今日も僕は、先輩の官能的な攻めに耐えられない

九傷

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第34話 完全に翻弄されてしまう

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 麻沙美まさみ先輩の口からその単語が出たことは不思議なことではない。
 いかにも口にしそうな単語だし、実際にそういう・・・・存在を何人か囲っているふしがあったからだ。
 ただ、こうも堂々と言われるとは、流石に思っていなかった。


「な、何とんでもないこと言いだしているんですか……」


「ん? 別にとんでもなくはないだろう? 今時〇フレなんてよくある話じゃないか」


 よくある話なの!?
 ……いやいや、世の中にそんなただれた関係が横行しているなんて話は聞いたことないぞ。
 ……あ、でもそんな話が大っぴらに広がるワケはないか。
 え? じゃあ、本当に……?


「ははは、藤馬君は表情がコロコロと変わって可愛らしいなぁ。そんな魅力的な表情をしていると、諦めたくなくなっちゃうぞ?」


「そ、そんなことを言われても……」


「困るだろ? だから、〇フレってことで手を打とうじゃないか」


 そ、そういう手もあるか……、なんて思うと思ったら大間違いである。
 巧み(?)な話術で懐柔しようとしても、そうはいかない。


「ダメです! そんなふしだらな関係……、認められるワケありません!」


「ふしだらなんてことはないさ。私は他に3人ほど〇フレがいるが、そんな乱れた関係にはなってないよ?」


「〇フレってだけで乱れているでしょう!?」


「それは見解の相違というヤツだよ。……なら、こうしようか。まずはお試し期間ということで……、どうかな?」


「お試しって……、試した瞬間アウトなヤツじゃないですか……」


 最早、先程までの覚悟は一体どこへという状態である。
 完全に麻沙美先輩のペースであった。


「ここが落としどころだと思うけどなぁ……」


「そんな簡単に落とせませんって……。大体に麻沙美先輩は、なんでそんなに僕に執着するんですか?」


 先程自分で言っていたが、麻沙美先輩には〇フレと呼べる存在が複数人いるらしい。
 そんな状況で、わざわざ僕と〇フレになることに固執する理由なんてあるのだろうか?


「決まっているだろう? それは君が男だからだよ」


 ズバリ、といった感じで僕に人差し指を突きつける麻沙美先輩。
 そんなドヤ顔されても、僕はどう反応を返せばいいのだろうか……


「いいかい藤馬君。こう見えて私は処女だ。……処女なんだよ!」


「ちょ! なんてことを高らかに宣言してるんですか!? しかも二回も!」


 横を歩いていたサラリーマンが、凄い目でこちらを見ていた。
 こんな注目の集め方をされると、僕の方が恥ずかしくなってくる。


「大事なことだからね。……改めて宣言しよう。私は処女だ。いいかい? この、わ、た、し、が! だよ?」


 三度目の宣言をした麻沙美先輩が詰め寄ってくる。
 合わせて僕も後ろに下がったが、すぐに壁際まで追い詰められてしまう。


「この、エロの伝道師たる私が処女というのは、いささか格好がつかないと思わないかい?」


「お、思いませんよ」


「なに、遠慮はいらないよ。事実だからね」


 そう言って麻沙美先輩は、僕の股の間に脚を差し込み、親指と人差し指でクイッと顎を上げてくる。


「私はね、その汚名を敢えて被ろうと思っていたんだ。どうあっても、私はやっぱり可愛いモノが好きで、男のことは好きになれそうになかったからね。処女喪失するにしても、それはきっと無機質なものになるだろうと思っていたのさ。君に会うまではね」


 麻沙美先輩は真剣な目で、僕の目を見つめている。
 これはアレだ。本気の落としモードというヤツだ。目力めぢからが普段の比ではない。


「君は、君という存在は、私が諦めかけた感情に火を点けてしまったんだよ。つまり、こんな私に、君がしたんだ」


(言っていることはメチャクチャなのに、表情やら声色がカッコよすぎる……。こんなの、普通の女子ならコロッと落ちてもおかしくないぞ……)


「君が、私の女らしいと言える部分を引き出したんだ。その責任は取ってもらわないといけない。そう思わないかい?」


「お、思わっ……」


 言いかけた僕の口を、先輩が人差し指で塞いでしまう。


「今のは無粋な質問だったから、答えなくていいよ。でも、覚えていて欲しい。私は、絶対に君の体を諦めない」


 そう耳元で囁き、麻沙美先輩は身を引いた。


「それじゃあ、私は先に行くことにするよ。またね」


 去って行く麻沙美先輩をしり目に、僕は背をずるずると擦りながらしゃがみこんでしまう。
 先程決めたハズの覚悟は、今度こそ完全に消えてしまっていた。


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