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死闘
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激しいラップ音が響き渡る結界の中で二柱の悪魔が異様な眼光を放ち合っていた。もう始まっているのだ。
両者の額には深い皺が刻まれ、向けられたら石になってしまうのではないかと思う程の圧力を持った視線が放たれている。今まさに彼らはお互いを呪う魔眼をぶつけているのだ。
「お約束の無いあなたに勝ち目はないってわかっているでしょ?あのお兄ちゃんの魂はなかなかのものよ、あなたを圧倒するには過剰なくらいにね。大人しく散ってくれるなら苦しめたりしないわ」
血の色の悪魔の言葉に漆黒の悪魔はかもなと答えた。
「癪だが俺とお前の実力は本来さほど変わらない、そこにお前だけ契約の力が載ったとなれば勝負は見えてる」
「そうよ、あきらめて」
「言ったろ?お前だけ契約していたらってな」
イーヴィスの口角が上がった。
「お姉ちゃんは最後の契約をしたのよ。残りの魂を全部使ってあなたに帰れとね」
だがエスレフェスは視線を放さずにゆっくり首を振った。
「違うな、残り全部ではない、残ってる魂のすべてだ」
イーヴィスは片方の眉を上げた。
「何が違うの」
漆黒の悪魔はにやりとした。
「おい小娘!弟の魂を救いたいか」
なぜそんな事を言い出したのかますみには理解できなかった。聞くまでもない事だ、この悪魔だってそれは理解しているはずだ。
「当たり前です! 」
「このすれっからしのかまとと悪魔をぶっ倒すのは小僧を助ける事になるか? 」
ますみは息を呑んだ。この悪魔が言う意味が理解できた。
「もちろんです」
「確認するぞ。西野ますみ、俺がクソイーヴィスを殺っちまうのは西野かなたを救う事だと思うか? 」
ますみは前のめりになって叫んだ。
「思います! 」
エスレフェスは高笑いした。
「ハハハハハハハ!今更命を奪うのは駄目だとか抜かしても無駄だぞ小娘!契約に他を殺すななんて含まれていないからな!それから付け加えて置く、お前は殺せなどと一言も言っていない、これは俺の判断だ! 」
イーヴィスは明らかに力を増すエスレフェスを感じた。
「どういう事?もう契約なんてできないはずよ」
「何言ってんだ覗き魔。見ていたんだろ? 」
漆黒の悪魔はすらりと羊皮紙を取り出した。それは土石流から引き揚げられたかなたが蘇生した後にますみが署名したものだった。
「契約は有効だ。そして帰還の契約より先のもの、つまり優先て事だ」
漆黒の悪魔の体がみるみる膨れ上がる。
小洒落たスーツははじけ飛び筋骨隆々の体が露になる、肘から先は猛禽の脚の様で太くて鋭利な刃の様な爪が伸び、下半身はますみが見た事の無い爪の張った獣の脚に、首には獅子の鬣が伸び、その顔は険しい狼のそれとなった、そしてその頭には枝分かれした巨大な鹿の角が戴かれた。
「正体を現したわね」
イーヴィスの体にも変化が現れた。
ドレスの裾が驚く程伸び、幼かった姿は成人した女性にみるみる変わって行った。その腕は人間の比率では考えられない長さで、そして表面は羽毛の様に見える鱗がびっしりと並んでいた。そして背中からも白い腕が何本も放射状に長く伸びていた。
だがイーヴィスの体が膨れ上がっていく途中にその左胸及びそこに繋がった腕が血しぶきを上げて弾け飛び、床に雨のように降り注いだ。
ますみが思わずかなたの目をふさぐ。
圧勝に見えた黒き獣は血に濡れた爪を掲げたまま腹部に大穴を開けられていた。そして未だ突っ込まれたままの血色の悪魔の腕は相手から臓物を引きずり出そうと敵の体内を鋭利な爪で引っ掻き回し血液をまき散らしていた。
「かなた!見てはなりません」
自分も目を背けつつますみは漏らした。
獣は悲鳴すら上げず相手を見据え、口角を上げる。
獣の腹に開いた大きな傷口は牙を突き出し突っ込まれていた長い腕を噛み砕き、バリバリと音を立てた。
両腕をもがれた赤い悪魔は顎を外した蛇の様にかっと口を開き甲高い声を上げた。それは悲鳴などでは無かった。
屈強な獣の体が圧し飛ばされる、壁にじりじり押し付けられる。指向性を持たされたの強力な音波が感覚器を狂わせ体毛を燃やす。
その間にイーヴィスの両腕は徐々に再生されて行った。
「黙れ」
低い一言がエスレフェスから漏れるとイーヴィスの声は急に枯渇した。
血色の悪魔がうろたえた一瞬のうちに彼女の背後方向にある壁が燃える、違う、燃えていたエスレフェスの体毛が突き刺さっているのだ。
まるで目の不規則なネットフェンスの様にすかすかに体をえぐられたイーヴィスの姿がそこにあった。そしてそれは砂の様に崩れた。
だがその砂は床まで落ちる事無く耳障りな羽音を立てて黒い獣に襲い掛かり、触れた部分をごそりとえぐるとその体内に侵入し喰い散らかし始めた。
獣の体のあちこちから血飛沫が上がっていたが、やがて彼は泥人形の様に崩れ刺激臭を放つ液体に変わった。その中に閉じ込められ蠢く蟲達は体を溶かされながらも発熱して周囲を蒸発させると幾らかがそこから抜け出し再び血色のドレス姿に集まって行った。
明確な意思を持った床の液体がドレスの悪魔に飛び掛かると次の瞬間それは巨大な獣に戻っていた。
伸ばされた鈎爪が女の顔に喰い込みそのまま圧砕する。だが飛び散る脳漿がその腕に粘土の様に絡みつくとその動きを操り獣自身の喉を貫かせた。
両者がほぼ同時にばたりと倒れる。だが直後に何事も無かったかの様に立ち上がった。
イーヴィスの頭が再生するとエスレフェスの首も治っていた。
「あったまって来たな」
「しつこい男は嫌いよ」
一呼吸の間の後イーヴィスの体中で青い発火が起こり、エスレフェスの全身は雷の網が締め上げた。
肉が焼け爛れて行くままにイーヴィスは言った。
「逃れられないわ」
高電圧に体表をはじき飛ばされながらエスレフェスは答えた。
「焼け焦げろ」
悪魔は本来霊的な存在だ、それゆえ肉体を破壊されようと死滅することは無い。だから悪魔同士の戦いとは死を納得させる戦いでもあるのだ。
受肉している体を徹底的に痛めつけて疑似的に死を感じさせる事もあれば、絶対に勝てないと精神に刻み込む事もある。それはどちらも霊的に消耗させる側面を持つからだ。完全に負けを認めた時、生存を諦めた時に悪魔は消滅する。
悪魔の能力が高ければ高い程明瞭に肉体へのダメージを相手に実感させる事が出来、また逆に受けたダメージを無かった事としてしまったり、修復する事さえできる。
呪いと同様いわばイメージの押し付け合いの戦いなのだ。
変幻自在な攻撃も元々魔力を持っていたり、因果を操る事が出来たりする能力があるからでもあるが、明確にその状態を意識する事で成り立っている。
蟲の群体に変われたイーヴィスが顔を掴まれるなどと言う事が起こったのは虚を突いた事もあり蟲に変わってエスレフェスの手から逃れると言うイーヴィスの思い描いたイメージよりもイーヴィスの顔を掴んで握り潰すと言うエスレフェスのイメージの方が明確かつ鮮明で強く、そしてそれを押し付ける事でイーヴィスにも実感させた結果起こった事だった。
爛れたイーヴィスの顔にヒビが入り、その体が炎の中で崩れて行く。
身体を支える様に四肢を着き、そしてそのままそれは動かなくなった。
黒い獣は縛る雷撃の網を無理やり引きちぎるとそれを丸めて炎の中に残る真っ黒な焼け焦げに向かって投げつけた。
刹那、上空に飛び出す赤い影。一回り大きくなったイーヴィスは礼拝堂の天井に張り付きエスレフェスを見下ろしていた。
「脱皮とはよ。蟲かお前は」
「失礼ね」
血色のドレスが翻り、常軌を逸した数の剣がずらりと並ぶ。
それは見る間に天井いっぱいに及んだ。
「大盤振る舞いじゃないか」
床から伸びる様に獣の周りに槍が次々と現れ、それは敷地いっぱいに及んだ。
「行け」
「貫け」
派手な破裂音を立てて一斉に武器が放たれた。エンチャントされたそれらは衝撃波でお互いを邪魔し合う事も無く自由に軌道を変え対象に向かった。もはやそこに物理法則は無かった。
刃と刃を押し付けつば競り合いを始める者や、互いを打ち落とそうとぶつかり合ってドッグファイトを行う者、主を守る為に攻撃者の軌道をそらしたり弾く者、他の者に隠れて本懐を遂げようとする者など集団戦が始まった。
礼拝堂中に響く金属音にますみは背筋を凍らせた。
戦っているのは悪魔二柱だけのはず、結界の中なのに援軍が来たのだろうか。
この場には悪魔がひしめき合っているのだろうか。
何かあっては困ると弟に覆いかぶさりながらますみはより強く腕を絡めた。
「お姉ちゃん、どっちが勝ってるの? 」
かなたの声にますみは胸を痛める。
お互いを救う為に争う事になった、しかもその代理が悪魔なのだ。
これまで信心深く過ごして来た二人が悪魔の力を使って争い合う事になるなんてどんな皮肉だと言うのだ。
ますみはどちらが優勢なのか確かめる事も無くただ弟の名を呼び自分の体に押し付けた。
「姉はあなたと争いたいと思った事など一度もないのです」
「俺だってだよ。お姉ちゃんはいつも正しい。これは俺の最後のわがままなんだ」
「わがままは許しませんよかなた。姉にはかなたを立派に育てる責任があるのです」
かなたは自ら額を押し付けた。
「出来の悪い弟でごめんね……」
「何を言うのですかなた。あなたは姉にはもったいない程素敵な子です。だからあなたの未来は閉ざされてはならないのです。こんな事をさせた姉を許して下さい」
剣の何振りかがエスレフェスをかすめるが、黒い獣は次々それを弾き返していた、ただそれらはそこで動きを止める事はしなかった。
何度弾かれても壁や床に刺さろうともそこから再び襲って来るのだ。
それはイーヴィスにも同様だった。エスレフェスの槍は身軽にかわす悪魔を追いかけ、その爪でへし折られようが曲げられようがしつこくその命を狙い続けた。
その混戦の中、エスレフェスの背後の床から、そしてイーヴィスの背後の天井から、それぞれひときわ大きな剣と槍が突如現れて突き出した。
黒い獣の体は鋼に変わってそれを弾き、赤い悪魔は背中に延びた腕で掴み取った。
「どうした、もう痛いのは嫌なのか? 」
「あなたこそ傷を受けたくない様ね」
お互いの修復能力ゆえ短期決戦が出来なかった両者は相手を押し切るだけの攻撃が必要だと理解していた。その為には短期間で行うには莫大な負担を要する肉体の修復はあまり効率的ではないと判断したのだ。
相手に決定的なダメージを与えた時に修復が追い付かない程の追い打ちをかける為には余力を残しておかなくてはならない。逆にそのダメージを受けてしまった場合、やはり追撃を凌駕する修復力を残しておく必要もあった。理想的なのは余力を残して相手を消耗させる事だ。
やはりノーガードで殴り合う事は出来ない。
立ち上がりに強引に勝負を決めたいと思っていた両者だったが、結局お互いが想定していた通りの展開になってしまった。
エスレフェスが手を突き出すとそれは宙空に吸い込まれ、それを戻した時には巨大な戦斧が握られていた。そしてその刃先に火炎の息を吐きかけるとそれはごうごうと音を立てて燃え上がる刃と変わった。
それを見たイーヴィスはスカートの裾から細身の剣を取り出し、刀身に口づけする。するとそれは鈍く輝き、振るった先に沿って細氷が散った。
槍の軍隊と共に宙に舞い上がる黒い獣に血色の悪魔は剣の軍勢を率いて飛び込んだ。
振るわれる炎の斧は身軽なイーヴィスをかすめたが、その熱は触れた髪を炎上させ、ドレスにも燃え移りかけたが近くの剣が主の髪を切り飛ばしそのまま敵の目を狙った。
その剣を飛来した槍が弾き、さらに敵を貫こうとする。
イーヴィスは背中の腕に握った短剣で狙って来る槍を薙ぎ払い、その回転の勢いを乗せて氷の刃は獣の喉に深く突き出された。
所が黒き悪魔は恐ろしく敏感に察知しついと体を傾けそれを逸らすと近づいた女の頭を左手で掴み、したたかに額をぶつけた。
硬いものが潰れる音が響いたが、二度それが行われる前に血色の悪魔は強引に体を引き離す。掴まれていた髪がぶちぶちと千切れて無様に散った。
間合いが広がったその瞬間、燃え盛る炎は再び血色の悪魔に襲い掛かった。
頭に、腰に、勢いが止まらぬよう円弧を描くそれは炎の渦の様に見えた。
イーヴィスは一度距離を取り、吐き気を覚えながら頭蓋と前頭葉を修復した。
炎の竜巻は逃がさんとばかりに間合いを詰めて来る。所がそれはイーヴィスにとってはさほど脅威にはならなかった。体の大きな獣が大きな武器を振るえばその勢いを止める事がそのまま弱点になる。だからむやみに止められない、止められなければ予想しやすい軌道を描くのだ。取り回しの軽い武器にとっては付け入りやすい隙と言える。当たらない距離で控え、一気に間合いを詰める事もイーヴィスなら可能だ。
上段に振るわれた一撃をかいくぐると氷の刃は腕によって出来た相手の死角から脇に向けて電の様に突き出されていた。
全く見えない位置からの細い得物での突きと言う知覚しにくい攻撃。それが決まる寸前イーヴィスの体は強靭な脚に蹴り飛ばされていた。即座に槍が回り込むが剣が振り払った。
エスレフェスにしてみれは見える所に攻撃が無いのなら見えない所に来るのは当然だという考えだった。
「レディを蹴るなんて最低」
「レディに謝罪しろ」
眉を寄せる血色の悪魔は細身の剣を振りかざし、次の瞬間黒い獣の喉や心臓など急所に向かって神速の突きを連撃で放っていた。
エスレフェスは斧の側面を盾にしかろうじて防ぐが、得物の取り回し易さでは斧は細身の剣にはかなわず攻撃に転じられない、前進されながらでは距離を取る事も出来ない。そしてそれに気を取られた隙にイーヴィスの背中の腕が短剣を振るった。
目を狙うその二本の刃に寸前で気づき角で絡めると遠くへ弾く、所が短剣は空中で向きを変え、背後を回って首筋に向けて突進して来た。
斧をくぐって氷の刃が迫る、背後から別々の軌道で短剣が襲う、エスレフェスは斧をめいっぱい振った。
頭部に迫る炎の刃を恐れ、イーヴィスは攻撃より回避を優先した。だがその剣は急所を諦めただけで斧を振るう腕に突き刺された。
丸太のような右腕が一瞬で凍り付き、エスレフェスの激しい動きに連動してあっけなく砕け、斧は勢いのまま飛んで行って刺さった壁を焼き始めた。
追撃とばかり飛んできた短剣は強引に左腕で叩き落すとそれ以上は追ってこなかったが、盾として使っていた斧を失ったこの期をイーヴィスは逃しはしなかった。心臓に最短距離で突き出される氷の刃、それは音もなく狙い通りに突き刺さった。
「うあ……」
仰け反って落下するイーヴィスの左半身は凍り付いていた。
「あ~あ、もう少し上手く行くもんだと思ったが」
エスレフェスの心臓辺りを覆っていた獅子の鬣の中から彼はそれを取り出した。赤いドレスを着たビスクドール、その左脇の辺りに深い刺し傷が出来ている。相手の髪から造った呪詛人形だ。エスレフェスがその腕をむしり取ると床に這いつくばっている悪魔の凍り付いた腕が一瞬ではじけ飛んだ。
「誘導したのね」
「お株を奪ったな」
イーヴィスが残った手を広げると辺りの塵が集まってその中にエスレフェスそっくりの人形が出来上がった。が、次の瞬間それは遠くに跳ね飛ばされた。
黒い獣が手元の人形を動かして遊んでいる。
「呪詛人形なんてのはよ、見えないとこでやるもんだ」
「そうね」
イーヴィスは自分に似せた人形を凝視し、すっと息を吸い込んだ。
それを観止めたエスレフェスは手にしていたものを手の中で灰にした。宿っていたものが抜けてしまったからだ。
黒い獣は倒れている相手を見下ろした。するとイーヴィスのいる周りの床から次々と腕が伸び彼女を拘束した。
槍と戦っていた剣達がどっと押し寄せて斬り払おうとするが、腕は次々現れてやって来る剣さえも捕まえた。
「小僧の魂は確かに上玉だ、だが小娘のそれにはかなわない。素直で真っすぐだが、愛する対象が傾いているからな」
「見くびらないで。たとえ崇高な魂の契約であっても所詮は一部でしかない。丸々そろった魂と、九割九分の魂では意味が全く違うわ」
エスレフェスは目を細めた。腕が再生して行く。
イーヴィスの体は再生していなかったがその髪がどんどん伸び、あたりの腕に絡まって行った。
「諦めた訳じゃあるまいな」
エスレフェスの言葉にイーヴィスは口角を上げた。
「当然よ」
イーヴィスが微笑みを浮かべると彼女や剣を拘束していた腕が枯れ木の如く痩せ細り灰の様に散った。
エスレフェスの槍が一斉に襲い掛かる。だがそれは竜巻の如く跳ねあがった大量の髪に巻き取られ、どれ一つ届く事無く力を失っては地に落ちた。
「ご馳走様」
今度はイーヴィスの剣達がエスレフェスを取り囲む。
「来い」
漆黒の悪魔の言葉と共に刃は前後左右上下、あらゆる方向から死角なしに一斉に襲い掛かった。
輝くエスレフェス。そこに突撃した剣は彼に触れる先からバターの様に溶けて雫となって落ちるとそこで床を焼いた。
雨と降る溶解した鉄を恐るべき息吹で吹き飛ばしイーヴィスは敵を見上げた。髪の長さを戻しつつ凍る半身と失った腕を再生させゆっくりと立ち上がる。
ますみの契約が上乗せされるなどと思っていなかった。そうでなければエスレフェスはここまで厄介ではなかったはずだ。事も無く相手を打ち倒す事が出来たはずだった。こんな面倒な事になると分かっていたらもう少し下準備をしていたのに。
頭上の獣が手を伸ばすと壁で燃えていた斧が彼に戻り、その手の中で姿をみるみる変え今度は槍になった。
イーヴィスもまた、自分の得物をその手に収め、それを当たり前の様に二振りに増やし両手に携えた。
姉の腕の中で、かなたは尋ねてみた。
「俺とお姉ちゃんは今、戦っているのかな。けんかしているのかな」
「ちがいます、かなた。そんな事を言わないで下さい」
弟がどれほど自分を大切に思っているのかはもう明白だ、この悪魔の戦いがそれを示している。それほど大切に思う相手と喧嘩をしているなんて思わせたくない。
「だったら今戦っているのは何なのかな……」
「あれは姉の弱さです。姉が弱かったからあなたにこうさせてしまったのです」
かなたはますみの腕の中から顔を上げた。
「お姉ちゃんは弱くないよ。ずっと一人で大人達相手に俺を守って来てくれたんだから。弱いのは俺さ、お姉ちゃんを支えられなかった、守れなかった」
弟の真っすぐな瞳を受け、ますみは涙をにじませた。
「何を言うのですかなた、姉は何度もあなたに救われたから立っていられたのです。一番辛い時にあなたは一番側にいてくれました。最後の救いになってくれました。どんなに頼りになった事か」
そこでますみは顔つきを変えた。
「ですがかなた、今度ばかりは姉の犠牲にするわけにはいきません」
今度はかなたが眉を寄せた。
「犠牲になって来たのはお姉ちゃんじゃないか!俺を馬鹿にさせないために、生活で不便をさせないために、子供らしい事ほとんどしないでずっと人生使って来たじゃないか! 」
ますみは大きくかぶりを振った。
「そんな風に考えていたのですね。それは違います、かなた。姉は喜んでしていたのですよ。言葉にはうまくできませんが…… 姉はかなたが微笑むのが喜ばしかったのです。かなたは言ってくれました。お姉ちゃんは自慢だと、カレーライスが美味しいと、手袋があったかいと、あなたの言葉は一つ一つが姉の宝物なのです」
「俺の宝物はお姉ちゃんそのものだよ!それを俺から取り上げないでよ! 」
弟のまなじりからこぼれる雫がますみの胸を締め付ける。この子を不幸せにだけはしたくない。
「姉はどこに行ってもかなたを思っています。いつもですよ」
かなたは涙をぬぐうと身を離し、すっと立ち上がった。
そして結界の向こうに繰り広げられている悪魔同士の戦いを見る。
燃え盛る何かを振り回す漆黒の獣と細氷をまき散らしながら踊る血色の女。
どちらの動きも常軌を逸していて何が行われているのかかなたの目では追う事が出来ない。
瞬時に離れた場所に移動したり、宙を飛びまわったり、ただこのやたら広く拡張された礼拝堂内にどこでしたのか分からない激突音が繰り返し反響していた。
かなたは必死に言うべき対象を捉え、大声を叩きつけた。
「何してるんだイーヴィス!この無能悪魔!とっととそいつをやっつけろ! 」
漆黒の悪魔の槍を払いながらイーヴィスは不服そうに眉を寄せたがエスレフェスは笑った。
「言ってやるなってとこだな」
エスレフェスの目の前を赤い布が遮る。イーヴィスの裾から伸びたそれは見る間に顔に絡みつき呼吸をも阻害した。
しかもその布が絡みつく前にイーヴィスは俊敏にエスレフェスの槍をかいくぐり自分の距離に持ち込んでいた。
中枢線をはじめ、敵の急所ががら空きになっている。
二振りの剣を突き立てる狙いを定めた時、彼女の視界の隅に意外な物が映った。
血色のドレスのビスクドール、先ほどとは別の物!獣の左手が放ったそれは今まさに炎の槍の先に貫かれようとしていた。
どちらが早い?
その躊躇がイーヴィスの動きをわずかに止めた。エスレフェスはそれを逃さず顔を覆う布を掴むと力任せにイーヴィスごと振り回す。
貫かなかった?人形を?
それに気づいた時屈辱の余り彼女はぎりりと歯ぎしりした。フェイクだったのだ。
容赦なく床に叩きつけられた血色の悪魔は背中側の腕が何本かあらぬ方向に曲がり血を吐いてむせ、すぐには起き上がらなかった。
どうやら自分の方がいくらか余裕が出て来たと思ったエスレフェスはそろそろ畳みかける事を考え始めた。
「よう、イーヴィス。お前は契約を果たすことは出来ない。それなら無かった事にしたらどうだ」
契約解除、かなたの魂は手に入らなくなるが既に美琴の魂は入手済みだ。
エスレフェスを倒すのは彼が他所から戦う力を受け取らずに対峙した場合を想定していた。それならば労せずに果たせたのだ。ここまで戦ってみた所わずかにだが分が悪く思える、力量の差と言うよりも場数の差と言うものだろうか。もしかなたの魂を手放せばこの黒い悪魔はこれ以上何かをしてくる事は無いだろう。
だがイーヴィスも悪魔だった。
「ねぇお兄ちゃん、もしあたしとしたお約束、無かった事にしてって言ったらそうしたい? 」
ますみは即座に血色の悪魔に答えた。
「すぐにそうしなさい! 」
所がそれ以上の声がそれを遮った。
「ふざけるなよ!こっちはそんな覚悟でしたんじゃないんだ!お前も命位賭けろ! 」
イーヴィスは満足げに微笑む。
「そうよね」
悪魔である以上契約を途中で放棄するなんて事はプライドが許さない。
「かなた、契約を解除なさい! 」
「あいつは返す気なんて無いよ。俺もお姉ちゃんの魂を諦めない。お姉ちゃんの言いつけでもこれだけは譲れない」
そう言った後かなたはますみの手を取って自分の頬にあてた。
「ぶってよ、俺はそれだけの事をしてる。お姉ちゃんはその責任を果たさなくちゃ。俺を罰してよ、お姉ちゃんが」
ますみは泣き顔とも非難ともとれる表情でした唇を噛んでいた。
「姉は……」
「わかってるよ、お姉ちゃんが俺に手を上げた事は一度もない。でもこれは一線を越えているよ。悪い事をしたんだ、お姉ちゃん。俺はお姉ちゃんの子だから」
ますみはかなたの手を取り、そして自分の頬にあてた。
「ならばかなた、それをしたのは姉が先です。姉にはあなたを非難する資格などありませんでした。姉があなたに罪を犯させたのです」
そのやり取りを見ていたエスレフェスが横やりを入れた。
「たらたら演劇なんてやってんじゃねぇ!続けて良いんだな!イーヴィス! 」
「もちろんよ」
言葉が終わらぬうちにイーヴィスの居た場所に炎の槍は突き刺さっていた。
予測していた事とは言え、イーヴィスは肝を冷やし、追撃に備え二度三度変則的に場所を移った。その度に居た辺りに爆発が起きたり火柱が上がったりした。
血色の悪魔は足を止める事無く唇に指先を添えて細く息を吐く。その先で出来上がった手槍ほどもある氷の針が次々黒い獣に放たれる。
漆黒の悪魔の対処は明瞭だった。飛んで来る氷の槍を極めて強引に拳で打ち砕いたのだ。だがイーヴィスは止めない。氷の針に吹雪を混ぜて黒い獣に吐き続けた。
それが功を奏したのか獣の拳は凍て付き、霜が張り始めた。
「ああ、めんどくせぇ! 」
狼の口が開かれると紅蓮の炎が渦となって吐き出された。それは飛来する氷も吹雪も圧倒してイーヴィスを燃やした。
「イーヴィス! 」
かなたの声も届かない。
エスレフェスは血色の悪魔が炎上していても猛火を吐くのを止めようとしない。
「おいイーヴィス!しっかりしろ!お前が…… お前が倒れたら…… お姉ちゃんは……! 」
「かなた……」
体を震わせる弟の姿にかける言葉をますみは思いつかなかった。
「イーヴィス、まだ生きているんだろ?そうだよな。こんな程度で終わるなんて俺は許さないからな」
かなたが魔法円から外に踏み出す。
「かなた! 」
少年は今、なんとしても契約した悪魔を勝たせなくてはとそう考えていた。
そして彼はその手段を知っていた。
両者の額には深い皺が刻まれ、向けられたら石になってしまうのではないかと思う程の圧力を持った視線が放たれている。今まさに彼らはお互いを呪う魔眼をぶつけているのだ。
「お約束の無いあなたに勝ち目はないってわかっているでしょ?あのお兄ちゃんの魂はなかなかのものよ、あなたを圧倒するには過剰なくらいにね。大人しく散ってくれるなら苦しめたりしないわ」
血の色の悪魔の言葉に漆黒の悪魔はかもなと答えた。
「癪だが俺とお前の実力は本来さほど変わらない、そこにお前だけ契約の力が載ったとなれば勝負は見えてる」
「そうよ、あきらめて」
「言ったろ?お前だけ契約していたらってな」
イーヴィスの口角が上がった。
「お姉ちゃんは最後の契約をしたのよ。残りの魂を全部使ってあなたに帰れとね」
だがエスレフェスは視線を放さずにゆっくり首を振った。
「違うな、残り全部ではない、残ってる魂のすべてだ」
イーヴィスは片方の眉を上げた。
「何が違うの」
漆黒の悪魔はにやりとした。
「おい小娘!弟の魂を救いたいか」
なぜそんな事を言い出したのかますみには理解できなかった。聞くまでもない事だ、この悪魔だってそれは理解しているはずだ。
「当たり前です! 」
「このすれっからしのかまとと悪魔をぶっ倒すのは小僧を助ける事になるか? 」
ますみは息を呑んだ。この悪魔が言う意味が理解できた。
「もちろんです」
「確認するぞ。西野ますみ、俺がクソイーヴィスを殺っちまうのは西野かなたを救う事だと思うか? 」
ますみは前のめりになって叫んだ。
「思います! 」
エスレフェスは高笑いした。
「ハハハハハハハ!今更命を奪うのは駄目だとか抜かしても無駄だぞ小娘!契約に他を殺すななんて含まれていないからな!それから付け加えて置く、お前は殺せなどと一言も言っていない、これは俺の判断だ! 」
イーヴィスは明らかに力を増すエスレフェスを感じた。
「どういう事?もう契約なんてできないはずよ」
「何言ってんだ覗き魔。見ていたんだろ? 」
漆黒の悪魔はすらりと羊皮紙を取り出した。それは土石流から引き揚げられたかなたが蘇生した後にますみが署名したものだった。
「契約は有効だ。そして帰還の契約より先のもの、つまり優先て事だ」
漆黒の悪魔の体がみるみる膨れ上がる。
小洒落たスーツははじけ飛び筋骨隆々の体が露になる、肘から先は猛禽の脚の様で太くて鋭利な刃の様な爪が伸び、下半身はますみが見た事の無い爪の張った獣の脚に、首には獅子の鬣が伸び、その顔は険しい狼のそれとなった、そしてその頭には枝分かれした巨大な鹿の角が戴かれた。
「正体を現したわね」
イーヴィスの体にも変化が現れた。
ドレスの裾が驚く程伸び、幼かった姿は成人した女性にみるみる変わって行った。その腕は人間の比率では考えられない長さで、そして表面は羽毛の様に見える鱗がびっしりと並んでいた。そして背中からも白い腕が何本も放射状に長く伸びていた。
だがイーヴィスの体が膨れ上がっていく途中にその左胸及びそこに繋がった腕が血しぶきを上げて弾け飛び、床に雨のように降り注いだ。
ますみが思わずかなたの目をふさぐ。
圧勝に見えた黒き獣は血に濡れた爪を掲げたまま腹部に大穴を開けられていた。そして未だ突っ込まれたままの血色の悪魔の腕は相手から臓物を引きずり出そうと敵の体内を鋭利な爪で引っ掻き回し血液をまき散らしていた。
「かなた!見てはなりません」
自分も目を背けつつますみは漏らした。
獣は悲鳴すら上げず相手を見据え、口角を上げる。
獣の腹に開いた大きな傷口は牙を突き出し突っ込まれていた長い腕を噛み砕き、バリバリと音を立てた。
両腕をもがれた赤い悪魔は顎を外した蛇の様にかっと口を開き甲高い声を上げた。それは悲鳴などでは無かった。
屈強な獣の体が圧し飛ばされる、壁にじりじり押し付けられる。指向性を持たされたの強力な音波が感覚器を狂わせ体毛を燃やす。
その間にイーヴィスの両腕は徐々に再生されて行った。
「黙れ」
低い一言がエスレフェスから漏れるとイーヴィスの声は急に枯渇した。
血色の悪魔がうろたえた一瞬のうちに彼女の背後方向にある壁が燃える、違う、燃えていたエスレフェスの体毛が突き刺さっているのだ。
まるで目の不規則なネットフェンスの様にすかすかに体をえぐられたイーヴィスの姿がそこにあった。そしてそれは砂の様に崩れた。
だがその砂は床まで落ちる事無く耳障りな羽音を立てて黒い獣に襲い掛かり、触れた部分をごそりとえぐるとその体内に侵入し喰い散らかし始めた。
獣の体のあちこちから血飛沫が上がっていたが、やがて彼は泥人形の様に崩れ刺激臭を放つ液体に変わった。その中に閉じ込められ蠢く蟲達は体を溶かされながらも発熱して周囲を蒸発させると幾らかがそこから抜け出し再び血色のドレス姿に集まって行った。
明確な意思を持った床の液体がドレスの悪魔に飛び掛かると次の瞬間それは巨大な獣に戻っていた。
伸ばされた鈎爪が女の顔に喰い込みそのまま圧砕する。だが飛び散る脳漿がその腕に粘土の様に絡みつくとその動きを操り獣自身の喉を貫かせた。
両者がほぼ同時にばたりと倒れる。だが直後に何事も無かったかの様に立ち上がった。
イーヴィスの頭が再生するとエスレフェスの首も治っていた。
「あったまって来たな」
「しつこい男は嫌いよ」
一呼吸の間の後イーヴィスの体中で青い発火が起こり、エスレフェスの全身は雷の網が締め上げた。
肉が焼け爛れて行くままにイーヴィスは言った。
「逃れられないわ」
高電圧に体表をはじき飛ばされながらエスレフェスは答えた。
「焼け焦げろ」
悪魔は本来霊的な存在だ、それゆえ肉体を破壊されようと死滅することは無い。だから悪魔同士の戦いとは死を納得させる戦いでもあるのだ。
受肉している体を徹底的に痛めつけて疑似的に死を感じさせる事もあれば、絶対に勝てないと精神に刻み込む事もある。それはどちらも霊的に消耗させる側面を持つからだ。完全に負けを認めた時、生存を諦めた時に悪魔は消滅する。
悪魔の能力が高ければ高い程明瞭に肉体へのダメージを相手に実感させる事が出来、また逆に受けたダメージを無かった事としてしまったり、修復する事さえできる。
呪いと同様いわばイメージの押し付け合いの戦いなのだ。
変幻自在な攻撃も元々魔力を持っていたり、因果を操る事が出来たりする能力があるからでもあるが、明確にその状態を意識する事で成り立っている。
蟲の群体に変われたイーヴィスが顔を掴まれるなどと言う事が起こったのは虚を突いた事もあり蟲に変わってエスレフェスの手から逃れると言うイーヴィスの思い描いたイメージよりもイーヴィスの顔を掴んで握り潰すと言うエスレフェスのイメージの方が明確かつ鮮明で強く、そしてそれを押し付ける事でイーヴィスにも実感させた結果起こった事だった。
爛れたイーヴィスの顔にヒビが入り、その体が炎の中で崩れて行く。
身体を支える様に四肢を着き、そしてそのままそれは動かなくなった。
黒い獣は縛る雷撃の網を無理やり引きちぎるとそれを丸めて炎の中に残る真っ黒な焼け焦げに向かって投げつけた。
刹那、上空に飛び出す赤い影。一回り大きくなったイーヴィスは礼拝堂の天井に張り付きエスレフェスを見下ろしていた。
「脱皮とはよ。蟲かお前は」
「失礼ね」
血色のドレスが翻り、常軌を逸した数の剣がずらりと並ぶ。
それは見る間に天井いっぱいに及んだ。
「大盤振る舞いじゃないか」
床から伸びる様に獣の周りに槍が次々と現れ、それは敷地いっぱいに及んだ。
「行け」
「貫け」
派手な破裂音を立てて一斉に武器が放たれた。エンチャントされたそれらは衝撃波でお互いを邪魔し合う事も無く自由に軌道を変え対象に向かった。もはやそこに物理法則は無かった。
刃と刃を押し付けつば競り合いを始める者や、互いを打ち落とそうとぶつかり合ってドッグファイトを行う者、主を守る為に攻撃者の軌道をそらしたり弾く者、他の者に隠れて本懐を遂げようとする者など集団戦が始まった。
礼拝堂中に響く金属音にますみは背筋を凍らせた。
戦っているのは悪魔二柱だけのはず、結界の中なのに援軍が来たのだろうか。
この場には悪魔がひしめき合っているのだろうか。
何かあっては困ると弟に覆いかぶさりながらますみはより強く腕を絡めた。
「お姉ちゃん、どっちが勝ってるの? 」
かなたの声にますみは胸を痛める。
お互いを救う為に争う事になった、しかもその代理が悪魔なのだ。
これまで信心深く過ごして来た二人が悪魔の力を使って争い合う事になるなんてどんな皮肉だと言うのだ。
ますみはどちらが優勢なのか確かめる事も無くただ弟の名を呼び自分の体に押し付けた。
「姉はあなたと争いたいと思った事など一度もないのです」
「俺だってだよ。お姉ちゃんはいつも正しい。これは俺の最後のわがままなんだ」
「わがままは許しませんよかなた。姉にはかなたを立派に育てる責任があるのです」
かなたは自ら額を押し付けた。
「出来の悪い弟でごめんね……」
「何を言うのですかなた。あなたは姉にはもったいない程素敵な子です。だからあなたの未来は閉ざされてはならないのです。こんな事をさせた姉を許して下さい」
剣の何振りかがエスレフェスをかすめるが、黒い獣は次々それを弾き返していた、ただそれらはそこで動きを止める事はしなかった。
何度弾かれても壁や床に刺さろうともそこから再び襲って来るのだ。
それはイーヴィスにも同様だった。エスレフェスの槍は身軽にかわす悪魔を追いかけ、その爪でへし折られようが曲げられようがしつこくその命を狙い続けた。
その混戦の中、エスレフェスの背後の床から、そしてイーヴィスの背後の天井から、それぞれひときわ大きな剣と槍が突如現れて突き出した。
黒い獣の体は鋼に変わってそれを弾き、赤い悪魔は背中に延びた腕で掴み取った。
「どうした、もう痛いのは嫌なのか? 」
「あなたこそ傷を受けたくない様ね」
お互いの修復能力ゆえ短期決戦が出来なかった両者は相手を押し切るだけの攻撃が必要だと理解していた。その為には短期間で行うには莫大な負担を要する肉体の修復はあまり効率的ではないと判断したのだ。
相手に決定的なダメージを与えた時に修復が追い付かない程の追い打ちをかける為には余力を残しておかなくてはならない。逆にそのダメージを受けてしまった場合、やはり追撃を凌駕する修復力を残しておく必要もあった。理想的なのは余力を残して相手を消耗させる事だ。
やはりノーガードで殴り合う事は出来ない。
立ち上がりに強引に勝負を決めたいと思っていた両者だったが、結局お互いが想定していた通りの展開になってしまった。
エスレフェスが手を突き出すとそれは宙空に吸い込まれ、それを戻した時には巨大な戦斧が握られていた。そしてその刃先に火炎の息を吐きかけるとそれはごうごうと音を立てて燃え上がる刃と変わった。
それを見たイーヴィスはスカートの裾から細身の剣を取り出し、刀身に口づけする。するとそれは鈍く輝き、振るった先に沿って細氷が散った。
槍の軍隊と共に宙に舞い上がる黒い獣に血色の悪魔は剣の軍勢を率いて飛び込んだ。
振るわれる炎の斧は身軽なイーヴィスをかすめたが、その熱は触れた髪を炎上させ、ドレスにも燃え移りかけたが近くの剣が主の髪を切り飛ばしそのまま敵の目を狙った。
その剣を飛来した槍が弾き、さらに敵を貫こうとする。
イーヴィスは背中の腕に握った短剣で狙って来る槍を薙ぎ払い、その回転の勢いを乗せて氷の刃は獣の喉に深く突き出された。
所が黒き悪魔は恐ろしく敏感に察知しついと体を傾けそれを逸らすと近づいた女の頭を左手で掴み、したたかに額をぶつけた。
硬いものが潰れる音が響いたが、二度それが行われる前に血色の悪魔は強引に体を引き離す。掴まれていた髪がぶちぶちと千切れて無様に散った。
間合いが広がったその瞬間、燃え盛る炎は再び血色の悪魔に襲い掛かった。
頭に、腰に、勢いが止まらぬよう円弧を描くそれは炎の渦の様に見えた。
イーヴィスは一度距離を取り、吐き気を覚えながら頭蓋と前頭葉を修復した。
炎の竜巻は逃がさんとばかりに間合いを詰めて来る。所がそれはイーヴィスにとってはさほど脅威にはならなかった。体の大きな獣が大きな武器を振るえばその勢いを止める事がそのまま弱点になる。だからむやみに止められない、止められなければ予想しやすい軌道を描くのだ。取り回しの軽い武器にとっては付け入りやすい隙と言える。当たらない距離で控え、一気に間合いを詰める事もイーヴィスなら可能だ。
上段に振るわれた一撃をかいくぐると氷の刃は腕によって出来た相手の死角から脇に向けて電の様に突き出されていた。
全く見えない位置からの細い得物での突きと言う知覚しにくい攻撃。それが決まる寸前イーヴィスの体は強靭な脚に蹴り飛ばされていた。即座に槍が回り込むが剣が振り払った。
エスレフェスにしてみれは見える所に攻撃が無いのなら見えない所に来るのは当然だという考えだった。
「レディを蹴るなんて最低」
「レディに謝罪しろ」
眉を寄せる血色の悪魔は細身の剣を振りかざし、次の瞬間黒い獣の喉や心臓など急所に向かって神速の突きを連撃で放っていた。
エスレフェスは斧の側面を盾にしかろうじて防ぐが、得物の取り回し易さでは斧は細身の剣にはかなわず攻撃に転じられない、前進されながらでは距離を取る事も出来ない。そしてそれに気を取られた隙にイーヴィスの背中の腕が短剣を振るった。
目を狙うその二本の刃に寸前で気づき角で絡めると遠くへ弾く、所が短剣は空中で向きを変え、背後を回って首筋に向けて突進して来た。
斧をくぐって氷の刃が迫る、背後から別々の軌道で短剣が襲う、エスレフェスは斧をめいっぱい振った。
頭部に迫る炎の刃を恐れ、イーヴィスは攻撃より回避を優先した。だがその剣は急所を諦めただけで斧を振るう腕に突き刺された。
丸太のような右腕が一瞬で凍り付き、エスレフェスの激しい動きに連動してあっけなく砕け、斧は勢いのまま飛んで行って刺さった壁を焼き始めた。
追撃とばかり飛んできた短剣は強引に左腕で叩き落すとそれ以上は追ってこなかったが、盾として使っていた斧を失ったこの期をイーヴィスは逃しはしなかった。心臓に最短距離で突き出される氷の刃、それは音もなく狙い通りに突き刺さった。
「うあ……」
仰け反って落下するイーヴィスの左半身は凍り付いていた。
「あ~あ、もう少し上手く行くもんだと思ったが」
エスレフェスの心臓辺りを覆っていた獅子の鬣の中から彼はそれを取り出した。赤いドレスを着たビスクドール、その左脇の辺りに深い刺し傷が出来ている。相手の髪から造った呪詛人形だ。エスレフェスがその腕をむしり取ると床に這いつくばっている悪魔の凍り付いた腕が一瞬ではじけ飛んだ。
「誘導したのね」
「お株を奪ったな」
イーヴィスが残った手を広げると辺りの塵が集まってその中にエスレフェスそっくりの人形が出来上がった。が、次の瞬間それは遠くに跳ね飛ばされた。
黒い獣が手元の人形を動かして遊んでいる。
「呪詛人形なんてのはよ、見えないとこでやるもんだ」
「そうね」
イーヴィスは自分に似せた人形を凝視し、すっと息を吸い込んだ。
それを観止めたエスレフェスは手にしていたものを手の中で灰にした。宿っていたものが抜けてしまったからだ。
黒い獣は倒れている相手を見下ろした。するとイーヴィスのいる周りの床から次々と腕が伸び彼女を拘束した。
槍と戦っていた剣達がどっと押し寄せて斬り払おうとするが、腕は次々現れてやって来る剣さえも捕まえた。
「小僧の魂は確かに上玉だ、だが小娘のそれにはかなわない。素直で真っすぐだが、愛する対象が傾いているからな」
「見くびらないで。たとえ崇高な魂の契約であっても所詮は一部でしかない。丸々そろった魂と、九割九分の魂では意味が全く違うわ」
エスレフェスは目を細めた。腕が再生して行く。
イーヴィスの体は再生していなかったがその髪がどんどん伸び、あたりの腕に絡まって行った。
「諦めた訳じゃあるまいな」
エスレフェスの言葉にイーヴィスは口角を上げた。
「当然よ」
イーヴィスが微笑みを浮かべると彼女や剣を拘束していた腕が枯れ木の如く痩せ細り灰の様に散った。
エスレフェスの槍が一斉に襲い掛かる。だがそれは竜巻の如く跳ねあがった大量の髪に巻き取られ、どれ一つ届く事無く力を失っては地に落ちた。
「ご馳走様」
今度はイーヴィスの剣達がエスレフェスを取り囲む。
「来い」
漆黒の悪魔の言葉と共に刃は前後左右上下、あらゆる方向から死角なしに一斉に襲い掛かった。
輝くエスレフェス。そこに突撃した剣は彼に触れる先からバターの様に溶けて雫となって落ちるとそこで床を焼いた。
雨と降る溶解した鉄を恐るべき息吹で吹き飛ばしイーヴィスは敵を見上げた。髪の長さを戻しつつ凍る半身と失った腕を再生させゆっくりと立ち上がる。
ますみの契約が上乗せされるなどと思っていなかった。そうでなければエスレフェスはここまで厄介ではなかったはずだ。事も無く相手を打ち倒す事が出来たはずだった。こんな面倒な事になると分かっていたらもう少し下準備をしていたのに。
頭上の獣が手を伸ばすと壁で燃えていた斧が彼に戻り、その手の中で姿をみるみる変え今度は槍になった。
イーヴィスもまた、自分の得物をその手に収め、それを当たり前の様に二振りに増やし両手に携えた。
姉の腕の中で、かなたは尋ねてみた。
「俺とお姉ちゃんは今、戦っているのかな。けんかしているのかな」
「ちがいます、かなた。そんな事を言わないで下さい」
弟がどれほど自分を大切に思っているのかはもう明白だ、この悪魔の戦いがそれを示している。それほど大切に思う相手と喧嘩をしているなんて思わせたくない。
「だったら今戦っているのは何なのかな……」
「あれは姉の弱さです。姉が弱かったからあなたにこうさせてしまったのです」
かなたはますみの腕の中から顔を上げた。
「お姉ちゃんは弱くないよ。ずっと一人で大人達相手に俺を守って来てくれたんだから。弱いのは俺さ、お姉ちゃんを支えられなかった、守れなかった」
弟の真っすぐな瞳を受け、ますみは涙をにじませた。
「何を言うのですかなた、姉は何度もあなたに救われたから立っていられたのです。一番辛い時にあなたは一番側にいてくれました。最後の救いになってくれました。どんなに頼りになった事か」
そこでますみは顔つきを変えた。
「ですがかなた、今度ばかりは姉の犠牲にするわけにはいきません」
今度はかなたが眉を寄せた。
「犠牲になって来たのはお姉ちゃんじゃないか!俺を馬鹿にさせないために、生活で不便をさせないために、子供らしい事ほとんどしないでずっと人生使って来たじゃないか! 」
ますみは大きくかぶりを振った。
「そんな風に考えていたのですね。それは違います、かなた。姉は喜んでしていたのですよ。言葉にはうまくできませんが…… 姉はかなたが微笑むのが喜ばしかったのです。かなたは言ってくれました。お姉ちゃんは自慢だと、カレーライスが美味しいと、手袋があったかいと、あなたの言葉は一つ一つが姉の宝物なのです」
「俺の宝物はお姉ちゃんそのものだよ!それを俺から取り上げないでよ! 」
弟のまなじりからこぼれる雫がますみの胸を締め付ける。この子を不幸せにだけはしたくない。
「姉はどこに行ってもかなたを思っています。いつもですよ」
かなたは涙をぬぐうと身を離し、すっと立ち上がった。
そして結界の向こうに繰り広げられている悪魔同士の戦いを見る。
燃え盛る何かを振り回す漆黒の獣と細氷をまき散らしながら踊る血色の女。
どちらの動きも常軌を逸していて何が行われているのかかなたの目では追う事が出来ない。
瞬時に離れた場所に移動したり、宙を飛びまわったり、ただこのやたら広く拡張された礼拝堂内にどこでしたのか分からない激突音が繰り返し反響していた。
かなたは必死に言うべき対象を捉え、大声を叩きつけた。
「何してるんだイーヴィス!この無能悪魔!とっととそいつをやっつけろ! 」
漆黒の悪魔の槍を払いながらイーヴィスは不服そうに眉を寄せたがエスレフェスは笑った。
「言ってやるなってとこだな」
エスレフェスの目の前を赤い布が遮る。イーヴィスの裾から伸びたそれは見る間に顔に絡みつき呼吸をも阻害した。
しかもその布が絡みつく前にイーヴィスは俊敏にエスレフェスの槍をかいくぐり自分の距離に持ち込んでいた。
中枢線をはじめ、敵の急所ががら空きになっている。
二振りの剣を突き立てる狙いを定めた時、彼女の視界の隅に意外な物が映った。
血色のドレスのビスクドール、先ほどとは別の物!獣の左手が放ったそれは今まさに炎の槍の先に貫かれようとしていた。
どちらが早い?
その躊躇がイーヴィスの動きをわずかに止めた。エスレフェスはそれを逃さず顔を覆う布を掴むと力任せにイーヴィスごと振り回す。
貫かなかった?人形を?
それに気づいた時屈辱の余り彼女はぎりりと歯ぎしりした。フェイクだったのだ。
容赦なく床に叩きつけられた血色の悪魔は背中側の腕が何本かあらぬ方向に曲がり血を吐いてむせ、すぐには起き上がらなかった。
どうやら自分の方がいくらか余裕が出て来たと思ったエスレフェスはそろそろ畳みかける事を考え始めた。
「よう、イーヴィス。お前は契約を果たすことは出来ない。それなら無かった事にしたらどうだ」
契約解除、かなたの魂は手に入らなくなるが既に美琴の魂は入手済みだ。
エスレフェスを倒すのは彼が他所から戦う力を受け取らずに対峙した場合を想定していた。それならば労せずに果たせたのだ。ここまで戦ってみた所わずかにだが分が悪く思える、力量の差と言うよりも場数の差と言うものだろうか。もしかなたの魂を手放せばこの黒い悪魔はこれ以上何かをしてくる事は無いだろう。
だがイーヴィスも悪魔だった。
「ねぇお兄ちゃん、もしあたしとしたお約束、無かった事にしてって言ったらそうしたい? 」
ますみは即座に血色の悪魔に答えた。
「すぐにそうしなさい! 」
所がそれ以上の声がそれを遮った。
「ふざけるなよ!こっちはそんな覚悟でしたんじゃないんだ!お前も命位賭けろ! 」
イーヴィスは満足げに微笑む。
「そうよね」
悪魔である以上契約を途中で放棄するなんて事はプライドが許さない。
「かなた、契約を解除なさい! 」
「あいつは返す気なんて無いよ。俺もお姉ちゃんの魂を諦めない。お姉ちゃんの言いつけでもこれだけは譲れない」
そう言った後かなたはますみの手を取って自分の頬にあてた。
「ぶってよ、俺はそれだけの事をしてる。お姉ちゃんはその責任を果たさなくちゃ。俺を罰してよ、お姉ちゃんが」
ますみは泣き顔とも非難ともとれる表情でした唇を噛んでいた。
「姉は……」
「わかってるよ、お姉ちゃんが俺に手を上げた事は一度もない。でもこれは一線を越えているよ。悪い事をしたんだ、お姉ちゃん。俺はお姉ちゃんの子だから」
ますみはかなたの手を取り、そして自分の頬にあてた。
「ならばかなた、それをしたのは姉が先です。姉にはあなたを非難する資格などありませんでした。姉があなたに罪を犯させたのです」
そのやり取りを見ていたエスレフェスが横やりを入れた。
「たらたら演劇なんてやってんじゃねぇ!続けて良いんだな!イーヴィス! 」
「もちろんよ」
言葉が終わらぬうちにイーヴィスの居た場所に炎の槍は突き刺さっていた。
予測していた事とは言え、イーヴィスは肝を冷やし、追撃に備え二度三度変則的に場所を移った。その度に居た辺りに爆発が起きたり火柱が上がったりした。
血色の悪魔は足を止める事無く唇に指先を添えて細く息を吐く。その先で出来上がった手槍ほどもある氷の針が次々黒い獣に放たれる。
漆黒の悪魔の対処は明瞭だった。飛んで来る氷の槍を極めて強引に拳で打ち砕いたのだ。だがイーヴィスは止めない。氷の針に吹雪を混ぜて黒い獣に吐き続けた。
それが功を奏したのか獣の拳は凍て付き、霜が張り始めた。
「ああ、めんどくせぇ! 」
狼の口が開かれると紅蓮の炎が渦となって吐き出された。それは飛来する氷も吹雪も圧倒してイーヴィスを燃やした。
「イーヴィス! 」
かなたの声も届かない。
エスレフェスは血色の悪魔が炎上していても猛火を吐くのを止めようとしない。
「おいイーヴィス!しっかりしろ!お前が…… お前が倒れたら…… お姉ちゃんは……! 」
「かなた……」
体を震わせる弟の姿にかける言葉をますみは思いつかなかった。
「イーヴィス、まだ生きているんだろ?そうだよな。こんな程度で終わるなんて俺は許さないからな」
かなたが魔法円から外に踏み出す。
「かなた! 」
少年は今、なんとしても契約した悪魔を勝たせなくてはとそう考えていた。
そして彼はその手段を知っていた。
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