悪魔と委員長

幕間

　ますみ達と別れて程なくだった。
　警官に呼び止められた美琴は捜索願の対象者として保護された。
　そうなってみて美琴は自分が帰る場所が無い事を改めて思い知った。
　イーヴィスに両親に自分の事を忘れさせるように命じたからだ。

　久しぶりに見る実家は古い記憶の層の奥にあったかの様な懐かしさを覚えたが、この門をくぐっても自分の居場所では無いと思うと胸が詰まった。

　玄関が開く、見知った母親の顔が現れる、そして……。

「美琴！　」

　激しい抱擁、むせび泣く母親。

「美琴！美琴！美琴！　」

「お　お母さん……　お母さんっ！　」

　なぜ自分の事を覚えているのかなどどうでも良くなった。ただ美琴は母親にしがみついて泣いた。

　そうだ、両親は美琴の記憶を失った、しかし部屋に残る数々の娘が存在していた証が違和感を持たせないはずは無い。そして娘そのものの記憶を失っても娘に与えたものや娘の為にした数々の事は覚えていた。
　歪な記憶が二人に娘が存在していたのではないかと言う仮説を与えた。
　裏付ける証拠はいくらでもあった。忘れさせられた記憶は彼ら自身によって取り戻されて行っていたのだ。

「ごめんなさい美琴！ごめんなさい！　」

「もう良いのお母さん、天使が……　天使達が私を救ってくれたのよ」