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第18話 屋上へ行こうぜ
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今朝、両手に花状態で登校した僕は、結果としてほとんどのクラスメートから嫌がらせを受ける羽目になった。
ほとんどというのは、本当に文字通りほとんどで、男女分け隔てなくである。
「よお優季、流石のお前も結構参っているみたいだな」
疲れ果てて机に突っ伏している僕に声をかけて来たのは、もはや友人と言っていいかすら怪しくなっている永田 利紀だ。
「流石のってなんだよ……」
「いつも男子の嫉妬や嫌がらせを受けても平気そうな顔してるじゃねぇか」
「……別に、今までだって平気だったワケじゃないよ」
普段から嫌がらせなどに耐えてこられたのは、ひとえに初瀬先輩のお陰である。
あんな素晴らしい彼女がいるのだから、この程度の嫌がらせ耐えて当然という精神が働いたからこそ、僕は耐えられていたのだと思う。
しかし、今日の嫌がらせについては、それ以外の要素がふんだんに込められていたため、精神的に厳しい状態となっていた。
「お、いたいた! 藤馬君! 迎えに来たよ!」
「げっ……」
その原因の大半を占めている存在が、今まさに僕の元へ近づいてくる所であった。
後輩のクラスに堂々と入って来るあたり月岡先輩らしいが、正直勘弁して欲しい。
そのせいで、またしても僕の周りの空気が悪くなっている(一部からは黄色い声も上がってるが)。
「おいおい、今凄く嫌そうな顔しなかったか? 傷つくなぁ……」
「月岡先輩……、何しに来たんですか……」
「おっと、私のことは麻沙美先輩と呼ぶことになったハズだろう? やり直しを要求する」
その言葉が周囲のクラスメート達からのヘイトをさらに高めたのか、空気が一層悪くなる。
ワザとやってるのではと疑いたくなってくるな……
「……麻沙美先輩、何しに来たかわかりませんが、僕はもう帰りますので今度にして貰えますか?」
「伊万里と一緒に帰るんだろう? 私も一緒だから何も問題ないよ」
「問題ありまくりですよ! 麻沙美先輩にはこの空気が読めないんですか!?」
先輩の登場により、永田も含め、周囲のクラスメートは完全に固まった状態になっていた。
それより離れた外野も、皆静かにコチラの様子を伺っている。
「ああ、すまないね、私はよくKYと言われるんだ。確かに、自己紹介くらいはしておいた方が良いかもしれないね……」
麻沙美先輩はそう言って、クラスメート達の方へ振り返る。
「知っている人もいるかもしれないが、私は三年の月岡 麻沙美だ。藤馬君とは今朝から仲良くさせて貰っている。どうぞ宜しく」
それに対し、クラスメート達はおっかなびっくりな感じで宜しくお願いしますと返したり、黄色い声を上げている。
麻沙美先輩はそれで満足したのか、再びこちらに向き直った。
「君は、藤馬君の友達かな? 話している最中に割り込んで悪かったね」
「い、いえ! 全然問題無いっす! どうそ、こんなヤツで良ければいつでも持っていって下さい!」
おいおい永田、こんなヤツとか持っていけとか、酷くない?
というかお前、そんな喋り方だったっけ……
「ありがとう。では行こうか藤馬君」
「……はい」
恐らく何を言っても無駄そうなので、僕は大人しくついて行くことにする。
と、そんな僕の背中を永田のヤツが小突いてくる。
「優季、あとで覚えてろよ」
一体僕が何をしたっていうんだ!?
…………………………
…………………
…………
「いやぁ、すまなかったね、藤馬君」
「絶対すまないなんて思ってないでしょ……。それより、なんで麻沙美先輩が迎えに来たんですか?」
「ああ、実は先に伊万里のクラスに寄ったんだけど、少し用事があるらしくてね。それで、藤馬君が逃げないように捕まえておいてくれと頼まれたんだよ」
初瀬先輩の差し金だったのか……
それにしても、逃げないように捕まえておいてって結構酷くないだろうか?
いや、いつも逃げてるからこその発想なのかもしれないけど、流石の僕も約束を放り出して逃げ出したりはしない……、と思ったけど無意識に逃げ出す可能性は否定できないか……
「事情はわかりましたけど、どこで先輩を待つんですか?」
「それだけど……、藤馬君」
何故か改まってコチラに向き直る麻沙美先輩。
「はい。なんでしょうか」
「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……ヌレちまったよ……」
何言ってんのこの人!?
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