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5. こういう物語線ではみんな強がりであってほしい
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その時だった。
「ルタぁ、ポテチとソーダ追加」
テオの声と共にドアが開く音がして、ルタは刹那のうちに手を前に戻した。
振り返ると、言葉通り盆にさっきより多めの菓子を盛り合わせてテオが帰っていた。
「サンキュ」と立ち上がりかけて、ルタは自分の下半身がみっともないことになっていることに気づく。もはや手を貸せる状態ではない。
溜めこんだ吐息とも分からぬ熱いものが歯の隙間から漏れる。
「…AVに大量の菓子とか、バカかよお前」
仕方なくルタは悪態を呼吸に混ぜて吐く。そうでもしないと熱が治まらない。
結構食べてたじゃん、とテオは苦笑する。
(ごもっとも)
テオが涼しげに装うぶん、自分の醜態っぷりが情けない。
男の部屋で女の抜ける動画を見せられて、でも自分の息子が反応しているのはそれではなく、それを嗜好する男なのだ。ふざけた息子だ。
しかし冷めやらぬのが問題。
「あ俺、この子のホクロ好きだわー」
陰部がズームアップされたところで、ルタの隣に胡坐をかき腰を下ろしたテオがふざけた感想を述べる。
「いやだろ。普通にウンコみたいだし、きたねぇ」
「自分しか見れない場所にあるんだよ?興奮する」
“興奮”というワードにどきりとして、ルタは思わずテオの股間に目を落とした。もちろん、ばれないように視界の隅でやったはずだ。
が、どうも失敗した。
「やらしー目で見ないでくれる?」
ぴしゃりと言われ、ルタは「は?」としらばっくれるしかない。
「ちなみに多分俺はそんなに勃たないから。昨日それでヌいたし」
最低な回答にルタはイラッとする。つまりテオは、自分が勃たないのを前提に、最初からこの我慢比べで痴態を晒す友人を嘲笑う気でいたのだ。
「あ、もしかしてルタ、勃ってる?」
(勃ってるよ、お前にだけど)
諸君には一度考えてほしい。勃って当たり前の状況である。煽られた立場とはいえ、生理現象だ。開き直ってもいい。だが―――
「勃ってねえよ」
ルタは馬鹿である。理論より本能を優先して発言してしまう。
ルタはつまり、テオに反応した自分の息子を見られたくなかった。少し考えれば、もっと無難にことを収められるというのに。
「まあ、だからこそいじめ甲斐があるんだけど」
「近え」
テオの呟きはルタに届かない。ルタの心臓は、鼻孔をくすぐるテオの匂いに持っていかれていた。
テオは、必死にほてりを冷まそうとしているルタにどこか憐憫の情を垂れてその形相を見下ろした。
「ルタぁ、ポテチとソーダ追加」
テオの声と共にドアが開く音がして、ルタは刹那のうちに手を前に戻した。
振り返ると、言葉通り盆にさっきより多めの菓子を盛り合わせてテオが帰っていた。
「サンキュ」と立ち上がりかけて、ルタは自分の下半身がみっともないことになっていることに気づく。もはや手を貸せる状態ではない。
溜めこんだ吐息とも分からぬ熱いものが歯の隙間から漏れる。
「…AVに大量の菓子とか、バカかよお前」
仕方なくルタは悪態を呼吸に混ぜて吐く。そうでもしないと熱が治まらない。
結構食べてたじゃん、とテオは苦笑する。
(ごもっとも)
テオが涼しげに装うぶん、自分の醜態っぷりが情けない。
男の部屋で女の抜ける動画を見せられて、でも自分の息子が反応しているのはそれではなく、それを嗜好する男なのだ。ふざけた息子だ。
しかし冷めやらぬのが問題。
「あ俺、この子のホクロ好きだわー」
陰部がズームアップされたところで、ルタの隣に胡坐をかき腰を下ろしたテオがふざけた感想を述べる。
「いやだろ。普通にウンコみたいだし、きたねぇ」
「自分しか見れない場所にあるんだよ?興奮する」
“興奮”というワードにどきりとして、ルタは思わずテオの股間に目を落とした。もちろん、ばれないように視界の隅でやったはずだ。
が、どうも失敗した。
「やらしー目で見ないでくれる?」
ぴしゃりと言われ、ルタは「は?」としらばっくれるしかない。
「ちなみに多分俺はそんなに勃たないから。昨日それでヌいたし」
最低な回答にルタはイラッとする。つまりテオは、自分が勃たないのを前提に、最初からこの我慢比べで痴態を晒す友人を嘲笑う気でいたのだ。
「あ、もしかしてルタ、勃ってる?」
(勃ってるよ、お前にだけど)
諸君には一度考えてほしい。勃って当たり前の状況である。煽られた立場とはいえ、生理現象だ。開き直ってもいい。だが―――
「勃ってねえよ」
ルタは馬鹿である。理論より本能を優先して発言してしまう。
ルタはつまり、テオに反応した自分の息子を見られたくなかった。少し考えれば、もっと無難にことを収められるというのに。
「まあ、だからこそいじめ甲斐があるんだけど」
「近え」
テオの呟きはルタに届かない。ルタの心臓は、鼻孔をくすぐるテオの匂いに持っていかれていた。
テオは、必死にほてりを冷まそうとしているルタにどこか憐憫の情を垂れてその形相を見下ろした。
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