、ヴィルナさんが来たでしょう? ヘクターくんってば、彼女に一目惚れしたみたいなの」
「えっ! 相手はヴィルナさんなの!?」
オリヴィアは驚きと興味の入り交じった声を上げた。その声が店内に響いてしまい、ハッと口元を押さえる。
少し離れたところにいたデリアが、さささっと近づいてきた。
「ヘクターくん、ヴィルナさんに恋しちゃったの?」
デリアは面白がるような顔で聞いてくる。オリヴィアと同様に、ヘクターの行動を気にしていたようだ。
興味津々な二人を見て、女性は何歳になっても恋バナが好きだなと、リサは苦笑を浮かべる。そして、いきさつをかいつまんで話した。
「ヴィルナさん、昨日は騎士団の制服じゃなくて、私服だったでしょう? しかもきれいなワンピース姿で……どうやら、それにやられちゃったらしいんだよね~」
オリヴィアとデリアの二人は、そろって「あぁ」と頷いた。
「いつもと違った雰囲気だったものね、ヴィルナさん」
デリアの言葉に、オリヴィアも同意する。
「そうねぇ、騎士団の制服も凛々しくて素敵だけど、昨日は可愛らしい雰囲気でこれまた素敵だったわ」
そこでデリアが首を傾げた。
「でも、初対面ってわけではないでしょう? ヴィルナさんはリサさんたちの結婚式にも出席してたし、カフェにもたまに来てくださるし」
「そうなんだよね。だけど、いつもは騎士団の制服だから気付かなかったみたい。結婚式の時も正装用の制服だったし。カフェでは私服の時もあったと思うけど、ヴィルナさんって基本的にシンプルな服を好むから……」
リサはヴィルナの服装を思い浮かべながら呟いた。
デリアがニヤニヤとした笑みを浮かべて言う。
「じゃあ存在は認識していたけど、突然印象の違う服で登場したヴィルナさんに、コロッとやられちゃったわけだ」
「そうみたい。ヘクターくん、もうすっかり舞い上がってるらしくて……昨日からずっと挙動不審だよ。まあ、今のところ問題は起きてないけど」
リサは困った顔で肩を竦めた。
今は問題は起きていないが、これからどうなるかはわからない。そう暗に示したリサに、オリヴィアとデリアは苦笑する。
「あらあら……なるべくこっちでも様子を見るようにするわね」
オリヴィアはリサを気遣うように言った。
恋愛は自由だし、それ自体はとてもいいことだ。だが、カフェはヘクターにとって職場である。恋愛にばかり現を抜かすのはよくない。
「うん、さりげなく見といてもらえたら助かる~! よろしくお願いします」
そう告げて、リサは厨房へと戻っていった。
彼女の背中を見送りながら、デリアが「それにしても」と呟く。
「ヘクターくんが、あそこまで恋に夢中になる人だったとは意外ね」
「そうねぇ、しかも相手がヴィルナさん……あれ? ヴィルナさんには婚約者がいるって、前に聞いたような……」
オリヴィアがデリアを見ると、デリアもハッとして見返す。
「……ヘクターくん、もしかしてそのことを知らないんじゃない?」
デリアの言葉に、オリヴィアは真顔で頷いた。
第四章 関心を引く方法を考えます。
「今日は来なかったなぁ、ヴィルナさん……」
ヘクターは自室のベッドに背中から倒れ込み、天井を見上げて呟いた。
仕事が終わって帰ってくると、疲れから眠気が一気に襲ってくる。だが、今日は目も頭も妙に冴えていた。
脳裏には、カウンター席に座って優雅にお茶を飲んでいた、昨日のヴィルナの姿が浮かぶ。
編み込んで左肩に流した濃い紫の髪。清楚で涼しげな白いワンピースは、袖や裾に薄い青の糸で刺繍が施されていた。
お茶のグラスを置くヴィルナの表情はどこか物憂げで、唇から吐き出されたため息に、ヘクターの胸が高鳴った。
いつもは騎士団の制服をかっちりと着込んでいるヴィルナが初めて見せた、女性らしい格好。
ヘクターにとってジークの元同僚というだけだった存在が、一瞬で気になる相手へと変化した。
「うわぁ! どうしよう! どうすればいいんだー!!」
ヘクターは枕を抱え、大きな体でベッドの上を転がる。勢い余って壁を蹴ってしまったが、そんなこと今は気にならない。
どうしようと言いつつも、ヘクターの顔はだらしなく緩んでいた。
恋の始めの一番楽しい時間に浸りきっている。
昨日のヴィルナの姿を思い出し、ただただ胸を高鳴らせる。それだけで、ヘクターは嬉しくて幸せだった。
「またすぐ会いたいよな~。どこ行けば会えるんだろう……てか、なんでもっと早く気付かなったんだ、俺!! リサさんとジークさんの結婚式の時なら話すチャンスもあったのに!!」
そんなことを言っても時間は巻き戻せないのだが、ただヴィルナが来店するのを待つしかない現状を考えると、過去にあったはずのきっかけをスルーしていたことがもったいなく感じる。
再びベッドの上を転がると、また壁に蹴りが入ってしまった。
その壁の向こうから、ドンドンと叩く音と、かすかに怒鳴り声のようなものも聞こえてくる。
単身者用の安アパートは壁が薄いし、声も響く。遅い時間ということもあり、ヘクターの行動は近所迷惑になっていたようだ。
ヘクターは、水を差されたような気持ちになりながらも、心の中で「すみません」と謝る。そして枕を首の後ろに戻し、手足をベッドに投げ出した。
「はぁ……また会えたとしても、ヴィルナさんにとって俺は、カフェの店員ってだけの存在なんだよなぁ」
現実に立ち戻り、ヘクターは嘆く。見上げた天井には奇妙なシミが広がっていた。
何かの形に見えなくもないそれを眺めて、ぼーっとしていたヘクターは、不意にリサの言葉を思い出す。
「……そうだ。甘いものが好きなんだよな、ヴィルナさん」
そう言って、むくりと上半身を起こす。
「うん、そうだよ。ただ待ってるより全然いいかもしれない!」
うんうんと何度も頷き、ヘクターは目を輝かせた。
気合を入れるように両手で頬をパシンと叩くと、「おおおー!!」と叫びながら、こぶしを天井に向かって突き上げる。
壁の向こうからドンドンドンと先ほどより大きな音がして、くぐもった怒鳴り声が響いてきたが、今のヘクターの耳には届いていなかった。
翌日、ヘクターは普段よりだいぶ早い時間に出勤した。
早起きした――というより一睡もせず、逸る気持ちのままカフェ・おむすびにやってきたのだ。
だが、ドアの鍵は開いていない。ヘクターはドアの前で待ちながら、今日やろうとしていることを一つ一つ確認する。
「えっと、まずリサさんとジークさんに事情を話して、具体的にどうすればいいか聞いて……」
小さく呟きながら指折り確認していると、二つの人影を視界の端に捉えた。
「あ、来た!!」
ヘクターは目を輝かせ、並んで歩いてくるリサとジークに向かって手を振る。
するとリサの方が手を振り返しながら、小走りでやってきた。
「ヘクターくん、おはよう! 待たせちゃった?」
店の前で待っていたヘクターの姿を見て、リサは少し焦ったようにドアに鍵を差し込む。
「おはようございます!! いえ、俺が早く来ちゃっただけなんで!」
リサとジークが来たのは、いつも通りの時間。単にヘクターが早すぎたのだ。
何しろヘクターは寝ていない。これでも出勤するのをぎりぎりまで我慢したのだが、結局早く到着してしまった。
リサの後ろを歩いてきたジークが、ヘクターに声をかける。
「早いな、ヘクター。おはよう」
「おはようございます、ジークさん!!」
元気がよすぎる声でヘクターが挨拶を返すと、ジークは驚いたように目を見開いた。
それでも表情に大きく変化があったわけではないので、ヘクターはジークの驚きに気付かず、その声のトーンのまま話を続ける。
「あのっ、俺、お二人に相談したいことがありまして!!」
意を決してそう切り出すと、リサは目を瞬かせ、ジークは怪訝そうに眉間に皺を寄せた。
「わかった。とりあえず中に入ろうか」
リサがドアを開けて中を指さす。気持ちが先走ってしまったことに、ヘクターは今更ながらハッとした。
ドアを押さえてリサを先に入らせたジークのあとに続き、ヘクターも店内に入る。
まずは着替えてからだというジークの言葉に従い、着替えを終えると、三人は改めて厨房に集まった。
「で、ヘクターくんの相談って、どんなことなの?」
リサが気を遣って話を振ってくれる。ちらりとジークの方を窺うと、彼はヘクターが話し出すのをじっと待っていた。
「えっと、俺、そろそろ自分でも新しい料理を考えてみたいなぁと思ってまして……」
「わぁ! いいじゃん!」
リサが期待に目を輝かせる。
「や、まだまだ未熟な俺なんかが烏滸がましいんですが……」
ヘクターは謙遜し、胸の前で両手を振った。
正直、リサの期待に副えるほどのすごい考えはない。昨夜思いついたばかりで、具体的なアイディアがあるわけでもなかった。
何より動機が下心に溢れていて、胸を張れるようなことではない。
「理由はどうあれ、新しい料理を考えようという意欲はいいと思うぞ」
ジークは少し含みのある言い方をした。
暗に下心を指摘された気がして、ヘクターはぎくりとする。
「うっ……はい、ありがとうございます……」
居たたまれなさを感じつつも、ジークに褒めてもらえたことで、ホッと胸を撫で下ろした。
「それで、どんな料理が作りたいの? 何か思いついたものはある? あ、材料は好きに使っていいからね!」
リサがワクワクした表情で、矢継ぎ早に質問する。
今すぐ作ってみろと言わんばかりの勢いに驚き、ヘクターは両手を前に出して首を横に振った。
「ちょっと待ってください! 具体的に何を作るかまでは……」
「え、そうなの?」
リサは、きょとんとして首を傾げた。
ため息を吐いたジークが肩を竦めて口を開く。
「リサ、誰もが簡単に新しい料理を考えられるわけじゃない」
ジークの言葉に、ヘクターは無言でこくこくと頷いた。
「そういうものなのか……アランくんははじめから自分でいろいろ考えてたし、てっきり……」
二号店の店長をしているアランを引き合いに出すリサに、ジークは諭すように言う。
「アランは特殊だと思うぞ。普通は新しい料理を考えたくても、そう簡単には思いつかないし、何から手を付けていいのかわからないものだ」
「そうなんです。俺も漠然と思っているだけで、実際に何から取り掛かればいいのかわからなくて……」
ヘクターは困った顔で肩を落とした。
リサは同情するように眉を下げ、ジークの方をちらりと見る。ジークはほらな、と言わんばかりの表情を浮かべていた。
「うーん。それじゃあ、何をどう助言すればいいのか……」
リサは顔を顰めて、うーんと唸る。
ヘクターはなんだか悪いことをしたような気持ちになっていた。ここまで悩まれるとは思っていなかったのだ。
「リサ、ヘクターには俺が教えるから」
そのジークの言葉に、リサは顔を上げた。
「え、でも……」
リサが何か言いたげに言葉尻を濁す。
ジークは小さく首を横に振って、ヘクターに視線を向けた。
「ヘクターもそれでいいか?」
「あ、はい! もちろんです! よろしくお願いします!」
こうしてヘクターの新作料理は、ジークが指導することになった。
第五章 黙っていることにしました。
ヘクターの相談を聞き終えたジークたちは、ひとまずカフェの開店準備に入った。ランチメニューの仕込みをしながら、ケーキのスポンジやタルト台をせっせと作っていく。
その途中、リサが静かにジークのもとへとやってきた。
「ねえ、さっきのヘクターくんの相談、受けちゃって本当によかったのかな……だって、あれって完全にヴィルナさんに食べてもらうのが目的でしょ?」
リサは小さい声でこそこそと話す。
「ああ、そうだな」
「そうだな、って……手遅れになる前に、ヘクターくんに言ってあげた方がいいんじゃないかな? ヴィルナさんの婚約者のこと……」
「いや、それはやめておこう」
「……どうして?」
「せっかくやる気を出しているんだから、それを削いでしまうのはもったいない気がする」
「確かにそうだけど……」
ヘクターが新しい料理を作りたいと言い出したのが下心から来ていることは、リサだけでなくジークもわかっている。ヴィルナに振り向いてもらうために何かできないかと考えた結果なのだろう。
まあ、ジークも同じ男として、ヘクターの気持ちもわからなくはない。ジーク自身、ここまで明け透けではないにしろ、リサに対して似たようなことをした過去がある。
それがいいか悪いかはともかくとして、新しい料理を考えるというのが成長に繋がることは確かだ。逆に言えば、その段階を踏まないと、さらなる成長は望めない。
ヘクターの技量を考えるとやや時期尚早な気もするが、理由はどうあれ彼が自分からそこに思い至ったのは、とてもいいことだとジークは思った。
だから、下手にヴィルナの婚約者のことを伝えて、その意欲を失わせてしまうのが、すごくもったいない気がしていた。
ヘクターに対して、酷な対応かもしれないということはわかっている。それでも、料理人として成長できるチャンスをみすみす逃してほしくなかった。
ジークは作業の手を止め、リサに正対する。
「悪いが、ヘクターの件は俺に任せてほしい。ヴィルナの婚約者のことも、今のところは黙っていてもらえないか」
小声ではあるものの、きっぱりとした口調でジークは言った。
リサはジークの目をじっと見つめていたが、ややあって小さく頷く。
「……うん、わかった。ジークに任せる」
「ありがとう」
「ううん。ヘクターくんのこと、よろしくね」
「ああ」
ヴィルナのことをあえて黙っていることには当然、罪悪感がある。それをリサや他のメンバーにも強いることになるのだから、ジークとしてもかなり複雑だ。
けれど、ヘクターのやる気と将来性に懸けたいと、ジークは強く思っていた。
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