37 / 48
幕間
しおりを挟む
花火大会の夜、幼いかなたはますみに手を握られて人ごみの中を歩いていた。
会場近くへ行くにつれ混雑はひどくなり、背の高い大人達にに囲まれてしまうと周りは何も見えず、頭上のごく狭い空間に夜空が見えるだけでちいさなかなたはその圧迫感と暗さに不安を感じ、唯一頼りになる相手の手をより強く握った。
少し前に迷子になって怖い思いをしたことを思い出す。この手を放してしまったら自分はまた孤独の中に放り出されてしまう。それは小さなかなたにはとても恐ろしい事だった。
かなたの思いを感じてか否か、ますみの手がより強く握り返してくる。
それは痛くならない程度に、それでいて不安にならない様に、何も言っていないのにこの手は放しませんよと答えられたかのように思えた。
姉の顔を見上げてみると目が合った。不安な顔を向けていたのだろうか、ますみの顔はにこりと微笑んだ。それまでの怖さの一切が和らいで自分の表情ももほころんでいくのがわかる。
「おねーえちゃん」
小さな声で言ってみた。
「どうしました? 」
全身が干したての布団にくるまれる様なとても優しい声だ。
かなたはなんとなく姉の腕に両腕ですがりついた。
ますみの手がそっと髪を撫でてくれる。何も怖くなくなる。
「お姉ちゃん」
「ここに居ますよ。姉はいつもかなたのそばに居るのです」
「うん、俺もお姉ちゃんのそばに居る」
満足してかなたは身を離した。
繋いだ手があたたかくてやわらかくて、かなたはますみが居る事を心から幸せに思い感謝した。
会場近くへ行くにつれ混雑はひどくなり、背の高い大人達にに囲まれてしまうと周りは何も見えず、頭上のごく狭い空間に夜空が見えるだけでちいさなかなたはその圧迫感と暗さに不安を感じ、唯一頼りになる相手の手をより強く握った。
少し前に迷子になって怖い思いをしたことを思い出す。この手を放してしまったら自分はまた孤独の中に放り出されてしまう。それは小さなかなたにはとても恐ろしい事だった。
かなたの思いを感じてか否か、ますみの手がより強く握り返してくる。
それは痛くならない程度に、それでいて不安にならない様に、何も言っていないのにこの手は放しませんよと答えられたかのように思えた。
姉の顔を見上げてみると目が合った。不安な顔を向けていたのだろうか、ますみの顔はにこりと微笑んだ。それまでの怖さの一切が和らいで自分の表情ももほころんでいくのがわかる。
「おねーえちゃん」
小さな声で言ってみた。
「どうしました? 」
全身が干したての布団にくるまれる様なとても優しい声だ。
かなたはなんとなく姉の腕に両腕ですがりついた。
ますみの手がそっと髪を撫でてくれる。何も怖くなくなる。
「お姉ちゃん」
「ここに居ますよ。姉はいつもかなたのそばに居るのです」
「うん、俺もお姉ちゃんのそばに居る」
満足してかなたは身を離した。
繋いだ手があたたかくてやわらかくて、かなたはますみが居る事を心から幸せに思い感謝した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる