今日も僕は、先輩の官能的な攻めに耐えられない

九傷

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第12話 エロの先輩

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 あの時のことを思い出すと、顔から火が出そうになる。
 事故とはいえ、僕はついにアレに触られてしまった。
 気が動転していたのでどんな感じだったかとかは一切思い出せないが、とにかく触られたことは事実である。


(しかも、直で……)


 思い出せないのは少し残念な気もするが、仮に思い出せたとしても僕では持て余しそうである。
 今ですらこの状態なので、恐らくその予想は間違っていない。


(それにしても、こんな状態じゃまともに先輩の顔見れないな……)


 あの一件以降、先輩とは二日ほど会っていない。
 理由は単純に、僕が風邪をこじらせて学校を休んでいたせいだ。

 そのことについて先輩は非常に申し訳なさそうにしていたが、僕としては半分以上自業自得だと思っている。
 きっかけはどうあれ、寝不足で体調不良なのに、あんな格好で逃げ出せば風邪を引くのは当たり前だ。
 僕に逃げ出さない胆力、もしくは先輩を受け入れられるだけの包容力があれば、十分に回避できたことである。

 不幸中の幸いだったのは、この二日で気持ちについてだけ・・は整理できたことだろう。
 今でも恥ずかしいことには変わりないが、少なくとも逃げ出したりしないくらいには落ち着きを取り戻すことができている。
 あとは少しずつ慣らしていけば、なんとかなるハズだ。

 僕は一度大きく深呼吸をしてから、先輩との待ち合わせ場所へと向かう。
 すると、そこには見慣れない女子生徒が立っていた。


(先輩が変装している……、ってワケではなさそうだけど、誰だろう?)


 遠目からなのであまり自信はないけど、なんとなく雰囲気から大人びたものを感じた。
 ひょっとしたら、三年生なのかもしれない。


(でも、なんであんな場所に……)


 この場所は普段僕と先輩が待ち合わせに使っている場所であり、通学路からは少し離れたところにある。
 普通に学校に行くなら、立ち寄ることのないような場所なのだが……


「お、来た来た! 君が藤馬とうま君だね!」


「えっ?」


 まあ僕には関係ないことかと思い無警戒に近付くと、その女生徒の口から僕の名前が呼ばれる。
 想定外のことだったので、思わず間抜けな声が漏れてしまった。


「やぁ、待ってたよ。……ふむ。本当に伊万里いまりの言った通りの子だね」


「伊万里って……」


 どうやら、この人は僕のことを初瀬先輩から聞いているらしかった。
 ということは、ここにいたのもそれが理由なんだろうか?


「ああ、驚かせてしまったね。私は三年の月岡 麻沙美つきおか まさみ。今日は君のことを伊万里に頼まれてね」


「あ、初めまして。僕は藤馬 優季とうま ゆうきです。……あの、頼まれたって、どういうことでしょうか?」


「それはもちろん、伊万里が君にエロいことをしでかした件について色々と、だよ」


「っ!?」


 エ、エロいことをしでかした件って……、正直思い当たることが多すぎるんだけど、どのことだろうか……
 というか、それらの件について、先輩は何を色々と頼んだんだ……?


「……ほぅ、これはこれは、聞きしに勝る可愛さだねぇ。……君、本当に男の子だよね?」


「あ、当たり前じゃないですか! どこをどう見ても男でしょう!?」


 確かに僕は童顔だし、私服を着ていると時々女の子に間違われることはある。
 しかし、今は男子の制服を着ているのだから、そんな質問が出ること自体おかしいと思う。


「いやいや、君ほど可愛い子は女の子にも中々いないよ? 実は性別を詐称して入学してきた可能性も十分に……」


「ありませんから! 僕は男です!」


「……まあ、そうなんだろうけどねぇ。なんかちょっと自信なくすなぁ……」


 月岡先輩は、僕の全身を嘗め回すように見てから頭を捻る。
 自信って何の自信だろうと思ったが、今はそれよりも詳しい事情について聞きたいところだ。


「オホン! それよりも、今日は一体どんな用があって僕に会いに来たのでしょうか。さっきの説明では良く理解できませんでしたので、詳しく聞かせて下さい」


「……ああ、確かにちょっと言葉が足りなかったね。えっと、昨日伊万里から、君にエロいことをしたせいで距離を置かれてしまったから助けて欲しいと相談されてね。その解決のために出張って来たんだよ」


「先輩がそんなことを……」


 確かに、僕はこの二日間、先輩が見舞いに来るというのを丁重にお断りしていた。
 でもその理由は、先輩に風邪をうつしたくなかったのと、単純に合わせる顔がなかったからである。
 別にエロいことをされてドン引いたとか、そういう理由ではない。


「あの、その件については誤解というか、別にその、エロいことをされたからとかが理由じゃありません」


「そうなのかい?」


「はい。単に風邪をうつしたくなかっただけで……」


 はずか死しそうだったから、というのは別に言わないでもいいだろう。


「なぁんだ。私はてっきり、私が教えたエロいことが原因で、彼氏にドン引かれちゃったのかと……」


 ……ん? 今なんと?


「ということは、君も別にエロいことは嫌いじゃないってことだよね? なら何も問題ないね!」


「ちょ、ちょっと待ってください! 私が教えたエロいことって一体!?」


「ん? ああ、伊万里にエロい知識を仕込んだのは、この私だよ」


 な、なんだってぇぇぇぇぇぇ!?


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