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お出かけ①

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 「父さん。起きて、朝だよ。」
 翼の呼びかけで目を覚ましました。昨日の夜から、ソファーでそのまま眠ってしまったようです。日付が変わる頃までの記憶はありますが、それ以降は覚えていません。
 確か…行き先は遊園地として決定して、開園時間を調べて…。
「ああ、おはよう。いま何時?」
 彼が口にした時間は、待ち合わせとして設定した時刻の一時間半前でした。今から準備すれば、ギリギリ間に合いそうですが、
 「え?何で起こしてくれなかったんだ!?」
 少しパニックになって、翼を責めてしまいました。
 「だって…何回か声は掛けたんだけと、ぐっすり眠ってて、申し訳なかったし。支度は僕がやっておいたから、顔だけ洗って、早く着替えてよ。」
 翼の言う通りです。超特急で顔を洗って、歯を磨いて、普段着に着替えます。
 そして、軽自動車に乗り込みました。購入してから八年近く経っています。旅行に行ったり、今日のように出かけたり、家族の思い出が沢山詰まっている愛車です。
 「受験前最後の息抜きだと思って、楽しまないとなー!」
 助手席で翼が伸びをしました。私はそれに頷くと、エンジンをかけます。
 しばらく走らせていると、信号に引っかかりました。辺りを見ると、ケーキ屋が目に留まりました。
 そういえば、昨日奏が言っていたサプライズって何だったんでしょうか。現在誕生日が近い人はいませんし、夫婦の結婚記念日も三週間ほど前に済んだばかりです。
 まさか本当に彼氏ができたのでしょうか…。
「奏ももうそんな年齢か…。」
 思わず呟いた言葉は、翼には聞こえていなかったようです。
 「父さん、何か言った?」
 なんでもない、と首を振ると、私は頭を切り替えました。安全運転で行かなければ。
 その後は渋滞にはまることも無く、案外早く到着しました。
 『電車がトラブルで少し遅れそうです。開園までには着くと思うけど、チケット買っておいてください。って送ってってママが言ってる。スマホ忘れちゃったんだってさ笑』
 奏からメッセージが来ていました。了解と返信すると、翼には行列に並んでもらって、私はチケット売り場へ向かいました。
 「乗り放題大人二枚と中人二枚。」
「こちらになります。ご確認下さい。行ってらっしゃいませ。」
 機械かと疑うほど無機質な女性の声に見送られて、翼の元へ戻りました。この点、某鼠の国は凄いと思います。
 あ、遠くの方から文香と翼が歩いて来るのが見えます。開園まであと五分です。
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