86 / 221
6巻
6-1
しおりを挟むプロローグ
フェリフォミア王国では例年にないほど暑い夏が、ようやく終わった。青々と茂っていた木々もだんだん秋の色合いに変わろうとしている。
爽やかな風に揺れる街道沿いの木々を眺めながら、一人の若い女性が馬車に揺られていた。
彼女が乗っているのは、街から街へ長距離を移動する乗合馬車だ。
八人乗りの馬車には、彼女の他に幼い少女とその母親、そして一組の老夫婦が乗車しており、壮年の御者が二頭の馬を巧みに操っていた。
先程までおしゃべりしていた少女が眠りに落ちてからは、車内は穏やかな静寂に包まれ、馬の蹄の音と車輪が回る音だけが聞こえている。
「皆さん、もうすぐ到着ですよ」
御者が眠っている少女を気遣い、声を抑えながら言った。
その声に促されるように、女性は前方を見る。
すると、小高い丘の上にそびえ立つ王城が見えた。街道を行く馬車や人の数も増え、いよいよ街が近づいているという実感が湧いてくる。
馬車が徐々に速度を落とし、やがて停車した。
そこは王都の入り口にある停留所で、乗合馬車や貨物用の大型馬車が多く停まっていた。
「王都に到着しました。忘れ物にお気を付けて」
一足先に馬車から降りた御者が、客室のドアを開けて声をかけてきた。
ドアの近くに座っていた老夫婦がゆっくりと降りていくと、御者が彼らの荷物を下ろす手助けをする。
馬車が停まったことで自然と目が覚めたのか、少女が眠たそうに目をこすりながら周囲をキョロキョロと見回す。
その様子を、女性は微笑ましく見ていた。
道中で仲良くなった少女との別れは惜しい。だが、彼ら母娘にも、そして自分にも、向かうべき場所がある。
またね、というように少女に手を振ると、女性は大きなトランクを軽々と持ち上げ、馬車を降りた。
狭い客室から外へ出た解放感に、大きく伸びをする。そしてトランクを持ち直し、彼女は歩き出した。
「……帰ってきた」
数年ぶりに見る街並みは懐かしく、自然と呟きが漏れる。かつて苦楽を共にした仲間たちの顔が次々と思い浮かぶ。
彼らと会うのを楽しみにしながら、彼女は軽やかな足取りで王都の雑踏の中へと歩き出した。
第一章 謎の美女が来店しました。
「ヘレナちゃん、温かいカフェオレ頂戴!」
店に入ってきた常連の男性客が、カウンターの中で作業をしている女性店員に言った。
オレンジ色のショートヘアが似合う女性店員――ヘレナは、突然の注文にも慌てることなく、男性客に笑顔を向ける。
「かしこまりました」
ここはフェリフォミア王国の王都に店を構える、カフェ・おむすび。
小さな店でありながら、見たこともないおいしい料理が食べられると評判である。
今日もランチタイムを過ぎているにもかかわらず、ほぼ満席だった。
ヘレナは店内の様子に気を配りつつ、カウンター内に設置してある簡易コンロで、水とミルクをそれぞれ加熱していく。
その間に、コーヒー豆の準備を始めた。
あらかじめ焙煎してあるコーヒー豆を計量スプーンで掬い、手挽きのコーヒーミルに入れていく。
するとカウンターに座っている先程の男性客が、何やらそわそわし始めた。
そんな彼の様子をクスリと笑い、ヘレナはコーヒーミルを差し出す。
「どうぞ。ゆっくりお願いしますね」
「了解!」
男性客は子供のように嬉しそうな顔で返事をした。彼がコーヒーミルのハンドルを回したがるのは、いつものことだ。
コーヒーミルを受け取った男性客は、さっそく上部のハンドルを回し始めた。ゴリゴリという鈍い音と共に、香ばしいコーヒーの香りが広がっていく。
やがてハンドルを回しても音が鳴らなくなったところで、ヘレナは男性客からコーヒーミルを返してもらった。
そして、下部についている引き出しから粉砕されたコーヒー豆を取り出し、用意していたドリップ用のネルフィルターに入れる。
そこへ万遍なくお湯をかけて蒸らしてから、再びお湯を注ぐ。カフェオレには濃い目のコーヒーが合うので、ゆっくり時間をかけてドリップしていく。
ドリップしたコーヒーをカップに移し、温めておいたミルクを注げば完成だ。
「お待たせしました、カフェオレです」
ヘレナがカフェオレの入ったカップを男性客の前に置いた。
「ありがとう。いや~、いつ見ても手際がいいね」
あっという間にカフェオレを作り終えたヘレナに、男性客は感心した顔で言う。
そんな彼に微笑むと、ヘレナは別の仕事に取り掛かった。
その頃、もう一人の女性店員がカウンターの端で仕事をしていた。テイクアウト用の小窓越しに、外にいる女性客とやり取りをしている。
「えーっと、メイチのタルトとチーズケーキ、あとプリンを二つで!」
小窓の下には店の外からも見えるガラスのショーケースがあり、女性客はそこに並べられたケーキを指さしながら注文していた。
「かしこまりました」
ミルクティー色の髪をした女性店員――オリヴィアは、おっとりした笑みを浮かべた。そして、注文されたケーキをショーケースから丁寧に取り出していく。
それを紙製の箱に詰め終えると、女性客に中身を見せた。
「こちらでお間違いないですか?」
「はい!」
きちんと並べられたケーキを見て、女性客は嬉しそうに頷いた。
オリヴィアは彼女から代金を受け取り、きちんと蓋をした箱を渡す。
「ありがとうございました」
ケーキの入った箱を大事そうに抱えて、女性客は帰っていった。
その時、出来上がった料理を手に、厨房からもう一人の女性店員が出てくる。
長い黒髪を一つに結った女性店員は、パンケーキがのったお皿を持って、注文伝票に書かれた番号の席に向かった。
「お待たせいたしました、パンケーキでございます」
彼女がテーブルにお皿を置くと、二人組の若い女性客は、パッと表情を明るくした。
「わぁ!」
「おいしそう!!」
お皿にのっているのは、見るからにふわふわなパンケーキ。色とりどりのフルーツや、ホイップクリームがトッピングされている。
小さい容器に入ったジャムとシロップも添えられており、お好みで味を変えられるようになっていた。
二人はボリュームたっぷりのパンケーキをシェアするつもりらしく、既にテーブルには取り皿と二人分のカトラリーが準備されていた。
女性店員はテーブルの上に目を走らせ、足りないものがないか確認する。
「ごゆっくりお召し上がりください」
そう言って、彼女は踵を返した。
「ねぇねぇ。今の人が、このお店の店長さんだよね?」
「そうみたいだよ! 話には聞いてたけど、若いんだね~」
他のテーブルから空いたお皿を回収している女性店員を見て、二人の女性客はひそひそと話す。
彼女たちが言う通り、黒髪の女性店員は、このカフェ・おむすびの店長だ。
リサ・クロカワ・クロードという珍しい名前の彼女は、この世界とは別の世界からやってきた。現在はカフェ・おむすびを経営する傍ら、フェリフォミア国立総合魔術学院の料理科で主任講師を務めている。
リサは空いたお皿を両手に持って、カウンターの中に入った。
「リサさん、すみません」
コーヒーを淹れながら申し訳なさそうに言ったヘレナに、リサは笑顔を向ける。
「ううん、厨房の方は落ち着いてるから問題ないよ~」
すると、ヘレナはほっとした様子を見せた。
「このコーヒーをお客さんに出したら、他にオーダーは入っていないので、もうホールの方は大丈夫です」
「そう? じゃあ私は厨房に戻るね」
リサはそう言って、カウンターの奥にある厨房へ向かった。
その時、カランカランとドアベルの音が鳴り、入り口のドアが開く。
「いらっしゃいませ」
リサは足を止め、手に持っていたお皿をひとまずカウンターの中に置いた。そして、入店してきた客を誘導しようと入り口へ向かう。
やってきたのは、一人の女性だった。
女性にしてはかなり背が高く、スラリとしていて、濃い紫色の髪を一つに結い上げている。
元の世界にいたファッションモデルのような女性に、リサは目を奪われた。
その女性は店内をキョロキョロと見回していたが、じっと見つめるリサの視線に気付いたのか、こちらに顔を向ける。
リサは目が合ったことにドキッとしつつも、笑みを浮かべて言った。
「お一人様ですか?」
女性は店内を見回していたので、誰かと待ち合わせしているのかもしれないが、リサは念のため人数を確認する。
「あー……待ち合わせ、ではないんですけど……」
女性は困った顔をして、歯切れ悪く答えた。
待ち合わせではないが、人を探している。そう言いたげな女性に、リサはどうしたものかと思いつつも、ひとまず席へ案内することにした。
「ではカウンター席に……」
「あの、ここでジーク・ブラウンっていう人が働いていると思うんですが」
リサの言葉にかぶせるように、女性は言った。
ジークは、調理を担当しているカフェ・おむすびの従業員だ。そして、リサと同じく学院の料理科で講師も務めている。
今日は授業があるため、カフェには出勤していない。
「申し訳ありません。生憎今日は出勤していないのですが……」
リサはそう答えながら、少し不安になる。
ジークはシルバーブロンドに青い瞳の青年で、整った顔立ちをしている。その上、元騎士団員ということもあり、体格もいい。
感情を顔に出すのが苦手らしくいつも無表情なのだが、それにもかかわらず、女性にすごくモテるのだ。
カフェにもジーク目当ての女性客がいるし、中にはどうにかジークにアプローチしようと、あの手この手で迫る肉食女子もいたりする。
カフェの店長としてだけではなく、リサ個人としても、そういう女性客には困っていた。
なぜなら、リサはジークと付き合っているのだ。
だが相手はお客さんということもあり、表情には出さないように気を付けながら、リサは女性の言葉を待った。
「そうですか。でも、ここで働いているというのは間違いないんですね」
彼女は少し残念そうにしていたが、納得した様子で頷く。
「すみませんが、出直します。……あ、ご迷惑でなければ、ジークに『ヴィルナが戻ってきた』と伝えていただけますか?」
「えっ? はい……」
思わぬ言葉に戸惑いつつも、リサは了承した。
女性は、サッと踵を返してカフェを出て行く。ジークにどんな用があるのかと、聞く暇もなかった。
颯爽と立ち去ってしまった彼女の後ろ姿を、リサは呆然として見送ったのだった。
どうやら、あの女性はヴィルナという名前らしい。そして、ジークのことをファーストネームで呼ぶほど親しい関係のようだ。
もやもやした気持ちを抱えつつ、リサは閉店作業をしていた。
「リサさん、お先っす!」
今日の売り上げを帳簿に書き込んでいたリサは、その声に顔を上げる。
そこには、カフェの調理担当である、アラン・トレイルが立っていた。
鶯色の天然パーマが特徴的な彼は、いつもニコニコしている。元は王宮の料理人見習いだったが、自ら希望してカフェ・おむすびに転職したのだ。
最初はかなり苦労していたものの、今ではすっかり一人前に成長したアラン。リサも安心して彼に厨房を任せている。
「アランくん、お疲れ様」
「はい。リサさんも、あまり遅くならないうちに帰ってくださいね」
そう言って、アランは厨房を出て行った。
その背を見送ると、リサは再び帳簿に目を落とす。
やがて記入を終えたリサは帳簿を閉じ、固まった体をほぐすように大きく伸びをした。
「ん~」という気の抜けた声が、自然と口から漏れる。
「……お疲れ様、リサ」
そんな言葉と共に、クスクスという笑い声が聞こえて、リサはパッと後ろを振り向いた。
シンプルなシャツを着た銀髪の青年が、微笑みながらリサを見ている。
「ちょっ! ジークってば、いつからいたの!?」
リサは恥ずかしさに頬を染め、思わず大声を上げた。
彼こそがジーク・ブラウン。リサにとっては公私共にパートナーと言える男性だ。
「今来たばかりだよ。店の前を通りかかったら、厨房に明かりが点いてるのが見えたから、誰か残っているのかと思って立ち寄ったんだ」
どうやら、学院から帰る途中のようだ。
「だったら、入ってくる時に声をかけてよ! びっくりした~」
「集中してたみたいだから、邪魔しちゃ悪いと思ってさ」
そう言ってジークはリサに近づき、調理台の上を覗き見る。
「帳簿をつけてたのか?」
「そう。出来る時にやっておかないと、と思ってね」
リサはカフェ・おむすびだけではなく、料理科の責任者でもある。そのため、毎日カフェと料理科を行き来する生活を送っていた。
自分がいない間はジークやヘレナに店を任せているものの、リサでなければ出来ないこともある。帳簿に関してもそうだ。つけるのは誰でも出来るが、最終的な数字の確認をしたり、毎月の売り上げをまとめたりするのは、リサにしか出来ない重要な仕事であった。
リサの言葉を聞きながら、ジークは帳簿に手を伸ばす。そして座っているリサの後ろから調理台に左手をつき、右手で帳簿をパラパラとめくり始めた。どうやら自分が店に出なかった日の売り上げを確認しているようだ。
気付けば、リサはジークの腕の中にすっぽりと囲われていた。
近すぎる距離にドキリとしつつも、その状態のままジークからの質問に答える。
そして今日の売り上げの話になった時、リサはハッと思い出した。
「そういえば、今日ジークを訪ねてきた人がいたよ」
「俺を?」
特に思い当たる人物がいなかったのか、ジークは首を傾げた。
「ヴィルナっていう、背の高い女の人……『ヴィルナが戻ってきた』って伝えてほしいって言ってたけど、知り合いなの?」
リサは腕の中に囲われたまま、ジークを見上げる。彼の顔が逆さまになって見えた。
「ヴィルナ……ああ、あいつか! 知り合いだ」
ジークは懐かしそうに目を細めると、「そうか、戻ってきたのか……」と呟く。
彼女がただのジークファンではないとわかったものの、ジークの嬉しそうな顔を見て、リサの胸にあのもやもやした気持ちが湧き上がる。
せっかくドキドキするシチュエーションなのに、なんだか台無しになってしまった気がして、リサはジークの腕からさっと抜け出した。
「もう遅いから、そろそろ帰らなきゃ」
リサが突然立ち上がったことに驚いた顔をしながらも、ジークは「そうだな」と返す。
「家まで送る」
「……ありがとう」
ジークの言葉にどうにか笑顔で返してから、リサは帰り支度を始めるのだった。
第二章 関係が気になります!
「あの人と、どういう関係なんだろう……」
リサは自室のベッドに寝転び、天井を見上げてため息を吐いた。
あの後、ジークに自宅まで送ってもらったが、ヴィルナとどういう関係なのかは結局聞けず仕舞いだった。
ジークは女友達を作るタイプではない。
リサの知る限り、ヘレナとオリヴィア、それとカフェの隣に立つサイラス魔術具店のアンジェリカぐらいしか、親しくしている女性はいないはずだ。
けれど、ヴィルナという名前を聞いて、ジークはとても嬉しそうにしていた。
怪しさは一切感じなかったものの、リサとしては複雑な気持ちになってしまう。
「マスター? どうしたんですか?」
天井を見上げるリサの視界に、小さな人影が入り込んできた。
緑の服を着た、体長二十センチほどの女の子。
リサと契約している精霊のバジルだ。
バジルは植物を司る精霊で、リサをマスターと呼び、普段は彼女の肩にのったり近くを飛んでいたりする。
純粋な目でこちらを見つめるバジルに、リサは微笑みかけた。
「ちょっと、ヴィルナさんっていう人が気になっててね……」
「昼間、カフェに来た人ですね!」
「そう。ジークを訪ねてきたみたいなんだけど……」
呼び捨てにしているということは、かなり親しい間柄なのだろう。
それならそれで構わないけれど、ジークからどういう関係なのかを説明してくれてもよさそうなものだ。だが、彼からそういう話は一切なかった。
そのことが、余計にリサの頭を悩ませている。
「背が高くて、スラッとしてて、凛とした美人だったなぁ……」
濃い紫色の髪を高い位置で結び、瞳は深い緑色。
日本人らしく凹凸の少ない顔をしているリサとは違い、スッと鼻筋が通った彫りの深い顔立ちだった。
民族的な違いなのだから仕方ないとは思いつつも、リサは劣等感を覚えてしまう。
思考がどんどんネガティブな方へ傾いていくのに気付き、リサはぶんぶんと頭を振った。
「考えても仕方ない! もう寝よう!!」
考えるのをやめたリサは、布団をバサッとかぶって丸くなる。
そんなリサの様子を、バジルは不思議そうに見つめていた。
――翌日。
この日もカフェの営業日だったが、リサは午後から料理科の授業があるため、途中で抜けることになっていた。
開店準備をした後、ランチタイムの最初のオーダー分だけを手伝うと、リサは料理科へ行く準備を始める。
「じゃあ、後はよろしくね」
厨房で忙しく働いているジークとアランに声をかけると、二人から快い返事がきた。
それに安堵したリサが厨房を出ようとしたところで、オリヴィアがやってくる。
「あの、ジークくんに、お客さんが来てるんだけど……」
「俺に客ですか?」
首を傾げたジークに、オリヴィアは答える。
「ヴィルナっていう女の人で……」
「ああ! ……アラン、悪いけど少し外してもいいか?」
ジークは納得した様子で大きく頷き、アランに声をかけた。
「いいっすよ!」
アランは元気よく答えた。
今店内にいる客のオーダー分は、すべて作り終えている。新たな客が来てオーダーを受けるまでは、多少の時間があるだろう。
ジークは厨房をアランに任せ、ホールの方へ向かった。
そんなジークの行動を黙って見ていたリサだが、内心気になって仕方がない。
料理科に行かなければと思いつつ、こっそりホールを覗いた。
多くの客で賑わう中、ジークはカウンターの端でヴィルナと話していた。
内容までは聞こえないが、親しげに会話をしている二人の姿に、リサは戸惑いを隠せない。あまり口数の多くないジークが、珍しく積極的に話しているのがわかったからだ。
リサの胸に、ちくりと小さな棘が刺さったような気がした。
自分が嫉妬しているということに、リサはすぐに気が付く。昨日から続くもやもやも、嫉妬からくるものなのだろう。
「リサさん、時間大丈夫ですか?」
厨房とホールの間にいたリサに、ヘレナが声をかけてきた。
その声にハッとして、リサは時計を見る。料理科の授業時間が迫っていた。
「ああ、行かないと。あとのこと、よろしくね」
「はい。いってらっしゃい」
ジークとヴィルナの様子は気になるけれど、料理科に向かわなければならない。
今も楽しそうに会話をしている二人を横目に、リサはカフェ・おむすびを後にした。
70
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
