夏の獣

七里田発泡

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6話

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 僕はアンモニア臭が漂う狭い個室トイレの中に押し込められた。青白く弱弱しい照明の明かりが天井で点ついたり消えたりを繰り返している。照明は僕から見てちょうどシュウ兄のちょうど背後にあたる天井に位置していた。シュウ兄は僕から光を遮るようにして歩み寄ってきた。タイル張りの青い壁を背にした僕は、ゆっくりと迫ってくるシュウ兄の影に対して、僕の身体は金縛りにあったように動かない。

 シュウ兄は僕のズボンを一気に脱がすと、小汚い公衆便所の床の上に両膝をついた。神に祈りでも捧げるような姿勢と胡乱げな表情にひどく嫌なものを感じる。

「さっきはしゃぶり損ねちまったからなァ」

 そうポツリと呟くとシュウ兄は僕の股間に顔を埋め、はぁはぁと息を荒げ始めた。野球で鍛えてきたであろう逞しい肩が激しく上下している。浅い呼吸と深い呼吸を何度も反復させ、シュウ兄は僕のパンツに染み込んだ匂いを必死で嗅いでいる。底知れぬ恐怖と気持ち悪さに僕は石のように硬くなるしかなかった。

「汗の匂いがする」

 シュウ兄はパサついた唇でパンツを咥え、太腿のあたりまで一気にずり下げた。僕は目に一杯の涙を溜め込みながら許しを求めた。

「シュウ兄……もういやだ。やめてよ。もう僕のこと許してよ……」

 僕のだらしなく項垂れている僕の性器に顔を摺り付けながらシュウ兄は、

「許すも何も、別にお前は何も悪いとしてないだろ? 何謝ってんの?」

 と興奮しきったような上ずった声のまま答えた。

「じゃあ 、どうしてこんな酷いことをするの?」

「は? 一体これのどこが酷い事なんだよ。 お前だってさっきは、気持ち良く喘いでたじゃねぇか。今更、梯子を外すようなこと口にしやがって」

「ち、違う……あれは」

「あーうっざ。それ以上うだうだ何か言うようだったら、また殴るぞ。 親父たちを待たしてるんだからマジで時間がねえんだよ。お前は黙って俺の口でアンアン喘いでいればいいんだ。悪いようにはしねぇから……絶対、絶対にマジで気持ちよくしてやるから」

 シュン兄は僕のちんこに唇を寄せると、オシッコが出る穴へと舌を伸ばす。くすぐったい感覚に身もだえしていると、シュン兄の両腕が僕の腰に蛇のように絡みついてきた。腰ががっちりと固定されてしまいむず痒い刺激から逃れることができない。シュウ兄の舌先は時には優しく、そして時には激しく、まるで生き物みたいに蠢いて僕の性器を撫で上げてくる。

「ッ――!!」

 思わず漏れ出そうになる声を僕は必死で両手で抑え込んだ。額から滲み出た汗は頬を伝い、床に吸い込まれるようにして落ちていく。













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