意固地なきみが屈する話

三々 こころ

文字の大きさ
上 下
5 / 8

5. こういう物語線ではみんな強がりであってほしい

しおりを挟む
 その時だった。

「ルタぁ、ポテチとソーダ追加」


 テオの声と共にドアが開く音がして、ルタは刹那のうちに手を前に戻した。

 振り返ると、言葉通り盆にさっきより多めの菓子を盛り合わせてテオが帰っていた。


「サンキュ」と立ち上がりかけて、ルタは自分の下半身がみっともないことになっていることに気づく。もはや手を貸せる状態ではない。

 溜めこんだ吐息とも分からぬ熱いものが歯の隙間から漏れる。

「…AVに大量の菓子とか、バカかよお前」

 仕方なくルタは悪態を呼吸に混ぜて吐く。そうでもしないと熱が治まらない。
 結構食べてたじゃん、とテオは苦笑する。

(ごもっとも)


 テオが涼しげに装うぶん、自分の醜態っぷりが情けない。

 男の部屋で女の抜ける動画を見せられて、でも自分の息子が反応しているのはそれではなく、それを嗜好する男なのだ。ふざけた息子だ。

 しかし冷めやらぬのが問題。


「あ俺、この子のホクロ好きだわー」

 陰部がズームアップされたところで、ルタの隣に胡坐をかき腰を下ろしたテオがふざけた感想を述べる。

「いやだろ。普通にウンコみたいだし、きたねぇ」
「自分しか見れない場所にあるんだよ?興奮する」


 “興奮”というワードにどきりとして、ルタは思わずテオの股間に目を落とした。もちろん、ばれないように視界の隅でやったはずだ。


 が、どうも失敗した。

「やらしー目で見ないでくれる?」

 ぴしゃりと言われ、ルタは「は?」としらばっくれるしかない。

「ちなみに多分俺はそんなに勃たないから。昨日それでヌいたし」

 最低な回答にルタはイラッとする。つまりテオは、自分が勃たないのを前提に、最初からこの我慢比べで痴態を晒す友人を嘲笑う気でいたのだ。

「あ、もしかしてルタ、勃ってる?」

(勃ってるよ、お前にだけど)



 諸君には一度考えてほしい。勃って当たり前の状況である。煽られた立場とはいえ、生理現象だ。開き直ってもいい。だが―――



「勃ってねえよ」

 ルタは馬鹿である。理論より本能を優先して発言してしまう。

 ルタはつまり、テオに反応した自分の息子を見られたくなかった。少し考えれば、もっと無難にことを収められるというのに。


「まあ、だからこそいじめ甲斐があるんだけど」
「近え」

 テオの呟きはルタに届かない。ルタの心臓は、鼻孔をくすぐるテオの匂いに持っていかれていた。

 テオは、必死にほてりを冷まそうとしているルタにどこか憐憫の情を垂れてその形相を見下ろした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

王と宰相は妻達黙認の秘密の関係

ミクリ21 (新)
BL
王と宰相は、妻も子もいるけど秘密の関係。 でも妻達は黙認している。 だって妻達は………。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...