お付き様のおもわく

三々 こころ

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4-3. 茶会の後(三)

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 一方その頃、隼樺は着々とその準備を進めていた。
 漢服の中には、西の礼服スーツを羽織ったままである。優秀な秘書は忙しいのだ。

「隼樺さま!重いでしょう、お貸しください」
「いや、かまわない」

 大臣の下っ端たちが隼樺の大きな荷物を見て驚くが、彼はまた忙しそうな補佐官らの申し出を丁寧に辞す。
 遠巻きにしていた彼らは、なんだあれ、とその重そうな荷をちらちら見返しながら持ち場に戻る。

 そんなところ、現在もっとも皇族と懇ろだといわれる大臣・チョウの配下、邯蜻ガンゼがそれを眺めていた。


「やあ」

 すれ違いざま、邯蜻が小声で隼樺に話しかけた。

「……」

 隼樺は一瞬押し黙った。

 しかし次の瞬間には爽やかな笑顔を纏って一礼する。

「これはどうも」
「……」

 今度は邯蜻が黙った。人の目もあるのでやむなく合掌する。


「…調子はどうだい?」
「…あなたは良く言えば友好的フレンドリーな人ですね」

 小声で毒づく隼樺に、相変わらずだねぇ、と邯蜻が小刻みに笑う。

「べつに邪魔しに来たわけじゃないよ。知った顔があったから挨拶したかっただけ」
「光栄です」

 無愛想な面持ちで隼樺が応えた。
 どうも彼らは、すでに知り合った仲らしい。
 どちらの言い分が正しいといえる訳でもないが、一般的には補佐官吏といえ、その主の位に沿った接待をわきまえる。特に身分が高くなるにつれ、それは顕著だ。
 だが邯蜻はそうするつもりもない、いやむしろ不遜ともとれる態度である。

 隼樺のあしらいを気にしていないのか、邯蜻は長髪をたなびかせてどこか得意げだ。

「でもごめん、僕いま忙しいから。また暇なときに声かけるね」
「ええ、では私もこれで」

 それ今が好機といわんばかりに隼樺はそそくさと荷を運ぼうときびすを返す。
 人嫌いとか、節度を重んじる性格とか、そこまで考えてではないが、まず隼樺としてはその荷物の方が先だ。
 人一倍仕事がしたいようにも見えない隼樺にしては、俊敏な判断だった。
 その様子をどこか変に思ったのか、邯蜻は美しい御顔が持ち前の彼にしては珍しく眉をひそめた。

「…なんか楽しそうだね?」
「そうですか?」

 隼樺は邯蜻を一べつすると、邯蜻はうーん、と首を傾げる。

 たしかに、彼の顔は心無しかほころんでいるようにも見える。



 だが、それが悪魔の微笑みであるとは、このとき桃雪はまだ知らなかった。
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