今日も僕は、先輩の官能的な攻めに耐えられない

九傷

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第36話 新鮮な反応にほっこり

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 放課後になり、僕と伊万里いまり先輩は、麻沙美まさみ先輩を教室まで迎えにきていた。
 理由は、先程〇インに『今日は一緒に帰るのはよそう』なんてメッセージが飛んできたからだ。


「麻沙美先輩!」


 丁度教室から出るところだった麻沙美先輩を発見し、僕は少し大きな声で呼びかける。
 案の定注目を集めることになったが、今は気にしないことにした。


「……藤馬とうま君。どうしたんだい?」


 麻沙美先輩は一瞬戸惑ったような表情になるも、すぐに普段の調子に戻る。


「麻沙美先輩を迎えに来ました」


「……さっき、今日は遠慮しておくとメッセージを送ったつもりだけど」


「理由を聞いていません」


「一々理由を話すこともないだろう……、と言いたいところだけど、まあ隠す意味もないか。……お察しの通り、朝の件があったからだよ。私だって空気くらいは読めるからね。少し時間を置こうと思っただけさ」


 まあ、そうでなければ麻沙美先輩があんなメッセージを送ってくるなんてあり得ないからね。
 だからこそ、僕達もわざわざメッセージではなく、こうして直接会いにきたのだ。


「その件ですが、伊万里先輩と相談した結果、一旦保留になりました」


 僕がそう言った瞬間、麻沙美先輩が完全停止する。
 そして、今まで見たことのないような顔で、


「………………はい?」


 と言った。




 …………………………


 …………………


 …………




 僕達は、いつものように並んで下校している。


「ふふっ♪」


「……なんだよ藤馬君。感じが悪いぞ?」


「す、すいません」


 そうは言われても、先程のことを思い出すと、僕はついつい思い出し笑いをしてしまうのだ。


「ふふっ♪」


「あ! 伊万里まで……! ぐぬぬ……」


 さっきのことが余程恥ずかしかったのか、麻沙美先輩は未だに顔が赤いままであった。
 こういった可愛い反応は、彼女にしてはかなり珍しい。


(本当、さっきの麻沙美先輩の顔、写真にでも残しておきたかったなぁ……)


 失礼とは思いながらも、やはり思い出すと笑えてくる。
 それ程に、さっきの麻沙美先輩は面白い顔をしていたのだ。


「麻沙美先輩でも、あんな顔するんですね♪」


 伊万里先輩はそう言いながら、心底楽しそうに笑っている。
 僕より付き合いの長い伊万里先輩でも見たことがないというのだから、本当に珍しかったんだろうな……


「だ、だって仕方がないだろう? まさか、そんな答えが返ってくるとは思っていなかったんだ……」


 僕達が笑うのを止められないと悟ったのか、麻沙美先輩は諦めたような表情を浮かべている。
 今日は彼女の珍しい表情がたくさん見れて、新鮮な気分だ。


「全く……。結局二人は、なんでそんな結論に至ったんだい?」


「それは……、秘密ですよ」


「はい。二人だけの秘密です」


「ぐぬぬ……」


 麻沙美先輩は悔しそうな表情を作っているが、これは演技だろう。
 僕にもなんとなく、麻沙美先輩の表情が読めるようになってきた気がする。


「……二人とも、これだけ私のことをもてあそんだんだ。今日は私の要望を聞いてもらうからね?」


「それは、内容にもよりますよ?」


「安心してくれ。私の家に招待しようというだけだよ」


 何それ。全然安心できないんですが……


「全然安心できないと顔に書いてありますよ。藤馬君……」


「いや、だって……」


「藤馬君の気持ちはわかるよ。何と言っても私の家だからね。でも本当に安心して欲しい。ちゃんと家族もいるんだからさ」


 確かに、家族もいるのであれば、そうそう怪しいマネはできないと思う。
 ただ、伊万里先輩の家のようなケースもあるからな……

 色々と不安は残るが、僕達は結局麻沙美先輩の家へとお邪魔することになるのであった。


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