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5-6. 法政会議(六)
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思わず手が出た。
桃雪は隼樺の胸ぐらをつかもうとした。
だが、その手は急に力を増した吸盤に制止された。
と同時に、さっきまで静かだった軟体が、一気にひしめき出した。
「ああ、あまり速く動こうとしない方がいいですよ。その生き物は、被着物の動きに連動しますから」
隼樺の忠告も虚しく、活気づいた蛸らしきなにかは、漢服の内側で激しく暴れた。
「やめろ!」
(苦しいっ)
人がいないのいいことに、桃雪はたまらず大声を上げた。
だがそうもがくほど、その生物は余った脚も併せ、服の下で血が通わなくなるばかりに桃雪を締め上げる。
「な、んで、私ばっかり…」
愛されている、なんて戯れ言は通用しない。むしろ殺しにかかられているようなものだ。
飛びそうになる意識の中で、ふと湧いた疑問が口をついて出た。
どう考えても助けるべきなのに、眺めているだけの隼樺が、桃雪のそばに寄った。
「これですよ、これ」
にこっと笑った隼樺が、首に手をかけようとする食材だったものをぴしゃっとはね切る。
その調子で全部払ってくれればいいのだが、桃雪はそれより彼が手にしているものを見て愕然とした。
それは、いつか貰ったあの香り水が入っていた小瓶だった。
「なに、言って」
「この香り水に、少々興奮剤を混ぜたんですよ、その珍味に効く種の。あ、私が付けているのには入っていませんよ。西国では交接強迫剤とよぶらしいですね、これ」
茶会で得た豆知識を淡々と披露する隼樺。
桃雪が浮かれていた香。
それに少しでも優しさを見いだしていた自分。
色んなことがすべて一つになっていく。
桃雪は訳の分からない言葉を絶叫した。
たぶん、隼樺の名前も叫んだんだと思う。
彼は桃雪が狂うさまを、頬を赤らめて見ていた。
冷たさと熱が共存するような、神にでも召される前の恍惚とした笑みを垂らして。
桃雪は隼樺の胸ぐらをつかもうとした。
だが、その手は急に力を増した吸盤に制止された。
と同時に、さっきまで静かだった軟体が、一気にひしめき出した。
「ああ、あまり速く動こうとしない方がいいですよ。その生き物は、被着物の動きに連動しますから」
隼樺の忠告も虚しく、活気づいた蛸らしきなにかは、漢服の内側で激しく暴れた。
「やめろ!」
(苦しいっ)
人がいないのいいことに、桃雪はたまらず大声を上げた。
だがそうもがくほど、その生物は余った脚も併せ、服の下で血が通わなくなるばかりに桃雪を締め上げる。
「な、んで、私ばっかり…」
愛されている、なんて戯れ言は通用しない。むしろ殺しにかかられているようなものだ。
飛びそうになる意識の中で、ふと湧いた疑問が口をついて出た。
どう考えても助けるべきなのに、眺めているだけの隼樺が、桃雪のそばに寄った。
「これですよ、これ」
にこっと笑った隼樺が、首に手をかけようとする食材だったものをぴしゃっとはね切る。
その調子で全部払ってくれればいいのだが、桃雪はそれより彼が手にしているものを見て愕然とした。
それは、いつか貰ったあの香り水が入っていた小瓶だった。
「なに、言って」
「この香り水に、少々興奮剤を混ぜたんですよ、その珍味に効く種の。あ、私が付けているのには入っていませんよ。西国では交接強迫剤とよぶらしいですね、これ」
茶会で得た豆知識を淡々と披露する隼樺。
桃雪が浮かれていた香。
それに少しでも優しさを見いだしていた自分。
色んなことがすべて一つになっていく。
桃雪は訳の分からない言葉を絶叫した。
たぶん、隼樺の名前も叫んだんだと思う。
彼は桃雪が狂うさまを、頬を赤らめて見ていた。
冷たさと熱が共存するような、神にでも召される前の恍惚とした笑みを垂らして。
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