白の魔女の世界救済譚

月乃彰

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第七章「暁に至る時」

第二百九十六話 白魔法の極地

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 エストは今のままではセレディナを殺せないと思った。彼女の全身をすり潰すならばともかく、この戦いでは蘇生を前提としたものだ。それは相手も同じであり、条件に差異はない。しかしセレディナ有利であることには変わりない。

(だからと言って、私が不利だと言い訳するつもりはない。⋯⋯やりようはいくらでもある。やったことはないけど⋯⋯それをするから成長できる)

 エストが今までしなかった戦法。しなかった理由はそれが極端なまで難しく、やる前から無理だと思ったからだ。
 だが、今は違う。セレディナだけではない。エストも成長速度が非常に速くなっている。加速している。
 今の彼女ならば、できないと思わない。以前とは違うのだ。

「──『虚より在りし王、空に浮かびし王』

 選択、それは儀式詠唱。ただの〈爆裂〉さえ、威力を格段に上げた術式。
 確かにそれは儀式にしては短い。しかしエストの才能であれば十分過ぎる。元々が第十一階級であれば、尚更。
 ただ、普通の儀式詠唱ではない。移動しながらの詠唱。通常、詠唱とは立ち止まってするものだ。
 なぜか。そもそも魔法の演算には自分の立ち位置も含まれている。瞬間的な通常詠唱では問題ない。しかし、儀式詠唱の場合、行使者が移動すると魔法発動の場所がずれてしまうのだ。

「──『現れ虚無を齎し、存在し死を齎せ』」

 魔法に知識があろうがなかろうが、今のエストのやっている事が相対する者にとって驚異的になることは明らかだ。
 魔法使いでないからこそ、より魔法に詳しいセレディナが覚えた威圧感はさぞ重かっただろう。違和感は強かっただろう。
 エストの動きをより大きく、変則にするために黒刀を作っては投擲を、近づきながら繰り返す。接近が完了すれば黒刀を大振りする。だがエストはそれら全てを完璧に躱し切った。
 
「──『我が声に応え、我が意思に共鳴せよ』」

 魔法陣と行使者の距離は近ければ近いだけ良い。だから手のひらに魔法陣を展開するのが標準だし、離れさせなければいけない同時展開は難しい技術に分類される。
 そしてこれらは行使者の位置の移動が殆ど無いからできることだ。
 実際の戦闘における動きは想定できない。エストの頭脳でも、完璧に動きを予測することはできない。どうしてもその場で判断して動く必要があるのだ。
 つまり、移動しながらの詠唱には演算結果を常に変化させなければいけないことになる。勿論、動けば動くだけ計算式は大幅に変化し、エストの今の動きの場合だと演算のやり直しが必須事項。結果の調整は無理難題だ。

「──『無理解の笛を吹き、事実の夢を語れ』」

 エストがやっていたのはミカロナの真似事だ。『第六感』なるものを自力で見つけ出し、使う。
 便利だ。何も考えずとも体が勝手に動く。しかし精度は悪いようだ。黒刀による攻撃にはおおよそ反応するのに、肉体攻撃への反応は極端に悪い。ミカロナであれば全部に反応させることができる。おそらく、能力を使わずともエスト以上の精度を発揮できるだろう。

「──『その虚ろな目の下、その白痴の思考の下』」

 そう。エストは演算能力が許す限り、常に演算式を更新していっている。
 位置の変化による魔法行使への影響部分は魔力消費量及び魔法威力、対象との距離等だ。それ以外の演算も行い詠唱を進める。
 これら演算の負荷はエストにとって初めてのことだ。既に頭痛がする。演算に間違いが多発し、魔力の消費量も多くなっている。更に〈無量創造〉へ割く演算リソースも増加している。
 
「──『存在する万界、空想の一切さえ、それら全てに等しく終焉を与え給う』」

 しかしだ。しかし、エストはやりきった。演算をやりきった。あとすべきは、魔法名を唱えるだけ。

「──〈全てはただ虚しいだけオール・イン・ヴォイド〉」

 ──瞬間、辺り一面が真っ白になる。光に包まれたのだ。それによって起こされた破壊。否、最早破壊でさえない。
 消滅。文字通り全てを虚無へと還す魔法。範囲内における生者は、エストただ一人を除き存在しなかった。
 が、その範囲から逃れたものは居た。

「〈反撃居合〉」

 黒刀によって魔法を切り裂き、自分の生存圏を無理矢理作り出す。そしてそのままエストを狙ったのだ。
 首を狙う刃。しかし⋯⋯違和感。間違ってない。セレディナはエストの首を落とそうとしている。

(でも何か⋯⋯嫌な予感がする)

 無詠唱化、〈虚構障壁〉を行使。不可視の壁が展開される。
 結論から言ってしまえばエストの判断は正しかった。首を狙う一太刀を防ぎつつ、障壁は他の攻撃も防いだのだから。
 ──四つに分かれた〈全てはただ虚しいだけ〉がエストを襲ったのである。

「なるほど。反撃技⋯⋯でも全く同じものを返せるわけじゃないようだね?」

「だから何だ」

 投げられる黒刀。

「全く。バリエーションがない」

 避けるエスト。

「余計なお世話だ!」

 斬撃を躱す。躱しながら魔法を唱えつづける。〈次元断〉、〈獄炎〉、そして、

「〈世界を断つ刃ワールド・ブレイク〉」

「〈反撃居合〉」

 作り出した鞘に黒刀を戻し、内部でエネルギーを纏わせる。そして超加速させ、抜刀。交差させるように二つの刀を薙ぐ。
 第十一階級魔法を正面から切り落とし、エストを斬りつける。その後、魔法が反射される。

(単なる反射じゃない。一度刀に吸収して、斬撃と共に繰り出す⋯⋯か)

 再度覚える違和感。エストの直感は言っている、警戒せよと。

(⋯⋯吸収。それが正しいのなら⋯⋯)

 その時、黒刀は真っ黒な稲妻を発した。
 何かヤバイ。警戒せよ、という事の意味を理解した。
 予め予測しておいてよかった。エストがこの事に気づかなければ、やられていたかもしれない。

「──ッ!」

 エストからは離れているというのにセレディナは黒刀を構える。
 真っ黒な雷のようなものが刀の刃の形状を取った。極端に長い。それは十分、エストを捉えられるものだった。

「⋯⋯嘘」

 それを、エネルギーを、刀として扱いセレディナは振るったのだ。

「〈黒刀・刧気解放〉」

 当たれば即死は必至。エストは回避行動に全力を注ぎ何とか一太刀を躱した。
 直接触れていないはずの地面が融解し、空気が熱せられている。肌で感じる乾燥。見える蜃気楼。
 セレディナの持つ刀から漏れ出すエネルギーが熱となっているのだ。

「⋯⋯無駄な消費だよ。まだまだ未熟なんじゃないの?」

「今さっき初めて使ったばかりだからな。私は最初から何でも使える天才ではない」

 一撃で終わるものかと思ったがどうやら違うらしい。膨大なエネルギーの塊とも言えるセレディナの黒刀は今も続いている。無論無制限ではないはずだ。が、少なくともこれが決着するまでは続くだろう。

(まずは射程距離を──っと!?)

 ものは大きくなればなるほど、動きは鈍くなるものだ。単純明快、重くなるから当然の話である。
 しかし、セレディナの黒刀は質量がほぼ変わらない。魔力そのものに質量が殆ど無いように。だから普段と同じように振るうことができる。勿論、先端であればあるほどその速度は大きくなった。
 振り下ろされた黒刀を体を捻り避ける。空気が熱せられているのを感じる。

(次!)

 斜め上方向に振られることを視界の端に捉え、空中で一回転しつつ跳躍し回避するエスト。転移魔法を行使し、セレディナの真ん前に現れる。
 下手に距離を取れば動きづらくなる。ならば超近接の方がいくらか戦いやすいと判断したのだ。

「だが魔法使いとしては間違った判断だ」

 ただでさえ近接ではセレディナに分があった。その時より身体能力が増している彼女の近接攻撃にエストが対応できるのか。
 セレディナの膝蹴りを脚で受け、翼による突き刺しを何とか躱す──顔に赤い線ができあがった。

「チィっ!」

 速い。エストの反応速度でも何とか見切れる程度。しかし体が間に合わない。攻撃への対処が遅れ、積み重なり、最終的に避けきれない。
 躱しきれない。なら、

「ッ!」

 黒刀の薙ぎ払いをエストは手で受け止める。交差したところを片手で受け止めたのだ。殺した。

「違う!」

 エストは自分の左手を切断し、重力操作し、黒刀を受け止めた。ついでに防御魔法もかけている。短い時間ではあるが、黒刀の動きを止めるならば十分。
 魔法陣を展開。それは第十一階級魔法。

「〈仮想質量殴撃ヴォイド・ストライク〉!」

 マイナス質量を生み出し、辺りの質量を吸収する⋯⋯それが消えることはないが、代わりに引き伸ばされる。引き伸ばされた対象はその変化に耐えることはできずに死ぬ。通常であればそのまま爆散するように死亡だ。

「ぐ⋯⋯が⋯⋯はっ⋯⋯はぁ、はぁ⋯⋯」

 一度体が引き伸ばされる感覚は苦痛の極みだった。身体は悲鳴を上げている。実際、セレディナが吸血鬼でなければ、そして『逸脱者』でなければ魔法に耐えられず死んでいたし、仮に耐えられたとしても後遺症で死んでいた。

「うわぁ⋯⋯今の耐える?」

「御伽噺に出てくる勇者は⋯⋯悪を必ず滅ぼす。それまで倒れないんだぞ⋯⋯」

「ははは。誰が悪だって?」

 重力が操作される。セレディナの体に強い重力がかかり、地面に押し付けられる。しかし、彼女は進む、前に。

「はあああああっ!」

 そして刀を振るう。
 重力操作をしながらの回避行動は負担が大きい。ただでさえ無茶な詠唱をした直後。エストの脳はオーバーヒート直前だ。だから重力操作を解き、回避に徹する。

(⋯⋯ちょっと厳しくなってきたね)

 回避に徹するエストだが、段々と息がキツくなってきた。体が、特に頭が重く感じるのは疲労が原因だろう。
 対してセレディナはアンデッドであり、疲労は問題にすらならない。

(第十一階級魔法の連発⋯⋯無詠唱行使もある。ただ、以前よりは持久力は上がったし、何より限界を把握できてる)

 自分の魔法能力が高過ぎるあまり、限界が分からなかったエストにとっては大きな成長だ。
 エストはもう成長しきったと思っていたがどうやら違うらしい。彼女にはまだまだ余地がある。
 だが目の前のセレディナは、もしかすればエスト以上かもしれない。

「⋯⋯そろそろ、フィナーレと行こうか」

「みたいだな。辛そうな顔をしているぞ」

「うるさい」

 俗に言う切り札。奥の手。必殺技。エストという魔女の性格上、そういったものは戦闘開始と同時に使い、一気に追い詰めたいと考えて温存しないだろう。
 しかし近頃、その考えも変わってきた。相手のリソースを削り、注意力を散漫にし、弱った状態に叩き込む最高の技。確実に相手の生命を刈り取る戦い方も悪くない、と。
 そう、だから、エストは必殺技を二つ用意したのだ。一つは開戦直後にするもの。第十一階級魔法を連発すること。そしてもう一つ、最後にするものは、

「⋯⋯ところでさ、私、何て呼ばれてた?」

「は? 突然なんだ⋯⋯?」

「いいから、いいから。早く答えて」

「⋯⋯性悪」「違う」

 質問の意味を曲解してセレディナは答えた。すると即座にエストはそれを否定した。
 この問題にどんな意図があるのか、セレディナは考えもせずにもう一度答える。

「──白の魔女」

 エストの二つ名など、性悪以外には白の魔女しかない。これを答えさせる意味は一体何なのか。

「そう、私は白の魔女。白の魔女、エストだ。⋯⋯勿論、得意な魔法は白系統。だったら、私の必殺技は時空間魔法であるべきだよね」

「まあ、そうだな。⋯⋯え? それが何だ?」

 エストが何を、言いたいのか、セレディナには分からなかった。

「何って、そりゃぁ⋯⋯」

 エストは両手に魔法陣を展開しつつ、答えを教える。

「──私は今から、時空間というものを完全に操ってみせるってことだよ」

 白魔法とは何か。その本質とは何か。それらが操るものは、時空間。次元、空間、時間を操る魔法。それが白魔法だ。
 そしてエストが扱う白魔法の第十一階級は虚無に関係する小難しいものばかり。彼女はそれだけではレパートリーが少ないと思ったのだ。
 もっと難しく考えず、もっと簡単な白魔法の極地とは何か。それを考えたとき、エストは閃いたのだ。

「〈私だけの世界マイ・ワールド〉」

 ──その時、世界は塗り替えられた。

「⋯⋯一体何が」

 景色は何も変わらない。見た目は何も変わっていない。さして問題もなく、セレディナに悪影響は何もない。
 だが、変わった。漠然とそんな感じがする。

「簡単だよ。ここら辺は私の世界になった。それだけ」

「その意味が分からないと言っているんだが?」

「うーん。正直私にも説明が難しいね。どういう理屈でこうなってるのか、分かってないもん」

「は?」

 通常、魔法とは理論に基づいた現象である。イメージは確かに大切だが、それ以上に理屈や計算式が必要だ。
 魔力の流れ、変質する過程、伴う辺りへの影響など⋯⋯何がどうなっているのか、把握する必要がある。
 けれど、エストは今、その理解というプロセスを踏んでいない。彼女が分かっていることは

「唯一、この世界の中で私は『世界の理』を自在に操れる。私が理解しているのはこれくらいだね」

「⋯⋯それってつまり」

「うん。今の私はイメージをそのまま現実に落とし込める状態だよ。それに真の意味で理の利点だけを享受できる。ま、『逸脱者キミ』を直接どうこうできるわけじゃないけど」

 似た魔法の〈虚空支配〉と違うのはそこだ。〈虚空支配〉は空間を操ることができるし、生命に命令を強制することもできる。例え『逸脱者』であっても強い精神がなければ何もできなくなるし、命令によってはどんな方法でも抗えない。
 一方〈私だけの世界〉は空間支配に特化した魔法だ。対人支配能力は皆無だが、代わりに『世界の理』を操れるようになっている。これは間接的に生命を支配する行為でもある。

「キミには教えておこう、この魔法の欠点。これは本当の殺し合いじゃないからね。⋯⋯この魔法によって操作した理は、誰か一人だけに適応するなんてことはできない。もし魔法の理を消去した場合、この空間も消え去るんだよ。勿論、その後に魔法効果が解除される。そしたらすぐに魔法が使える状態だ。意味ないね」

「なるほどな。それこそ生命の存在に関する理を無効化すれば、行使者であるお前も死ぬからできない、と」

「そゆこと。でも、なら逆転の発想をすべきなんだよ、こういう時はね」

 この魔法によって何か影響を与えるなら、それは全員に共通する。これを利用できはしないだろうか。

「言ってなかったけど、理を無力化するだけができることじゃない。あと二つできることがある。それらはね、理の書き換えと追加だよ」

 既存の理を書き換え、新たな理を生み出すことができる。理の削除は三つあるうちの権能の一つに過ぎない。

「ねぇ、セレディナ。私は魔女で、キミは吸血鬼だよね」

「ああ。そうだな。生まれながらの吸血鬼⋯⋯っておい、まさかお前」

「そのまさか。私たちの種族を決めているのだって理だ。理によって私たちの種族は変化する。⋯⋯種族関連全ての理の定義を、人間のものに書き換えるとどうなるだろうね?」
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