異世界でカフェを開店しました。

甘沢林檎

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4巻

4-2

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「今日はどうしたの?」

 カップに口を付けたアンジェリカに、リサが聞いた。アンジェリカはお茶を一口飲んでから、カップを置いてリサを見上げる。

「二十四区に新しいお店が出来たの知ってる?」
「そうなの? あのあたりは行く機会がなかなかないから、あまり詳しくないんだ」

 フェリフォミア王国の王都は、複数の区に分かれている。
 それぞれの区には番号が付けられており、王宮に近い地区ほど番号が小さく、遠い地区ほど大きい番号が付いていた。
 ちなみにカフェ・おむすびのある道具街は、八区。王宮が出来たのとほぼ同じ時期からあるので、道具街自体の歴史が古い。そのため昔ながらの職人さんが多く、老舗しにせと呼ばれる店がたくさんあるのだ。
 その道具街からかなり離れたところに位置する二十四区。そんな地区の新店情報を知っているとは、さすが情報通のアンジェリカだなとリサは感心した。

「なんかね、お店の名前が『カフェ・お米』っていうらしいよ」
「え?」
「びっくりでしょ? この店と同じカフェなんだって!」
「いや、そっちじゃなくて……」

 リサが驚いたのは、店名の『お米』という部分だ。
 この世界で初めてお米を料理に活用したのはリサだ。それから四年ほど経ち、今では一般にも流通している。最近は精米業者もおり、家庭でもお米を食べられるようになった。
 カフェ・おむすびのメニューの中でも、おむすびやオムライス、丼物など、お米を使った料理は人気がある。
 とはいえ、パン食の習慣が根強いことと、お米はパンと違って炊く必要があることから、まだまだ広く知られていないのが現状だ。
 そんな中、『お米』という名のお店が出来た。
 これはもしかしたら、自分が異世界の食文化の発展という目標をかかげて行ってきたことが、一つの形になったのではないかとリサは考えたのだ。

「その『カフェ・お米』ってどんなお店なの!?」

 興味津々な様子で食い付いてきたリサに、アンジェリカはややたじろいだ。けれど、すぐさま気を取り直し、自分の持っている情報を話し始める。

「私も聞いた話なんだけど、三日くらい前に開店したらしいよ。でね……」

 アンジェリカはもったいぶるように一度言葉を止める。
 リサは彼女をじっと見つめて続きを待った。すると――

「接客係が全員男性で、みんなすっごくカッコいいんだって!!」

 そう言って、アンジェリカは目を輝かせた。
 一方、彼女の言葉を期待して待っていたリサは、肩透かたすかしを食らってしまう。
 そのリアクションの薄さにあれ? と思ったのか、テンションが上がっていたアンジェリカは、キョトンとした顔でリサを見た。

「驚かないの?」
「いや、もっとすごいことかと思ってたからさ……」
「えー? 今までそういうお店ってなかったし、充分驚くことだと思ったんだけど」
「そうなの?」
「うん、私が知ってる限りはね。あ、高級店なら別だと思うけど、気軽に入れるお店で制服着た男の人が給仕してくれるのも珍しいと思うよ」

 リサもカフェの店主としてリサーチがてら、いくつかの飲食店に行ったことがある。その多くが昼は食堂、夜は大衆居酒屋のようなスタイルをとっていた。
 接客するのは女性の店員がほとんどだ。男性の店員もいるにはいるが、店主兼料理人の親父だったり、家業を手伝っている息子だったりする。当然、そういう店は制服もない。
 しかしアンジェリカによれば、その『カフェ・お米』は違うらしい。制服を着た「接客係」の男性が何人もいて、丁寧かつにこやかに接客してくれるという。
 もっとも彼女も直接見たわけではないので、本当のところはわからない。
 それでも、リサが関心を抱くには充分だった。
 容姿の良い店員で客を集めるやり方はもちろんある。
 思えば、元いた世界でも店員がイケメンということで話題になるお店はあったし、執事喫茶など、それを売りにしたお店だってあった。
 現にカフェ・おむすびでもジーク目当てに来店する女性客がいるし、ヘレナやオリヴィアが男性客から気に入られることもたびたびある。
 けれども、見目の良い店員がいるだけでお店を続けていけるとは到底思えない。
『カフェ・お米』はどんな料理を出すのだろうかと、アンジェリカの話を聞きながら、リサは想像をふくらませた。



 第三章 不本意な噂が流れました。


 アンジェリカから『カフェ・お米』の話を聞いた数日後のこと。

「リサさん、ちょっといいですか?」

 学院からの帰りがけにカフェに寄ったリサに、閉店後の片付けをしていたヘレナが声をかけてきた。

「どうしたの?」
「お客さんが気になることを言っていたので……」

 顔を曇らせるヘレナを見て、リサはあまり良いことではなさそうだと感じる。

「二十四区に出来た『カフェ・お米』というお店、知ってますか?」
「うん、アンジェリカから聞いただけだけど、店員さんがすごくカッコいいらしいね」
「そうみたいですね。でも、気になるのはそこじゃなくて……そのお店、うちとメニューがほとんど一緒らしいんです」
「え……?」
「日替わりのランチはやってないみたいですけど、ケーキのラインナップとかが、ほぼ同じらしくて……。それに店内の様子とかも、どことなく似てるんですって」

 ヘレナの困惑気味な表情の理由がわかると同時に、リサもなんとも言えない気持ちになる。
 今の話を聞くだけでも、その『カフェ・お米』がいろんな部分でカフェ・おむすびを意識しているのがわかる。
 というのも、王都ですらケーキを売っているお店はまだまだ少ない。一部の高級レストランがデザートとして取り入れていたり、パン屋さんに少し置いてあったりする程度だ。
 何しろケーキ作りには、特殊な道具や技術が必要になる。
 その上、販売するには冷蔵保管しなければならないし、日持ちもしないので、設備面のコストがかかってしまうのだ。
 それなのにわざわざケーキを販売し、さらにラインナップをカフェ・おむすびとほぼ一緒にしているというのは、作為的なものを感じざるを得ない。
 カフェ・おむすびのレシピはアシュリー商会を通じて販売しているので、素人しろうとでも作れないことはない。けれど、カフェ・おむすびと同じクオリティで出すのは難しいはずだ。
 そこまで頭を巡らせて、リサはハッと気付いた。
 だからカッコいい店員が必要なのかと。
 料理がそこそこでも、他に売りがあれば人々の注目が集まる。元の世界の飲食店も、趣向をらした内装にしたり、ショーを行ったりと様々な工夫をしていた。
 まだ、その店の料理がどの程度のものかはわからない。だが、いずれこのカフェ・おむすびに何かしら影響してくるのではないかと、リサは漠然と思った。


 リサのその懸念けねんは、当たることになった。
 ――『カフェ・お米』はカフェ・おむすびの二号店らしい。
 そんな噂が王都で流れ始めたのだ。
 知らせてくれたのは、またしてもアンジェリカだった。

「信じられない! 私も偵察がてら行ってみたけど、確かに店員さんはカッコよかったよ! でもあのお店のケーキ、形はここのと似てたけど、ただ甘いだけで全然おいしくなかったし!」

 いきどおりながら話すアンジェリカの話を、リサは苦い思いで聞いていた。
 リサがアシュリー商会を通じて販売しているレシピを使ってもらうのは自由だ。けれど、それをお金儲かねもうけに利用されると複雑な気持ちになる。
 ケーキのラインナップが同じというだけでなく形まで似せているところから、カフェ・おむすびの名前を利用しようとしていることがうかがえた。
 アンジェリカは口直しをするかのようにカフェ・おむすびのミルクレープを平らげる。そして一通りの情報を話し終えると、すっきりした面持ちで帰っていった。
 それを皮切りにして、お客さんの中から『カフェ・お米』に行ったという人がちらほら出てくる。
 流行に敏感な女性や、カフェ・おむすびの噂を聞いて他国からやってきた人が多かった。
 なぜ他国の人が出来たばかりの『カフェ・お米』を知っているのか、はじめは疑問だった。だが、その店があるエリアは王都の端の方であり、ちょうど他国から王都にやってくる人たちが通るルート上にあると聞いて納得した。
 彼らは王都に入ってすぐに『カフェ・お米』がカフェ・おむすびの二号店だという話を聞いたらしく、噂がかなり広まっていることがうかがえた。

「うーん……どうしたもんでしょうか」

 カフェの閉店後、アランが腕組みをして、ため息まじりに呟く。
 リサは苦笑するしかない。
 片付けをしながらも、メンバーは後味の悪い気持ちを抱えていた。


 翌日の、お昼を少し過ぎた頃。アシュリー商会の仕入れ担当者が納品に来ていたため、リサが厨房ちゅうぼうを離れていた時のことだった。

「ちょっと君! 店長を呼んでくれないか!」

 オリヴィアが、ある客に突然そう言われた。

「何か不手際がありましたでしょうか?」

 オリヴィアは事を荒立てぬよう、慎重に問いかける。
 その中年の男性客は怒ってはいないようだが、真剣な表情を崩さず、オリヴィアの言葉に首を振った。

「いや、そうではないが……一言物申したいのだよ! 店長が無理なら他の料理人でもいいから呼んでほしい!」

 かたくなに言われて、オリヴィアは困ってしまった。少し離れたところにいるヘレナに助けを求めて視線を送ると、彼女も困惑した表情を浮かべている。
 自分の手には負えないと判断したオリヴィアは、男性客にお辞儀をして厨房へ向かった。
 だが、生憎あいにくリサの姿は見えない。

「アランくん、リサさんは?」

 一人、厨房内で作業をするアランに彼女の行方を問う。

「リサさんなら、アシュリー商会の納品が来たんで裏口っすよ。新しく発注するものについての相談があるから時間かかるらしいです」

 その言葉を聞き、オリヴィアはどうしようかと悩んだ。しかしリサがいないとなると、頼れるのは目の前のアランしかいない。

「アランくん、忙しい中悪いんだけど、お客さんがどうしても料理人と話したいみたいで……」
「あー、それ悪い方の話っすか……?」

 カフェ・おむすびでは、料理のあまりのおいしさに感激し、料理人に礼を言いたがる客がたまにいる。
 おいしいとめてもらえるのは料理人冥利みょうりに尽きるし、問題はない。
 まあ、客の中には「うちの専属料理人になってくれ!」などと言い出す困った人もいないわけではないが、たいていは穏便おんびんに済む。
 しかし、客商売をしていると何かしら文句をつけてくる客もいるもので、ヘレナとオリヴィアでは解決できず、料理人が出向かなければならない場面がある。
 ほとんどの場合はリサやジークが出るのだが、二人がいない場合はアランが対応することになっていた。
 アランはオリヴィアの困惑した表情から、今回呼ばれた理由が後者であることを察したようだ。

「お客さん、怒ってはいないんだけど……」

 申し訳なさそうに言うオリヴィアを見て、覚悟を決めたアランは、それまでしていた作業を中断して厨房ちゅうぼうを出た。

「お待たせしました。料理担当のアラン・トレイルです。何かお口に合わないものでもありましたでしょうか?」

 オリヴィアに案内され、その客のところへ向かったアランが声をかけた。
 話しかけられた男性客は、アランの顔と格好を見て納得したのか一つ頷いてから口を開く。

「いや、すごくおいしかったよ。特に、このシュークリームは絶品だった!」

 文句を言われるのではと身構えていたアランは、められて肩透かたすかしを食らった気分だった。
 しかし、おいしいと言いながらも満足していない男性客の様子を不思議に思う。
 すると、男性客はせきを切ったように話し出した。

「あっちの店でもシュークリームを食べたが、全く違っていた! その時は確かにおいしいと感じて、わざわざフェリフォミアに来た甲斐かいがあったと思ったが、こっちの店の方が断然おいしいじゃないか! 生地の表面はサクッとしていながら、中はふわっとしているし、クリームも濃厚でなめらかだ。どうして二号店とこうまで違うのかね! 同じ店なんだろう!?」

 その言葉に、アランとオリヴィアはぽかんとした。
 男性客のマシンガントークは止まらない。

「元々この店に来る予定だったが、王都に入ってすぐの場所に二号店が出来たと聞いたんだよ。宿に向かう途中にあったから、昨日行ってみたんだ。はじめは驚いたよ。料理名は聞いたことのないものばかりだし、周りの客は見たことのない料理を食べているし。料理の味も噂通りだと思った。二号店ではショートケーキというものを頼んだが、甘くて柔らかな食感のお菓子など初めて食べたよ」
「は、はあ……」

 アランが気圧けおされたように相槌あいづちを打つも、彼の勢いは止まらない。

「けれど、この店に来てさらに驚いた! 外から見えるガラスのケースには、もっといろんな種類のケーキがあるじゃないか! こっちは食事のメニューもあるようだし。何より、接客が格段に私好みだ。二号店の方も悪くはないが、店員がやたら見目の良い男ばかりで、女性に愛想を振りまいているような感じがした。それに、料理のレベルも全然違う! 私はその道のプロではないが、いろんな国に行っている分、人より多くの料理を食べてきたつもりだ。いや、そうでなくともわかるくらいの差が二つの店にはある。これはどういうことなんだ!? 二号店ならば、この店と同じくらいのレベルの料理を出すべきではないのかね!!」

 一通り語り終えた男性客は、興奮で顔を真っ赤にしていた。
 一方、話を聞いたアランとオリヴィアは複雑な心境だった。
 男性客はカフェ・おむすびを高く評価してくれている。それは、とても喜ばしいことだ。
 だからこそ二号店だと聞いた『カフェ・お米』の状況を嘆かわしく思い、わざわざこうして話してくれたのだと思う。
 しかし実際のところ、カフェ・おむすびと『カフェ・お米』には何の関係もない。
 アランとオリヴィアは目を合わせ、その事実を男性客にどう伝えようかと考える。
 男性客は、黙ったままの二人をいぶかしく思ったようだ。

「君たち、聞いてるのか?」

 と、やや不機嫌そうな声を上げる。
 そこでアランが意を決して口を開いた。

「当店の料理を高く評価していただき、ありがとうございます。ただですね、当店はこの一店舗だけで、二号店はありません」

 アランは男性客の勘違いを真っ向から否定した。
 だが、彼はアランの言葉の意味が理解できなかったのか、キョトンとする。

「何を言ってるんだ?」
「おそらく『カフェ・お米』というお店に行かれたのだと思いますが、そのお店は当店の二号店ではありません。全く関わりのない店です」

 同じことを繰り返し言われてようやく理解できたらしい男性客は、信じられないとばかりに口をぽかんと開けた。

「本当に?」
「はい、何の関係もないです」

 アランにきっぱり言われて、男性客は一旦赤みの引いた顔を再びじわじわと赤らめ、慌てて謝罪した。

「申し訳ない! そう聞いていたもんだから……」

 アランもオリヴィアも怒りはしていない。カフェ・おむすびの料理をおいしいと感じ、気に入ってくれたからこその行動だと理解できるので、むしろ感謝している。
 それに、普通の客にも違いがはっきりわかるほど、『カフェ・お米』の料理のレベルが低いというのを、じかに教えてくれたのだ。
 その後、羞恥しゅうちのあまり小さくなりながらお会計をした男性客を、アランとオリヴィアは笑顔で見送ったのだった。


 そして閉店後、業者への対応のために外していたリサと、料理科の授業を終えてやってきたジークに、アランとオリヴィアが詳細を報告した。

「やはり、こちらも何かしらの対応を考えた方がいいんじゃないですか?」

 二人が話し終えたところで、少し離れたところから一部始終を見ていたヘレナが言った。
 それを聞いて、リサはどうしたものかと悩む。
 今日のようなことは今後も起きると予想された。それほど、『カフェ・お米』がカフェ・おむすびの二号店だという噂は広まっている。
 今回の男性客のように直接意見を言ってくれる人はまだ良い。なぜならその際に『カフェ・お米』がカフェ・おむすびの二号店でないと伝えることができるからだ。むしろ、その噂を誰にも否定されることなく真実だと思い込んでいる人の方が問題である。
 今はまだ、客の入りなどに大きな影響は出ていない。けれども、今後どうなるかはわからなかった。

「そうだね。故意なのかどうかはまだわからないけど、そのお店がうちの名前を利用している感じはするし……まずは詳しい情報を集めなきゃね」

 リサがそう言うと、話を聞いていた四人は頷く。

「相手がどうあれ、俺たちにやましいところは全くないし、普段通りおいしい料理を提供することは忘れないでおこう」

 ジークが話を締めくくるように言い、各々おのおのが気持ちを引き締めた。



 第四章 まずは情報収集です。


 その日以降、カフェのメンバーは『カフェ・お米』の情報を集め始めた。
 まずリサは、中央広場で毎朝開かれているマーケットで食材を購入がてら、顔見知りの人たちから話を聞くことにする。
 マーケットには色々な商店をいとなむ人が、商品を積んだリアカーを手で押したり、馬にかせたりしてやってくる。
 ほとんどが個人で経営している小規模な商店の人たちだ。
 けれど価格が安く、新鮮なものが多い。また小規模だからこそ、広く流通していない珍しい食材が売られていたりもする。だから飲食店を営む人や主婦たちが、それを求めて集まって来るのだ。
 リサも同様で、カフェの開店当初から食材を買いに来ており、今では多くの店主と顔見知りになっている。
 そして人がつどうということは、それだけいろんな噂も集まってくるということ。
 まずリサは、よく利用している果物店を訪ねた。

「おはようございます」
「あら~、リサちゃんいらっしゃい!」

 店員の小柄なおばさんが、リサに気付いてにっこりする。
 リサは今日のオススメを聞きながら、目ぼしい果物をいくつか選んでいく。その間もおしゃべり好きなおばさんが、世間話をしてくれるのだ。

「あ、そう言えばリサちゃん。あのお店の関係者らしい人を、最近ちょくちょく見かけるわよ」
「マーケットにも来てるんですか?」

 彼女には以前来た時に、『カフェ・お米』がカフェ・おむすびの二号店という噂は全くのガセだと話していた。

「うん、それっぽい人がね。若い男の子だったわ。あれが例のカッコいい店員さんってやつかしら? うちの店にも一度来てねぇ、カフェ・おむすびの店長は何を買って行ったかって聞かれたの! 二号店じゃないって知らなかったら、うっかりしゃべっちゃうところだったわ」

 なんと、例の店の店員も、マーケットを利用してカフェ・おむすびの情報を集めているらしい。
 この店のおばさんはおしゃべり好きではあるが、お得意さんの情報を漏らすほど軽率けいそつではない。知らぬ存ぜぬで対応したと語った彼女に、リサは礼を言う。

「ありがとうございます」
「いいのよ~。リサちゃんが悪いことしてるわけじゃなし、堂々としてな!」

 何でもないとばかりに手を左右に振って、おばさんは笑った。

「最近ってことは、マーケットだけで食材を揃えてるわけじゃないんですね」
「そうだろうね。ここは売り物の種類は多いけど、大量に買うのには向かないし、粉ものとか穀物類はあまり売ってないからね~。その辺はやっぱりアシュリー商会で仕入れているんじゃないかい?」

 彼女はリサが選んだ果物を袋に詰めながら言う。
 予想はしていたが、やはりそうかと思いつつ、リサは商品の詰まった紙袋を受け取った。


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