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第5話 母娘で耳そうじ(中)
しおりを挟む精神衛生上よろしくないという理由で、先輩は部屋を出ていった。
つまり、現在部屋には、僕と小鞠さんの二人きりというワケである。
「………」
僕は緊張からか、声も出せずにひたすらされるがままになっている。
先程小鞠さんが言ったように、動いたら危ないという気持ちも勿論あったが、それ以上に気持ちが良くて動けない。
人に耳そうじされるなんて子供の頃以来だが、ここまで気持ちの良い行為だったという記憶はなかった。
耳そうじに才能などあるかはわからないが、少なくとも小鞠さんは間違いなく上手い部類なのだと思う。
(これは……、先輩じゃ勝てないかもしれないな……)
小鞠さんの耳そうじは、恐らく経験による積み重ねで上達した技術だ。
そして特殊な技術であるがゆえに、先輩が経験量で勝っているとは到底思えない。
もし先輩に、経験に勝る程の才能があれば話は別だが、その可能性は限りなく低いと言えるだろう。
「何か複雑そうな顔をしてるわね。もしかして、あまり気持ちよくなかった?」
「あ、いえ、物凄く気持ちいです。ただ、それが少し複雑というか……」
「……ああ、伊万里が勝てなさそうだからってことね」
勝負の出汁にされたことは不本意だが、それはそれとして、どちらかを応援するとしたら僕は間違いなく先輩を選ぶ。
小鞠さんには悪いけど、やはり好きな子を応援したいという気持ちに嘘はつけない。
「藤馬君は本当に優しい子ね。おばさん、キュンキュンしてきちゃう」
そう言って小鞠さんは僕の頭を優しく撫でる。
その手つきがまた素晴らしく心地良く、僕はそれだけで昇天してしまいそうだった。
「でも、心配しなくても大丈夫よ、やっぱりこういうことって、愛情が一番影響するんだもの。流石に私じゃあの子の愛情には勝てないわ」
「そ、そうでしょうか……」
先輩の愛情の深さは僕にも伝わってきているが、人の口からをれを聞かされると、なんとも恥ずかしいものがある。
「そうよ。それに、流石に若さには勝てないし、膝枕の心地もあの子の方が良いでしょうね」
「そんなことはありませんよ! ……多分ですけど。いや、だって小鞠さん凄い若々しいですし、スタイルだってその、先輩より良いんじゃないですか?」
横目に映る双丘の存在感は、やはり先輩を超えている気がする。
腰つきなどが放つ色気も凄く、スタイル以上のナニかを感じられずにはいられなかった。
「あら、三十過ぎのおばさんをそんな目で見ていたの? 藤馬君たら、結構エッチなのね♪」
「っ!? す、すみません……」
僕は童顔だし、あまりそういったことに対する免疫もないけど、好奇心自体は非常に旺盛である。
というか旺盛になってしまったのだ。
毎日のように先輩に刺激的な行為をされているのだから、こればかりは仕方ないがないだろう。
「そんなエッチな子には、お仕置きが必要ね♪」
「っ!?」
綿棒や耳かきではない、ひんやりとした感触が耳に触れる。
恐らくウェットティッシュか何かだろうが、一体何を……
「ふぅーーー」
「ひぃ!?」
湿った部分に、しっとりと暖かな息が吹きかけられ、僕は堪らず声を上げてしまう。
「ふふ……、可愛い声上げちゃって♪」
妙に近くなった声が振動となり、その刺激が体中にゾワゾワとした快感を伝播する。
「じゃあ、綺麗にするからね……」
「…っ!? んん!? んんんんんーーーーーっ!?」
…………………………
…………………
…………
「お、お母さん……、一体何をしたの!?」
「何って、普通に耳そうじしただけよ?」
「それだけで、なんで藤馬君がこんなことになっているんですか!?」
僕のだらしなく緩んだ顔を指さし、先輩が声を張り上げる。
酷い顔をしている自覚はあるのだが、こんなことと指さされる程とは、一体どんな顔をしているのだろうか……
「藤馬君たら、とても気持ちよさそうなんだもの。少し本気を出しちゃった♪」
「本気を出すのは、お父さん相手の時だけにしてください!」
全くもってその通りだと思うが、僕は満足に反応もできない。
文字通り、骨抜きにされてしまっていたからだ。
「……こうなったら、私も本気をだすから」
「あら、それは愉しみね♪」
「愉しみじゃないから! ほら、お母さんは出てって!」
そう言って、先輩は強引に小鞠さんのことを部屋から追い出す。
小鞠さんの精神衛生上問題無いのであればいてもらっても良いと思うんだけど、駄目なのだろうか。
……いや、正直に言うと、僕としてはいて欲しかった。
だって、今の先輩は相当にヤバイ気がする。
「藤馬君、覚悟してね? 今度は絶対に逃がさないから」
――ああ……、僕はこの後、ナニをされてしまうのだろうか……
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