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8巻
8-2
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「おお~すごーい!!」
焼き目のついた餃子がお皿に綺麗に並んでいるのを見て、ライラが声を上げた。他の二人からも尊敬の視線を向けられたリサは、少し得意げに笑う。
二皿めはターラが焼くことになった。リサはアドバイスをしながら、その様子を見守る。
ケイリーはあらかじめ作っておいたという、他のおかず類を用意し始めた。
一方、ジークはというと、皮作りで汚れた調理台を片付け、さらにダイニングの方の準備までしてくれている。
それに触発されたらしいライラも、カトラリーをテーブルに並べ始めた。
席順を決めるのも彼女の役目らしく、「ここはジーク兄で~、ここがリサちゃん」などと呟く声がキッチンまで聞こえてくる。
やがて三皿めの餃子が焼き上がる頃、ダイニングに新たな人物がやってきた。
「お父さん、マシュー兄、もうご飯できてるよ~」
ライラがそう言って嬉しそうにじゃれついたのは、ジークの父と兄である。
父の名はロドニー・ブラウン。シルバーブロンドが特徴的で、どうやらジークとライラの髪色は彼から受け継がれたものらしい。
そして兄の方は、マシュー・ブラウンという名だ。兄弟の中で彼だけは母親に似たのか、ケイリーと同じ緑色の髪をしていた。
髪色や顔立ちは違っていても、ロドニーとマシュー、そしてジークはとても似ている。
なぜなら、三人とも無表情で寡黙なのだ。
ケイリー曰く、馬の飼育と繁殖を家業にしているせいらしい。
馬というのは、とても頭のいい動物だ。察しがよく、状況判断に優れている。つまり言葉や表情で伝えなくても意思疎通が出来るため、ブラウン家の男はみな無表情で無口なのではないか……というのがケイリーの説だ。
それを聞いた時は信じられなかったリサだが、こうして三人を見ていると、ケイリーの説はあながち間違いではないかもしれないと思う。
料理が出来たと聞いても、ロドニーとマシューは無表情のままだった。だが、そそくさと席に座り始めたところを見ると、その味に期待しているのがわかる。
もう何年もジークと一緒に過ごしているリサは、ちょっとした行動や表情の変化から彼の気持ちを読み取ることが出来る。そんなリサから見ると、ロドニーもマシューも本当にジークとそっくりだった。
ターラとケイリーが出来上がった料理を次々と運んできて、テーブルに並べていく。それが終わると、全員で食卓を囲んだ。
お誕生日席には、家長であるロドニーが座っている。彼の左手側の列にはケイリー、マシュー、ターラ。その向かい側にライラ、リサ、ジークが座った。
パリッと焼き上がった餃子、人参に似たパニップとシューゼットのコールスローサラダ、ベーコンと野菜のスープ、そしてリサが手早く作ったチャーハンが食卓に並ぶ。
食事の準備が整ったところで、ロドニーがぐるりと全員を見回した。
「ジーク、リサさん、よく来てくれた。リサさんは食事も作ってくれてありがとう」
リサを見ながら、ロドニーはお礼を言った。
予定にはなかったものの、ケイリーによって強制参加させられたジークがぼそりと呟く。
「……俺も途中から作らされたんだが……」
その声にかぶせるように、ライラが声を上げた。
「ライラもお手伝いしたもん!」
ロドニーは「そうか、頑張ったな」と褒めてから言葉を続ける。
「二人の結婚はもう少し先だが、こうして家族みんなで食卓を囲めるのは喜ばしいことだ」
ロドニーの隣に座るケイリーが嬉しそうに何度も頷く。
マシューとターラの二人はリサに温かい眼差しを向け、ライラもにこにこしながらリサを見上げた。
その場が優しい空気に包まれる中、ロドニーが食前の挨拶を口にし、他のみんなは小声でそれを復唱した。
最後に全員で「いただきます」と声を揃え、一斉にカトラリーを手に取った。
第三章 おいしい食事の時間です。
「私は餃子~」
ライラがウキウキしながら、フォークを持っている手を大皿の方へ伸ばす。だが、手の長さが足りない上に、フォークでは取りづらいらしい。苦戦しているライラを見て、隣に座るロドニーが餃子を取ってあげていた。
ちなみに彼らはフォークだが、リサとジークだけは箸を使っている。
日本人のリサはもちろんのこと、ジークも今やすっかり箸に慣れ、普段の食事でも問題なく使っていた。そんな二人にとって、餃子はやはり箸の方が食べやすい。
スープで口を潤したところで、リサも餃子に箸を伸ばした。
酢や醤油で作った特製のタレにちょんちょんとつけ、ぱくりと齧りつく。
パリッとした皮の歯ごたえに、小麦粉のもちっとした食感。ジワリと滲み出す肉汁の旨味とシューゼットの甘みが口いっぱいに広がった。
炭水化物と肉と野菜という三つの要素が、ちょうどいいバランスで組み合わさっている。こんな料理が餃子以外にあるだろうか。
にんにくに似たリッケロの風味もきいていて、それがまた食欲を掻き立てる。餃子自体はそれほど大きくなく、食べやすいので何個でもいけてしまいそうだ。
そう思っているのはリサだけではないようで、周りを見回せばみんながみんな、餃子を夢中で頬張っている。
時折、他のおかずを食べたりもしているが、あくまでメインは餃子だった。
「おいしいね~」
ライラが幸せそうに笑うと、他の家族も頷く。
「本当にね! 皮がパリパリで、中のお肉もおいしい~」
ターラが頬を手で押さえながら言うと、ケイリーも同意した。
「このタレもぴったりね! 酸味があるからさっぱり食べられるわ!」
脂っこいものが食べにくい年齢のケイリーも、お肉がたっぷり入った餃子をおいしく食べられているようだ。酸味のきいたタレと、餡に入っている野菜のおかげだろう。
男性陣は頷きつつも黙って食べていた。けれど、食べるスピードの速さが、彼らの気持ちを雄弁に物語っている。
おかげで大皿三つ分も作ったというのに、どんどん減っていた。
ブラウン家の家業は肉体労働でもあるので、かなり体力がいるらしい。それもあってか、みんな食欲旺盛である。
餃子を大量に焼いた上に、チャーハンまで作ったので、量が多すぎたかもしれないとリサは思っていた。だが、それは余計な心配だったようだ。
「ところで、結婚式の準備は順調なの?」
お腹がほどよく満たされてきたところで、ターラがリサに話を振ってきた。
「衣装はほとんど仕上がっているんですよ。あとは小物くらいですね」
「シリルメリーの花嫁衣装だなんて、私も見るのが楽しみだわ~」
ケイリーは目を輝かせて言った。
リサの花嫁衣装は、シリルメリーという人気ブランドを手掛ける養母アナスタシアが、丹精を込めて作っている。
ドレスとヴェールはほぼ完成し、今は手袋や下着に取りかかっているらしい。
リサがお願いするまでもなく、アナスタシアはものすごい熱意をもって取り組んでくれていて、リサとしてはありがたい限りだった。
シリルメリーのトップデザイナーであるアナスタシアが一から手掛けているドレスを、リサの身近な女性たちは自分のことのように楽しみにしてくれていた。
「ライラもお揃いの着るんだよね? 当日はそれを着てお手伝いするんだもん!」
ギョーザが刺さったフォークを手に持ったまま、ライラが声を弾ませる。
実は式の当日、リサはライラにちょっとした役目をお願いしているのだ。
「そうだよ~! ライラちゃん、よろしくね」
「まっかせて!!」
鼻息荒く胸を張るライラに、リサはクスクスと笑った。喜んで引き受けてくれただけあって、やる気は十分なようだ。
そんなおしゃべりをしながら食事は進む。リサは腹八分目くらいで箸を止めたが、マシューやライラはまだ食べていた。
大皿に残った餃子はあと一つ。
その最後の一つを食べようと、ライラが餃子めがけてフォークを伸ばした。
しかし、それは向かい側からサッと出てきた手によって、かっさらわれてしまう。
「あっ!! 最後の一個、ライラが食べようと思ってたのにー!!」
餃子を先に取ったのはマシューだった。
憤慨するライラにちらっと目を向けた彼は、取った餃子を無言で口に運ぶ。
「ああー!!」
ライラの嘆く声も意に介さず、マシューはおいしそうに餃子を咀嚼した。
「私の餃子がぁ……」
これまでたくさん食べたというのに、まだ食べ足りないらしく、ライラはマシューを恨めしげに見つめる。
「うまかった」
マシューの煽るような言葉に、ライラの怒りが爆発した。
「なんで食べちゃうのよー!! ライラの餃子だったのに!! バカバカ、マシュー兄嫌い!!」
椅子から立ち上がり地団太を踏むライラに、ケイリーとターラは苦笑する。驚いている様子はないので、マシューとライラのこういったやりとりは日常茶飯事なのかもしれない。
「もぅ~!!」
だんだん悲しくなってきたのか、ライラの目にじわりと涙が浮かぶ。
そこでようやくマシューが目を見開き、おろおろし始めた。しかし肝心の餃子は、既に胃袋の中である。
可愛い妹を少しからかうつもりだったが、まさか泣かれてしまうとは思いもしなかったらしい。狼狽する長男を見て、父のロドニーがため息を漏らした。
「ライラ。お父さんの食べかけだけど、食べるか?」
彼の前に置かれた小皿には、食べかけの餃子が残っている。ライラはロドニーに向かってこくりと頷いた。
小皿をライラの方へ差し出しながら、ロドニーはマシューに責めるような視線を向ける。するとマシューはばつが悪そうに顔を背けた。
ライラは椅子に座り、袖で涙を拭ってフォークを握り直す。
そして父の食べかけの餃子を、一気に口に放り込んだ。
もぐもぐ咀嚼したあと、ライラはまだ涙の残る目を細めて笑う。
「おいひい!」
少女の可愛らしい笑顔に、その場の空気が和らいだ。
――あれ?
リサはこの光景に、妙な既視感を覚えた。
次の瞬間、頭の中に過去の記憶がよみがえってくる。
リサがまだ小学校に上がる前、ちょうど今と同じように、家族みんなでテーブルを囲んでいた。
目の前のお皿に一個だけ残ったウインナー。それをリサは狙っていた。ウインナーは当時のリサの大好物だったのだ。
しかし、リサがウインナーを取る寸前、横からサッと取られてしまった。
その犯人は一番上の兄だった。
『あー!!』と声を上げるリサ。だが兄は得意げに笑い、さっさとウインナーを食べてしまう。
まだ幼かったリサは駄々をこね、大泣きしてしまった。他の家族がどうにか宥めようとしたが、まったく効果はなく……
反省した兄が『次にウインナーが出た時には、自分のを二個やるよ』と言ってくれて、ようやくリサの機嫌が直ったのだった。
そんな記憶が唐突によみがえったことで、リサは少し動揺する。
何か特別なイベントがあったわけでもなく、本当になんでもない日のことだった。なぜあそこまでウインナーにこだわっていたのかも、今ではわからない。
けれど、焦った兄の顔やリサを慰める両親の顔などが、まるで映画を見ているかのように、はっきりと浮かんできたのだ。
胸に湧き上がってきたのは、途方もない懐かしさだった。
――私の家族は、今どうしているんだろう……
泉に小石を投げ込んだように、心が波立つ。
「――さん。リサさん?」
ケイリーの声にハッとして、リサは顔を上げた。
「は、はい!」
「そろそろ片付けようと思うんだけど、いいかしら?」
リサが物思いにふけっているうちに、みんなはテーブルの上を片付け始めていたようだ。既にターラの姿はなく、隣に座っていたライラも椅子から立ち上がっている。
「あ、私もやります!」
「ライラも~」
すっかり機嫌をよくしたライラに続いて、リサも素早く立ち上がった。
第四章 記憶とは違う味です。
ジークの実家から帰って以来、リサはぼーっとしていることが増えた。
あの日、フラッシュバックしたように例の記憶がよみがえってからというもの、リサは元の世界にいる家族のことばかり考えてしまっている。
「みんな、元気にしてるかな……」
自室の鏡台の前でヘアブラシを片手に、リサはポツリと呟いた。
なぜかはわからないが、突然こちらの世界に飛ばされたリサ。幸いにもクロード夫妻に助けられ、養女にしてもらったおかげで、今日までこうして生きている。だが、自分が消えたあと、元の世界はどうなってしまったのだろう。
家族だけではない。友達は? 職場の人たちは?
みんな今頃どうしているのだろうか。
急にいなくなってしまったリサのことを、今も必死に探してくれているかもしれない。
この世界で暮らし始めて数年が経つというのに、今になってそんなことばかりが頭を巡る。
思えば不自然なほど、元の世界のことを考えてこなかった。リサがこの世界に飛ばされた時と同じように、何か不思議な力が働いていたのだろうか。
いくら考えても答えは出ず、不安だけが湧き上がる。
リサは憂いのこもったため息を吐き出した。
「マスター、大丈夫ですか?」
鏡越しに問いかけてきたのは、精霊のバジルだ。心配そうな表情を浮かべてこちらを覗き込んでいる。
「だいじょう、ぶ……ではないかも……」
リサは自嘲するように笑った。
両親や兄たちのことまで忘れていたとは、自分はなんて薄情なんだろう。
けんかすることも叱られることもあったけれど、リサの家庭は愛にあふれていた。それなのに……と、リサは自分に嫌悪感すら覚える。
怒りなのか悲しみなのかわからない感情が胸に渦巻いていた。
「何か、バジルに出来ることはありますか?」
そう気遣ってくれるバジルのために、なんとか笑顔を作ろうとするリサ。だが、どうにも上手くいかず、引きつった笑みを浮かべるだけだった。
「……ごめん、バジルちゃん……ちょっと家族のこと、思い出してた」
平坦な声で呟いたリサに、バジルがハッと息を呑む。リサは黙り込み、ブラシを手に持ったまま俯いた。
しばらくの間、沈黙が続く。
それを破ったのは、バジルの小さな声だった。
「……マスター、バジルが家族のことを聞いてきましょうか?」
「え……?」
リサは驚いて顔を上げる。
バジルはリサの正面に回り込み、再び口を開いた。
「もしかしたら、女神様なら知っているかもしれません。マスターの元の世界のことや、家族のことを」
「それ本当!?」
リサはバジルにグッと顔を近づけた。
「お約束は出来ませんけど、ひょっとしたら教えてもらえるかもしれません」
バジルが真剣な表情でリサを見上げる。
リサはごくりと息を呑み、ぎゅっと目を瞑った。
瞼の裏に浮かんできたのは、懐かしい家族の顔。最後に会った時のまま時間が止まっている。
「お願い、女神様に聞いてきてくれる……?」
リサは泣きそうな顔でバジルに頼む。
「はい、わかりました」
バジルはこくりと頷いて、リサの願いを聞き入れた。
それからすぐに、バジルは女神のもとへ旅立った。女神のいる場所は遠いので、しばらくは帰ってこられないらしい。
リサは祈るような気持ちで、窓から飛び出していくバジルを見送った。
バジルが旅立って、今日で三日目になる。
料理科の授業がなく、カフェもそう忙しくなかったため、リサはカフェの厨房で料理の試作に精を出していた。
今作っているのは季節の日替わりメニューだ。
つい先日開店したばかりの二号店でも同じものを出すため、レシピ作りに手を抜くことは出来ない。
考えた末、リサが決めたメニューは肉じゃがだった。
季節は春先で少し寒さが残っており、葉物野菜はまだほとんど出回っていない。そうなると、根菜を使った温かい肉じゃがはぴったりだろう。
醤油ベースのあっさりした味付けで、ご飯にも合う定番のおかず。
家庭や地方によって使う肉や作り方が変わるけれど、リサが普段から作っているのは豚肉を使った肉じゃがだった。
じゃが芋の代わりに使うのは、ムム芋と呼ばれる芋だ。人参に似たパニップ、玉ねぎに似たニオルなどと一緒に大きめに切り、水を張った鍋に入れて火にかける。
煮崩れないよう慎重に茹でたら、薄切りの豚肉を蓋をするようにのせる。軽く火を通し、肉から出るアクを取れば、いよいよ味付けだ。
味付けは甘いものからが基本。初めにしょっぱい調味料を入れると、あとから入れた甘みが素材にしみ込まないのだ。
まずは砂糖、お酒を加えてしばらく煮る。
甘みが程よく浸透したら、醤油と塩で味を調えていく。
今回は試作なので省くが、本来ならば味が決まったところで火を止めて冷ます。そして完全に冷めたら、また加熱する。こうすることによって、さらに味がしみ込むのだ。
ひとまず出来上がった肉じゃがを小鉢に盛り、味見してみることにした。
薄茶色に色付いたムム芋を箸で二つに割り、一気に頬張る。しっかりと火の通ったホクホクの芋を味わってから、リサは小鉢を調理台に置いた。
「……違う」
小さく呟いたリサは、鍋をコンロから下ろし、新しい鍋を取り出す。
そして再び肉じゃがの試作に入った。
根菜類の皮を剥き、大きめにカットしたら、水を張った鍋に入れて火にかける。それが沸騰するまでの間に、肉を食べやすい大きさに切っておく。
いつも料理に対して真剣に向き合っているリサだが、この時の彼女の表情は鬼気迫るものがあったようだ。
「リサさん……?」
わき目もふらず黙々と試作をするリサに、調理担当のヘクターが声をかけてきた。
しかし、リサはそれにも気付かない。
ヘクターはあれ? という顔をしつつも、すぐに自分の仕事に戻っていく。
一方、リサは根菜の入った鍋を落ち着かない気持ちで見つめていた。
――何が足りない? 食材? 調味料? それともタイミングの問題……?
先程作った肉じゃがに足りないものを必死に考える。カフェのメニューとしては合格点に達していたが、今のリサにはそれだけではダメだった。
――お母さんの作る肉じゃがは、こんな味じゃなかった……!
リサがイメージしているのは、かつて母が作ってくれた肉じゃがの味。
それは高級感があるわけでも洗練されているわけでもない、ごくごく庶民的な肉じゃがだった。
けれど、リサにとっては幼い頃から慣れ親しんだ、ただ一つの味なのだ。
自分が作った肉じゃがは、どこか違う。何かが足りない気がする。これまで肉じゃがを作ったことは何度もあるが、母の味を再現できたことは一度もない。
それなのに、今ここで母の味を再現しなければならないと、なぜか強く感じていた。
根菜に火が通ったところで肉を入れ、味付けしていく。先程とは調味料の種類や割合を変えてみた。
リサは鍋にスプーンを差し込み、煮汁を口に含む。
「……違う」
顔をしかめて小さく呟いたあと、鍋をコンロから下ろして、また新しい鍋の準備を始めた。
焼き目のついた餃子がお皿に綺麗に並んでいるのを見て、ライラが声を上げた。他の二人からも尊敬の視線を向けられたリサは、少し得意げに笑う。
二皿めはターラが焼くことになった。リサはアドバイスをしながら、その様子を見守る。
ケイリーはあらかじめ作っておいたという、他のおかず類を用意し始めた。
一方、ジークはというと、皮作りで汚れた調理台を片付け、さらにダイニングの方の準備までしてくれている。
それに触発されたらしいライラも、カトラリーをテーブルに並べ始めた。
席順を決めるのも彼女の役目らしく、「ここはジーク兄で~、ここがリサちゃん」などと呟く声がキッチンまで聞こえてくる。
やがて三皿めの餃子が焼き上がる頃、ダイニングに新たな人物がやってきた。
「お父さん、マシュー兄、もうご飯できてるよ~」
ライラがそう言って嬉しそうにじゃれついたのは、ジークの父と兄である。
父の名はロドニー・ブラウン。シルバーブロンドが特徴的で、どうやらジークとライラの髪色は彼から受け継がれたものらしい。
そして兄の方は、マシュー・ブラウンという名だ。兄弟の中で彼だけは母親に似たのか、ケイリーと同じ緑色の髪をしていた。
髪色や顔立ちは違っていても、ロドニーとマシュー、そしてジークはとても似ている。
なぜなら、三人とも無表情で寡黙なのだ。
ケイリー曰く、馬の飼育と繁殖を家業にしているせいらしい。
馬というのは、とても頭のいい動物だ。察しがよく、状況判断に優れている。つまり言葉や表情で伝えなくても意思疎通が出来るため、ブラウン家の男はみな無表情で無口なのではないか……というのがケイリーの説だ。
それを聞いた時は信じられなかったリサだが、こうして三人を見ていると、ケイリーの説はあながち間違いではないかもしれないと思う。
料理が出来たと聞いても、ロドニーとマシューは無表情のままだった。だが、そそくさと席に座り始めたところを見ると、その味に期待しているのがわかる。
もう何年もジークと一緒に過ごしているリサは、ちょっとした行動や表情の変化から彼の気持ちを読み取ることが出来る。そんなリサから見ると、ロドニーもマシューも本当にジークとそっくりだった。
ターラとケイリーが出来上がった料理を次々と運んできて、テーブルに並べていく。それが終わると、全員で食卓を囲んだ。
お誕生日席には、家長であるロドニーが座っている。彼の左手側の列にはケイリー、マシュー、ターラ。その向かい側にライラ、リサ、ジークが座った。
パリッと焼き上がった餃子、人参に似たパニップとシューゼットのコールスローサラダ、ベーコンと野菜のスープ、そしてリサが手早く作ったチャーハンが食卓に並ぶ。
食事の準備が整ったところで、ロドニーがぐるりと全員を見回した。
「ジーク、リサさん、よく来てくれた。リサさんは食事も作ってくれてありがとう」
リサを見ながら、ロドニーはお礼を言った。
予定にはなかったものの、ケイリーによって強制参加させられたジークがぼそりと呟く。
「……俺も途中から作らされたんだが……」
その声にかぶせるように、ライラが声を上げた。
「ライラもお手伝いしたもん!」
ロドニーは「そうか、頑張ったな」と褒めてから言葉を続ける。
「二人の結婚はもう少し先だが、こうして家族みんなで食卓を囲めるのは喜ばしいことだ」
ロドニーの隣に座るケイリーが嬉しそうに何度も頷く。
マシューとターラの二人はリサに温かい眼差しを向け、ライラもにこにこしながらリサを見上げた。
その場が優しい空気に包まれる中、ロドニーが食前の挨拶を口にし、他のみんなは小声でそれを復唱した。
最後に全員で「いただきます」と声を揃え、一斉にカトラリーを手に取った。
第三章 おいしい食事の時間です。
「私は餃子~」
ライラがウキウキしながら、フォークを持っている手を大皿の方へ伸ばす。だが、手の長さが足りない上に、フォークでは取りづらいらしい。苦戦しているライラを見て、隣に座るロドニーが餃子を取ってあげていた。
ちなみに彼らはフォークだが、リサとジークだけは箸を使っている。
日本人のリサはもちろんのこと、ジークも今やすっかり箸に慣れ、普段の食事でも問題なく使っていた。そんな二人にとって、餃子はやはり箸の方が食べやすい。
スープで口を潤したところで、リサも餃子に箸を伸ばした。
酢や醤油で作った特製のタレにちょんちょんとつけ、ぱくりと齧りつく。
パリッとした皮の歯ごたえに、小麦粉のもちっとした食感。ジワリと滲み出す肉汁の旨味とシューゼットの甘みが口いっぱいに広がった。
炭水化物と肉と野菜という三つの要素が、ちょうどいいバランスで組み合わさっている。こんな料理が餃子以外にあるだろうか。
にんにくに似たリッケロの風味もきいていて、それがまた食欲を掻き立てる。餃子自体はそれほど大きくなく、食べやすいので何個でもいけてしまいそうだ。
そう思っているのはリサだけではないようで、周りを見回せばみんながみんな、餃子を夢中で頬張っている。
時折、他のおかずを食べたりもしているが、あくまでメインは餃子だった。
「おいしいね~」
ライラが幸せそうに笑うと、他の家族も頷く。
「本当にね! 皮がパリパリで、中のお肉もおいしい~」
ターラが頬を手で押さえながら言うと、ケイリーも同意した。
「このタレもぴったりね! 酸味があるからさっぱり食べられるわ!」
脂っこいものが食べにくい年齢のケイリーも、お肉がたっぷり入った餃子をおいしく食べられているようだ。酸味のきいたタレと、餡に入っている野菜のおかげだろう。
男性陣は頷きつつも黙って食べていた。けれど、食べるスピードの速さが、彼らの気持ちを雄弁に物語っている。
おかげで大皿三つ分も作ったというのに、どんどん減っていた。
ブラウン家の家業は肉体労働でもあるので、かなり体力がいるらしい。それもあってか、みんな食欲旺盛である。
餃子を大量に焼いた上に、チャーハンまで作ったので、量が多すぎたかもしれないとリサは思っていた。だが、それは余計な心配だったようだ。
「ところで、結婚式の準備は順調なの?」
お腹がほどよく満たされてきたところで、ターラがリサに話を振ってきた。
「衣装はほとんど仕上がっているんですよ。あとは小物くらいですね」
「シリルメリーの花嫁衣装だなんて、私も見るのが楽しみだわ~」
ケイリーは目を輝かせて言った。
リサの花嫁衣装は、シリルメリーという人気ブランドを手掛ける養母アナスタシアが、丹精を込めて作っている。
ドレスとヴェールはほぼ完成し、今は手袋や下着に取りかかっているらしい。
リサがお願いするまでもなく、アナスタシアはものすごい熱意をもって取り組んでくれていて、リサとしてはありがたい限りだった。
シリルメリーのトップデザイナーであるアナスタシアが一から手掛けているドレスを、リサの身近な女性たちは自分のことのように楽しみにしてくれていた。
「ライラもお揃いの着るんだよね? 当日はそれを着てお手伝いするんだもん!」
ギョーザが刺さったフォークを手に持ったまま、ライラが声を弾ませる。
実は式の当日、リサはライラにちょっとした役目をお願いしているのだ。
「そうだよ~! ライラちゃん、よろしくね」
「まっかせて!!」
鼻息荒く胸を張るライラに、リサはクスクスと笑った。喜んで引き受けてくれただけあって、やる気は十分なようだ。
そんなおしゃべりをしながら食事は進む。リサは腹八分目くらいで箸を止めたが、マシューやライラはまだ食べていた。
大皿に残った餃子はあと一つ。
その最後の一つを食べようと、ライラが餃子めがけてフォークを伸ばした。
しかし、それは向かい側からサッと出てきた手によって、かっさらわれてしまう。
「あっ!! 最後の一個、ライラが食べようと思ってたのにー!!」
餃子を先に取ったのはマシューだった。
憤慨するライラにちらっと目を向けた彼は、取った餃子を無言で口に運ぶ。
「ああー!!」
ライラの嘆く声も意に介さず、マシューはおいしそうに餃子を咀嚼した。
「私の餃子がぁ……」
これまでたくさん食べたというのに、まだ食べ足りないらしく、ライラはマシューを恨めしげに見つめる。
「うまかった」
マシューの煽るような言葉に、ライラの怒りが爆発した。
「なんで食べちゃうのよー!! ライラの餃子だったのに!! バカバカ、マシュー兄嫌い!!」
椅子から立ち上がり地団太を踏むライラに、ケイリーとターラは苦笑する。驚いている様子はないので、マシューとライラのこういったやりとりは日常茶飯事なのかもしれない。
「もぅ~!!」
だんだん悲しくなってきたのか、ライラの目にじわりと涙が浮かぶ。
そこでようやくマシューが目を見開き、おろおろし始めた。しかし肝心の餃子は、既に胃袋の中である。
可愛い妹を少しからかうつもりだったが、まさか泣かれてしまうとは思いもしなかったらしい。狼狽する長男を見て、父のロドニーがため息を漏らした。
「ライラ。お父さんの食べかけだけど、食べるか?」
彼の前に置かれた小皿には、食べかけの餃子が残っている。ライラはロドニーに向かってこくりと頷いた。
小皿をライラの方へ差し出しながら、ロドニーはマシューに責めるような視線を向ける。するとマシューはばつが悪そうに顔を背けた。
ライラは椅子に座り、袖で涙を拭ってフォークを握り直す。
そして父の食べかけの餃子を、一気に口に放り込んだ。
もぐもぐ咀嚼したあと、ライラはまだ涙の残る目を細めて笑う。
「おいひい!」
少女の可愛らしい笑顔に、その場の空気が和らいだ。
――あれ?
リサはこの光景に、妙な既視感を覚えた。
次の瞬間、頭の中に過去の記憶がよみがえってくる。
リサがまだ小学校に上がる前、ちょうど今と同じように、家族みんなでテーブルを囲んでいた。
目の前のお皿に一個だけ残ったウインナー。それをリサは狙っていた。ウインナーは当時のリサの大好物だったのだ。
しかし、リサがウインナーを取る寸前、横からサッと取られてしまった。
その犯人は一番上の兄だった。
『あー!!』と声を上げるリサ。だが兄は得意げに笑い、さっさとウインナーを食べてしまう。
まだ幼かったリサは駄々をこね、大泣きしてしまった。他の家族がどうにか宥めようとしたが、まったく効果はなく……
反省した兄が『次にウインナーが出た時には、自分のを二個やるよ』と言ってくれて、ようやくリサの機嫌が直ったのだった。
そんな記憶が唐突によみがえったことで、リサは少し動揺する。
何か特別なイベントがあったわけでもなく、本当になんでもない日のことだった。なぜあそこまでウインナーにこだわっていたのかも、今ではわからない。
けれど、焦った兄の顔やリサを慰める両親の顔などが、まるで映画を見ているかのように、はっきりと浮かんできたのだ。
胸に湧き上がってきたのは、途方もない懐かしさだった。
――私の家族は、今どうしているんだろう……
泉に小石を投げ込んだように、心が波立つ。
「――さん。リサさん?」
ケイリーの声にハッとして、リサは顔を上げた。
「は、はい!」
「そろそろ片付けようと思うんだけど、いいかしら?」
リサが物思いにふけっているうちに、みんなはテーブルの上を片付け始めていたようだ。既にターラの姿はなく、隣に座っていたライラも椅子から立ち上がっている。
「あ、私もやります!」
「ライラも~」
すっかり機嫌をよくしたライラに続いて、リサも素早く立ち上がった。
第四章 記憶とは違う味です。
ジークの実家から帰って以来、リサはぼーっとしていることが増えた。
あの日、フラッシュバックしたように例の記憶がよみがえってからというもの、リサは元の世界にいる家族のことばかり考えてしまっている。
「みんな、元気にしてるかな……」
自室の鏡台の前でヘアブラシを片手に、リサはポツリと呟いた。
なぜかはわからないが、突然こちらの世界に飛ばされたリサ。幸いにもクロード夫妻に助けられ、養女にしてもらったおかげで、今日までこうして生きている。だが、自分が消えたあと、元の世界はどうなってしまったのだろう。
家族だけではない。友達は? 職場の人たちは?
みんな今頃どうしているのだろうか。
急にいなくなってしまったリサのことを、今も必死に探してくれているかもしれない。
この世界で暮らし始めて数年が経つというのに、今になってそんなことばかりが頭を巡る。
思えば不自然なほど、元の世界のことを考えてこなかった。リサがこの世界に飛ばされた時と同じように、何か不思議な力が働いていたのだろうか。
いくら考えても答えは出ず、不安だけが湧き上がる。
リサは憂いのこもったため息を吐き出した。
「マスター、大丈夫ですか?」
鏡越しに問いかけてきたのは、精霊のバジルだ。心配そうな表情を浮かべてこちらを覗き込んでいる。
「だいじょう、ぶ……ではないかも……」
リサは自嘲するように笑った。
両親や兄たちのことまで忘れていたとは、自分はなんて薄情なんだろう。
けんかすることも叱られることもあったけれど、リサの家庭は愛にあふれていた。それなのに……と、リサは自分に嫌悪感すら覚える。
怒りなのか悲しみなのかわからない感情が胸に渦巻いていた。
「何か、バジルに出来ることはありますか?」
そう気遣ってくれるバジルのために、なんとか笑顔を作ろうとするリサ。だが、どうにも上手くいかず、引きつった笑みを浮かべるだけだった。
「……ごめん、バジルちゃん……ちょっと家族のこと、思い出してた」
平坦な声で呟いたリサに、バジルがハッと息を呑む。リサは黙り込み、ブラシを手に持ったまま俯いた。
しばらくの間、沈黙が続く。
それを破ったのは、バジルの小さな声だった。
「……マスター、バジルが家族のことを聞いてきましょうか?」
「え……?」
リサは驚いて顔を上げる。
バジルはリサの正面に回り込み、再び口を開いた。
「もしかしたら、女神様なら知っているかもしれません。マスターの元の世界のことや、家族のことを」
「それ本当!?」
リサはバジルにグッと顔を近づけた。
「お約束は出来ませんけど、ひょっとしたら教えてもらえるかもしれません」
バジルが真剣な表情でリサを見上げる。
リサはごくりと息を呑み、ぎゅっと目を瞑った。
瞼の裏に浮かんできたのは、懐かしい家族の顔。最後に会った時のまま時間が止まっている。
「お願い、女神様に聞いてきてくれる……?」
リサは泣きそうな顔でバジルに頼む。
「はい、わかりました」
バジルはこくりと頷いて、リサの願いを聞き入れた。
それからすぐに、バジルは女神のもとへ旅立った。女神のいる場所は遠いので、しばらくは帰ってこられないらしい。
リサは祈るような気持ちで、窓から飛び出していくバジルを見送った。
バジルが旅立って、今日で三日目になる。
料理科の授業がなく、カフェもそう忙しくなかったため、リサはカフェの厨房で料理の試作に精を出していた。
今作っているのは季節の日替わりメニューだ。
つい先日開店したばかりの二号店でも同じものを出すため、レシピ作りに手を抜くことは出来ない。
考えた末、リサが決めたメニューは肉じゃがだった。
季節は春先で少し寒さが残っており、葉物野菜はまだほとんど出回っていない。そうなると、根菜を使った温かい肉じゃがはぴったりだろう。
醤油ベースのあっさりした味付けで、ご飯にも合う定番のおかず。
家庭や地方によって使う肉や作り方が変わるけれど、リサが普段から作っているのは豚肉を使った肉じゃがだった。
じゃが芋の代わりに使うのは、ムム芋と呼ばれる芋だ。人参に似たパニップ、玉ねぎに似たニオルなどと一緒に大きめに切り、水を張った鍋に入れて火にかける。
煮崩れないよう慎重に茹でたら、薄切りの豚肉を蓋をするようにのせる。軽く火を通し、肉から出るアクを取れば、いよいよ味付けだ。
味付けは甘いものからが基本。初めにしょっぱい調味料を入れると、あとから入れた甘みが素材にしみ込まないのだ。
まずは砂糖、お酒を加えてしばらく煮る。
甘みが程よく浸透したら、醤油と塩で味を調えていく。
今回は試作なので省くが、本来ならば味が決まったところで火を止めて冷ます。そして完全に冷めたら、また加熱する。こうすることによって、さらに味がしみ込むのだ。
ひとまず出来上がった肉じゃがを小鉢に盛り、味見してみることにした。
薄茶色に色付いたムム芋を箸で二つに割り、一気に頬張る。しっかりと火の通ったホクホクの芋を味わってから、リサは小鉢を調理台に置いた。
「……違う」
小さく呟いたリサは、鍋をコンロから下ろし、新しい鍋を取り出す。
そして再び肉じゃがの試作に入った。
根菜類の皮を剥き、大きめにカットしたら、水を張った鍋に入れて火にかける。それが沸騰するまでの間に、肉を食べやすい大きさに切っておく。
いつも料理に対して真剣に向き合っているリサだが、この時の彼女の表情は鬼気迫るものがあったようだ。
「リサさん……?」
わき目もふらず黙々と試作をするリサに、調理担当のヘクターが声をかけてきた。
しかし、リサはそれにも気付かない。
ヘクターはあれ? という顔をしつつも、すぐに自分の仕事に戻っていく。
一方、リサは根菜の入った鍋を落ち着かない気持ちで見つめていた。
――何が足りない? 食材? 調味料? それともタイミングの問題……?
先程作った肉じゃがに足りないものを必死に考える。カフェのメニューとしては合格点に達していたが、今のリサにはそれだけではダメだった。
――お母さんの作る肉じゃがは、こんな味じゃなかった……!
リサがイメージしているのは、かつて母が作ってくれた肉じゃがの味。
それは高級感があるわけでも洗練されているわけでもない、ごくごく庶民的な肉じゃがだった。
けれど、リサにとっては幼い頃から慣れ親しんだ、ただ一つの味なのだ。
自分が作った肉じゃがは、どこか違う。何かが足りない気がする。これまで肉じゃがを作ったことは何度もあるが、母の味を再現できたことは一度もない。
それなのに、今ここで母の味を再現しなければならないと、なぜか強く感じていた。
根菜に火が通ったところで肉を入れ、味付けしていく。先程とは調味料の種類や割合を変えてみた。
リサは鍋にスプーンを差し込み、煮汁を口に含む。
「……違う」
顔をしかめて小さく呟いたあと、鍋をコンロから下ろして、また新しい鍋の準備を始めた。
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