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13巻

13-2

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 翌日、リサはオリヴィアとデリアが出勤してくるタイミングに合わせて、ゆっくりカフェに向かった。
 店の前で馬車を停めてもらうと、転ばないよう気を付けて降りる。そしてカーテンが閉まり、休業日を示す札が下がっているカフェのドアを開けた。

「お疲れ様です~」

 リサがそう言って店内に入ると、カウンターを挟むようにして立っていたオリヴィアとデリアがこちらを向いた。

「まあ、リサさん!」

 ミルクティー色の長い髪をサイドテールにした女性がオリヴィアである。

「いらっしゃい……って言うのも何か変ね」

 そう言っておかしそうに笑うのはデリア。肩までのこげ茶の髪をハーフアップにしている。

「言いたくなるのはわかるよ。カフェに来るのも久しぶりだからね」
「ほらリサさん座って。お腹が大きくなってきたわね」

 カウンターの外にいたオリヴィアが、リサをテーブル席に誘導する。リサはありがたく座らせてもらった。

「リサさん、ちゃんと休めてる? 大丈夫?」

 お水を持ってきてくれたデリアが心配そうに聞いてくる。

「ものすごくのんびりしてるよ。こんなに暇でいいのかってくらい」
「これまでが忙しすぎたのよ。ゆっくりできるのも赤ちゃんが生まれるまでだけどね」

 オリヴィアはかつてのことを思い出しているのだろう。ちょっと困ったように、でも懐かしそうに笑った。

「そうねぇ、子供が生まれたら一日一日があっという間だから」

 デリアもうんうんと頷きながら同意する。

「そっか、それもそうだよね……」

 経験者の言葉にリサはしみじみとつぶやく。赤ちゃんが生まれたら、そのお世話でこれまで以上に大変になるだろう。
 自分の仕事を周りのみんなに肩代わりしてもらっている。そういう申し訳ない気持ちが大きかったのだが、赤ちゃんが生まれてからのことを考えると、今だけのんびりさせてもらうのも悪いことではないような気がした。

「ジークくんから少しだけ聞いたけど、スティルベンルテアのことを知りたいんですって?」

 オリヴィアの言葉で、リサは今日カフェに来た目的を思い出す。

「そうなの。実はスティルベンルテアを開くことになったんだけど、私自身スティルベンルテアに参加したことがないから、どんな感じかまず知りたくて。二人はどういう風にした?」
「スティルベンルテアね~。懐かしいわ。私も一応開いたけど、特別なことはしなかったわ。親しい人を招いたお食事会みたいな感じね」

 デリアは懐かしそうに微笑みながら言った。

「うちは旦那の方が張り切っちゃってたわね。いつも仕事でいろんなところに行って忙しい人だったから、そういう機会がなかなか持てなかったせいかしら。私の友人だけじゃなく、旦那の友人もたくさん呼んだわ。結婚した時のパーティーとほとんど同じ顔ぶれだったけれど」

 オリヴィアも懐かしそうな表情をする。ただ少しだけ寂しげにも見えた。
 彼女の夫は数年前に亡くなっている。楽しかった思い出は嬉しくもあり、切なくもあるのだろう。

「やっぱり人によってそれぞれなんだね~」
「そうねぇ。スティルベンルテアは生まれてくる赤ちゃんと、そのお母さんのために開くものだから、主役が望むような形にするのが一般的ね」
「一人目の時には盛大に開くけど、二人目、三人目になるにつれて簡素になっていく傾向もあるわ。そもそも必ず開かなければならないものでもないし、本当に人それぞれよ」

 オリヴィアとデリアの言葉にリサはなるほどと頷いた。二人の話を聞く限り、スティルベンルテアはとても自由度の高いイベントのようだ。
 イベントの本質である『生まれてくる赤ちゃんとそのお母さんのための会』ということさえ守っていれば、あとは人それぞれの楽しみ方でいいのだと思う。
 だが形式が決まっていないものだからこそ、逆にどうしようか悩む。

「うーん……どうしよう。ますますわからなくなってきた……」

 頭を抱えるリサを、他の二人は微笑ましげに見ていた。

「そんなに深刻になることはないわよ。リサさんの気持ちが一番大事なんだから」
「そうそう。無理して開くものでもないし、割り切って『自分が思いっきり楽しめる会にするぞ』って人も多いのよ」

 オリヴィアもデリアも悩むリサを励ましてくれる。
 招待客をもてなしたければもてなせばいいし、自分が楽しみたいならそのための会にすればいいと言う。

「準備が大変なら私たちも手伝うし、遠慮なく言って!」

 デリアの言葉にオリヴィアも頷いてみせる。

「二人ともありがとう。よければ、また相談に乗ってほしいな」
「任せてちょうだい!」

 オリヴィアから心強い返事をもらい、リサは心が軽くなった。
 その後、リサは恒例の試食を兼ねた昼食に同席させてもらい、楽しい時間を過ごした。久々にカフェを訪れたことがとてもいい気分転換になったし、オリヴィアとデリアからスティルベンルテアのこともいろいろ聞くことができて、充実の一日だった。
 しかし、それがのちにリサを悩ませることになるとは、この時はまったく考えていなかったのである。



   第三章 方向性について悩んでいます。


 スティルベンルテアに向けて、リサはまず招待する人たちのリストを作っていた。ゲストの人数が決まれば、おおよその規模感もわかると思ったからだ。

「まずカフェのメンバーに、料理科の先生たち、友達のアンジェリカにセラフィーナ。あとアシュリー商会の人たちも呼びたいなぁ」

 日頃からお世話になっている人は、できるだけ多く招待したい。
 料理人という職業柄か、リサはせっかく招待するなら、きちんともてなしたいと思っていた。スティルベンルテアは赤ちゃんと妊婦さんのためのものだというが、もてなすことに喜びを感じるタイプのリサにとっては、それ自体も楽しみなのだ。
 招待する人の名前をあらかた書き出したところで、思わず声を漏らした。

「うわ、結構な人数だなぁ……」

 リサとしてはアットホームな会にしたいと思っていたのに、この人数だと結構な規模になってしまいそうだ。

「人数を減らすか……でもなぁ……」

 リストアップした人たちは、いずれもお世話になっている人ばかり。招待する・しないに分けるとなると、その線引きが難しい。

「いっそ女性に限定しちゃう? けどそれもなぁ……」

 スティルベンルテアを開く人の中には、女性だけを呼ぶ人もいるらしい。話を聞いたところ、デリアはそのタイプだったようだ。
 他に、カップル限定で呼ぶこともあるという。これはお茶会やパーティーでもよくあることなので、それにのっとったタイプのスティルベンルテアらしい。
 またオリヴィアのように、自分の友人だけではなく、夫の友人も呼ぶタイプもいる。
 赤ちゃんが生まれるとなると、夫側にもまた覚悟がいる。スティルベンルテアは経験者から話を聞けるチャンスでもあるので、これを機に父親になる心構えをしておきたいという人も少なくないようだ。
 ――誰を招待するかを考えるより先に、どんな会にするかを具体的に決めた方がよかったかなぁ……?
 リサは招待客のリストを前にして、一人悩みはじめた。
 オリヴィアとデリアの話を聞いて、いろいろなタイプのスティルベンルテアがあることを知り、リサはワクワクしていた。
 仕事を離れて家にいる生活は、お腹の子のためとはいえ少し退屈だ。クロード家の面々とは毎日顔を合わせるものの、カフェのメンバーやお客さん、料理科の講師や生徒たちにはほとんど会えていない。
 これまでカフェや料理科で働いて、毎日いろんな人に会えた。
 それが最近はまったくなくなってしまったので、正直なところ、リサは寂しかった。だからスティルベンルテアで久しぶりにたくさんの人に会えると思うと嬉しかったのだ。
 その結果、招待客のリストが膨大になってしまい、気が付けば結婚式の時と同じくらいの人数になっている。
 和気藹々わきあいあいとした会にしたいなと漠然ばくぜんと思っていたのだけれど、これだけの人数を呼んだらどんな会になるのか想像もつかない。
 かといって今リストアップした人を減らすのは嫌だなぁとも思う。

「あの、リサ様」
「ん? どうしたの、メリル」

 メイドのメリルの呼びかけに、リサはペンを持ったまま振り返る。

「アナスタシア様がいらしているのですが、お通ししてよろしいですか?」
「シアさんが?」

 別館に来るのは珍しい。とはいえ特に不都合もないので、通してもらうようメリルに伝える。

「急に来てしまってごめんなさいね。お邪魔じゃなかった?」
「大丈夫ですよ。スティルベンルテアのことを考えてただけなので」

 リサの様子をうかがいながら入室してきたアナスタシアに、リサは向かい側のソファを勧める。すぐにメリルがお茶とお菓子を出してくれた。

「スティルベンルテアのことを考えていたなら、ちょうどよかったわ! 私も友人にいろいろとね、聞いてみたの」

 どうやらアナスタシアの方も情報収集をしてくれていたらしい。

「私のお友達はたくさんゲストを呼んで大規模にやったという人が多かったわ。結婚してからも仕事を続けている人がほとんどだし、そういうイベントはめったにないからなのか、普段会えない人を呼ぶことも多いみたい」

 なるほど、とリサは頷いた。
 リサとジークは結婚して一年半が経つし、このくらいの時期に妊娠や出産をするのはなんらおかしなことではない。
 ただ、フェリフォミアの人々の結婚は早い。何しろ成人年齢が十六歳。男女ともその歳になれば結婚できてしまうのだ。
 それぞれの仕事に馴染なじんだり、生活の基盤を整えたりするため、相手がいても二十歳前後までは婚約期間とする人が多い。だが、それでもリサの世界の結婚適齢期より早いことは確かだ。
 加えて、こちらの世界は元いた世界より女性の社会進出が目覚ましい。なので、結婚してもすぐ子供を作るという人は多くないようだ。
 もちろんすぐ子供を授かる夫婦もいる。ただ、その場合、女性側は仕事の量を調整したり、子供が生まれたら預けるところが必要になったりするので、いろいろと大変らしい。
 子供を預かってくれる機関や民間のベビーシッターも多いので、なんとかなるようではあるけれど、子供を作るなら計画的にという人が多数派だと聞いている。
 きっとアナスタシアの友人たちも結婚してからスティルベンルテアを開くまでの間に、そこそこ時間が経っていたのだと思う。だからこそ結婚式以来、会えていなかった人たちをスティルベンルテアに呼んだのではないだろうか。

「あら? もしかしてリサちゃん、招待する人のリストを作っていたの?」

 アナスタシアはテーブルの上に置かれた招待客のリストに気付いたらしい。

「先に呼びたい人をピックアップすれば、だいたいの規模感がイメージできるかなって思ったんですけど……」
「それはいい考えね! ……あの、リサちゃん。私も呼びたい人が何人かいるんだけれどいいかしら? せっかく孫が生まれるから一緒にお祝いしたいの」

 アナスタシアはリサの表情をうかがいつつも、期待するような目を向けてくる。
 オリヴィアは自身の友人だけじゃなく、夫の友人も呼んだと言っていた。それなら養母であるアナスタシアの知り合いを呼んでもおかしくはないだろう。
 それにアナスタシアは自分の子供のスティルベンルテアができなかったから、せめて孫の時は友人たちに祝ってほしいという気持ちがあるのかもしれないと、リサは思った。

「もちろんです!」

 リサが快諾かいだくすると、アナスタシアはホッとしたように表情を緩ませた。
 さっそくアナスタシアから招待したい人たちの名前を聞く。ほとんどはアナスタシアがお茶会を開く時に招いている人たちだったので、リサとも顔見知りだ。
 そのことに少し安堵しながら、リサは新たな人たちをリストに加えていった。


「リサちゃん、僕の友人も呼んでいいかい?」

 アナスタシアの友達を招待すると知って、養父のギルフォードもそう言ってきた。アナスタシアの友人はよくてギルフォードの友人はダメだとは言えないので、リサはもちろん頷く。
 ただ、ギルフォードの友人はアナスタシアの友人ほどリサにとって馴染なじみがない。その上、ギルフォードの友人は国の要職に就いている人が多く、本当にスティルベンルテアに来られるんだろうか? と思ってしまうほど忙しい人ばかりだ。
 ひとまずリストに加えてみたはいいものの、気付けば結婚式の時と同じくらいの人数になってしまっていた。

「どうしよう、これ……」

 本館で夕食を取ったあと別館の自室に戻ってきて、リサは頭を抱える。
 ちょっとしたお茶会くらいの規模にするつもりだった。格式張らず、気軽に来てもらえるような会をリサは想像していたのだ。
 だが、この人数になると大規模にせざるを得ないだろう。
 リサは知らなかったが、実はアナスタシアが今日スティルベンルテアの話を聞きに行ってきたという相手は、このフェリフォミア王国の王妃であるアデリシアだった。
 アデリシアのスティルベンルテアは、当然ながら王太子であるエドガーがお腹にいた時のこと。次代の王のスティルベンルテアともなれば、それは盛大なものだったはずだ。
 また、ギルフォードもスティルベンルテアは盛大にやるのが当然という認識である。何しろギルフォードは由緒正しき侯爵家の生まれだ。家柄を考えると、スティルベンルテアもそれなりに立派なものを開かなければならないし、それが一般的だと思っている。
 リサが考えていたアットホームで気軽な会と、貴族としての家格に見合うスティルベンルテアは、明らかに違う。 
 とはいえ、リサもクロード侯爵家の一員である。
 カフェの店長や料理科の講師として普通に働いてきたので、リサ自身あまり意識していないが、クロード家は立派な貴族なのだ。
 フェリフォミア王国は実力主義なので、貴族であろうと平民であろうと実力があれば評価されるし、貴族が偉いとか貴族だから何をやっても許されるなんて風潮もない。
 しかし、貴族であるというのも実力のうちだ。爵位があるということは、その分、国に貢献しているということになる。
 もちろん世襲せしゅうされる爵位もあるが、貴族は国に多額の納税を課されている上に、責任も重い。経済を回し、人を導く。それがフェリフォミア王国の貴族なのだ。
 リサのスティルベンルテアも、そういう事情を考慮したものでなければならない。
 まだそこまで明確な考えには至っていないものの、うっすらとそれに近いことを考えて、リサはますます悩んでいた。
 うんうんうなりながらリストとにらめっこしていたら、部屋のドアがノックされた。
 返事をすると、ドアから顔を出したのはジークだった。

「リサ、寝ないのか?」

 寝室に来ないリサを心配して、様子を見に来てくれたらしい。

「うん、今行く……」

 寝支度は済んでいるが、スティルベンルテアのことを考えはじめたら止まらなくなったのだ。
 リストを裏返しにして机に置くと、リサはゆっくり立ち上がる。
 そしてドアを押さえて待っているジークのもとへ向かった。


「うーん……」

 あれから数日経つが、リサの中でスティルベンルテアの計画は全然まとまらずにいた。
 今のままだと、具体的にやりたいことも決まってないのに、招待する人の数だけは多い会になってしまいそうだ。
 たくさんの人に会いたいという気持ちはもちろんある。でも、リサが会いたい人たちに加えて、アナスタシアとギルフォードの友人たちも招待リストに加わった。
 それによって、さらに人数は多くなってしまったわけで……
 リサにはスティルベンルテアに参加した経験がないので、スティルベンルテアがどんなものかは想像するしかない。今は経験者からの話を聞いて、それを補完しているが、こんなに人を呼んで大丈夫なのかな? と迷ってしまっていた。

「リサ様……? お医者様が見えましたが、お通ししてよろしいですか?」

 応接室で待機していたリサに、メリルがそっと声をかけてくる。寝椅子に座って考え込んでいたリサは、それにハッとして顔を上げた。
 今日はこれから医師の検診なのだ。

「うん、大丈夫。お通しして」

 リサが頷くと、メリルが一度部屋の外に出ていく。再びやってきたメリルは、老年の女性をともなっていた。

「こんにちは、リサさん」
「こんにちは、先生」

 顔の皺を深くして微笑む医師に、リサもつられるように笑みを浮かべる。
 妊娠初期からお世話になっている専門の医師だ。ややふくよかな体に、柔らかな表情。性格もおおらかで明るいこの医師のことを、リサはすぐに好きになった。
 クロード家のお抱え医師の奥さんでもあるので、家族からの信頼も厚い。
 おっとりとしつつも頼もしい彼女の前では、リラックスして診察を受けることができている。

「さてさて、赤ちゃんの様子はどうですか?」

 医師の言葉を聞いてリサは寝椅子に横になる。メリルに手伝ってもらいながら、診察用の服の前をくつろげ、大きくなったお腹を出した。
 この服はアナスタシアが作ってくれたものだ。上下に分かれていて、それぞれ前のボタンを開けられるようになっている。
 これには医師も診察がしやすいと喜んでくれた。

「では触りますよ~」
「はーい」

 力の抜けた緩い話し方をする医師に、リサはクスリと笑って返事をする。
 優しく、でもしっかりと確かめるように触れる医師の手が、お腹の上で動くのを目で追う。付き添ってくれているメリルと、そして寝椅子の背もたれにいる小さな精霊もじっと見つめていた。
 静かに触診していた医師が、やがてお腹から手を離す。

「お腹の赤ちゃんは元気そうですね。逆さになっていることもなさそうですし、順調そのものです」

 にっこりと笑って告げられた言葉に、リサはホッとする。

「ありがとうございます」
「そういえば、精霊さんと赤ちゃんの交流はその後どうですか?」

 医師がリサの周りに視線を泳がせた。
 待ってましたというように、緑色の精霊がふわりと飛び出してくる。
 この精霊はバジル。リサと契約している、緑をつかさどる精霊だ。
 不思議なことにバジルは、リサのお腹の赤ちゃんと意思疎通ができるのだ。といっても言葉ではなく、リサのお腹が光るのを見て赤ちゃんの気持ちを想像しているだけなので、高度なコミュニケーションは取れないようだが。

「赤ちゃん、とっても元気ですよ! 最近はバジルからだけじゃなく、赤ちゃんの方から話しかけてくれることもあるんです!」

 得意げに話すバジルの言葉をリサは医師に伝えた。
 すると彼女はクスクスと笑って、「それはいいですね」と頷く。

「今くらいまで育ってくると、赤ちゃんにも外の声は聞こえているようですからね。たくさん話しかけてあげてください」
「バジル、お姉さんですから、もちろんたくさん話しかけますよ!」

 以前、リサが『バジルちゃんはお姉さんだね』と言って以来、バジルは姉としての使命に燃えているらしい。よくリサのそばを離れてふらりと出かけていたのに、最近はリサのもとを離れようとしない。
 楽しそうだからいいかと、リサはその様子を見守っている。

「それでは本日はこれで」
「はい、ありがとうございました」

 医師は妊娠後期に気を付けるべき事柄などを話すと、検診を終えて部屋を出ていく。
 お腹の赤ちゃんが問題なく成長している様子に、リサはホッとしながら医師を見送った。


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