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ミカガミシンヤの物語 1

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始まりは突然のように見えた。
だが、その認識は誤りであると、後の支配者たちは教えてくれた。

果たしてそれがどういう結末を迎えたのを俺は正確には知らない。
世界が終わりを迎えるよりもだいぶ前に、俺は俺自身を繭に閉じ込めたからだ。
不完全なままに繭となった俺は、二度と目覚めることはない…、

はずだった。

***

目が覚めたときに意識に浮かんだことは山ほどある。
ここはどこだ?あれからどれだけたった?
世界はどうなってる?

…彼女は無事なのか?

でも、そのどれも言葉にできないほど俺は弱っていた。
混濁する意識の中で、誰かが甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれていることだけがわかった。

歩けるほどに回復すると、不思議な少女と引き合わされた。
厚くおしろいをを塗って化粧をしたその顔には、少女とは思えないほど大人びた表情が宿っていて彼女は相当に地位の高い人間だとだと俺は直感した。

「神よ」
と俺を見て彼女は口にした。

この頃になれば俺もなんとなく、自分の置かれている状況を理解し始めていた。
誰もが俺に畏怖と尊敬の念を向けている。

少女と話ができたことは幾分かは実りがあった。
彼女は見た目にそぐわず聡明で、俺の質問には何でも答えてくれる。
だが困ったことに俺の方が彼女の話すことの一割も理解できなかった。

かろうじて理解できたことから推測すると、
俺が眠りについてから千年を優に超える時間が流れたらしい。

ここにはこの少女を中心とした国のようなものがあって、
俺はそこで神様として敬われていたようだ。
かつての俺の生きた文明ははとっくに、滅んでいた。

少女とは数日後に再び合うことになった。
俺の身柄はそこで三人の男女に引き渡された。

彼らが俺の世話係ということだ。

その言葉通り彼らは俺に必要なものをすべて手配してくれた。
家、食事、衣服、日常生活に必要なものはすべて。
そして予想に反して俺は自由に街を出歩くことができた。

世界はまるで変わったようにはみえない。
与えられた家も、衣服も、食事も俺の暮らしていた世界ぁらそっくり持ってきたようだ。

ただ一つ、すべての人が俺を尊敬している。
まるでパラレルワールドにでも迷い込んだような奇妙な感覚だった。

不完全なままに繭のまま眠りについた俺は、二度と目覚めることはないはずだった。
ありえないことが起こっている。

突然与えられた新しい世界はいつまでも現実感を持たず、脳みそは思考を放棄した。ただ流されるままに漫然と日々を消費した。そうやって心が追いつくのを待った。

何不自由のない生活が、数週間続いた。
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