お付き様のおもわく

三々 こころ

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3-2. お着替えの時間(二)

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 隼樺の勘のよさに桃雪が受けた辱めはいかほどであっただろう。

 桃雪としては今すぐにでも逃げ去りたいところだったはずだ。

 が、急所の手前を優しくつまみ上げられたせいで下が若干いらぬ誤作動をもよおしているし、こんな状態でまだ女官にこだわるならば露出狂をも疑われかねない。

 かくして桃雪は、隼樺に手を貸され、着替えることになったのだが。



(あぁ…良くない…)

 漢袴というのが情け深い――特に青年期にさしかかる前の男にとって非常に――服装であることを、桃雪はここに来て初めて体感した。

「桃雪さま、次は左足を上げてください」

 下が褌のみになった桃雪に、隼樺の落ち着いた声が次の指示を出す。後ろから洋袴ズボンを履かせる隼樺の指が、ゆっくり桃雪の脚を上へ舐める。

(なんで、こんなに腰口が細いんだ)


 主への配慮か、隼樺はあえて後ろから手伝っているが、まさかかがみ腰の桃雪が前をこれほど実らせているとは思わないだろう。

 しかし弁明を挟むなら桃雪も、まだ元服を迎えたばかりの青少年なのだ。

 宮中に入内する姫君らが嫁入り修行の一環として夜の勤めを学ぶように、同等の知識を桃雪も身につける。
 のだが、彼らが見るのはせいぜい枕絵である。
 それも察するに、主が所望しない限りは娯楽性を無視した、稚拙な、現在で言う保健の教科書のような代物しか見たことがないだろう。
 加えて桃雪は、女にまったく食指が動かない質。
 そんな環境下で想像力たくましくなった彼に、こんな状況が与えられたのだ。

 桃雪は、自分でも何に興奮しているのか納得できないまま、ただ今は身震いしないよう歯を食いしばるしかない。


「出来ました」

 やがてその声と共に、やっと隼樺の手が離れた。
 あの悩ましげな手指から解放され、桃雪の唇からはおもわず吐息が洩れる。

 しかしその安堵も一時のものだった。
 一息置いた後、隼樺がさも当たり前のように言った。


「桃雪さま、次はこちらを向いていただいても?」
「なっ」

 桃雪は硬直する。

「最後、前の留具チャックを閉める作りになっているので」

 隼樺の手が開帳した前布に伸びた。

「っそこは自分でする!」

 桃雪は強くその手を払った。
 彼の股間は、今に見つかるかもしれない恐怖と隼樺が掠める指の快感に挟まれ、ふるふると上を向いて侘しく啼いていた。
 しかし隼樺が臆することはない。

「駄目ですか。では私が正面に移りましょう」



 煙を巻くにはもう遅かった。

 いやがる桃雪の山の麓は、すぐに隼樺の前へと差し出される。


「…おや」


 隼樺が声を上げた。至極まっとうだろう。

 桃雪は噴き出しそうなほどの血が顔に昇る心地がした。
 留具を閉じようにも、この袴の生地は不足が過ぎ、下着ごしに膨らんだそこはまったく収まりそうになかった。

「………」

 隼樺は黙ったままだ。なにか考えごとをするように桃雪の肚の下を見つめる。


 桃雪は申し開くこともかなわず、冷え防止に羽織った丈の足りぬ上衣で必死に恥部を隠そうとした。
 だがかなわない。
 ので、桃雪は内腿で突起を押さえ込もうとするが、そこは腿にかかることはなく排出口のあるあたりを隼樺につきつけるようにして踊る。
 桃雪はそうやって右往左往していること自体が恥ずかしくなった。

 体裁も何も崩れていく気がした。覆うべきは隼樺の目か、自分の顔か、はたまたやましい場所かもわからず、それでも隼樺の目下に置かれたそこはいたく悦んでいた。


「…っ」

 とその時、隼樺の指がするりと骨盤の下をなぞった。

 声を上げそうになった。
 桃雪の反応に気づいてか、隼樺は面白がるように何度かその線をなすった。

 桃雪はそのしつこさに、おもわず膝立ちの隼樺の肩山をぎゅっと握った。
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