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「まーすみちゃん!あーそーぼーっ! 」
玄関で自分を誘いに来た友達が呼びかけて来る。
「いらっしゃい。誘いにきてくれてありがとう。でも私、お夕食の支度なのです。ごめんなさいね……」
ますみの申し訳なさそうな顔に同級生が不満な顔を浮かべる。
「え~?三年生なのに―? 」
「なんかますみちゃんって、いつも御用だよね。大人みたいでつまんないなぁ」
「ごめんなさい。また誘って下さいね」
去ってゆく友達を見送りながらますみはやや肩を落として微笑んだ。
* * *
「ますみちゃんは本当に良くできた子ね。お父さんの躾がいいのかしら。きゅうりおまけしちゃうね」
買い物先で時々言われる。
「よろしいのですか?ありがとうございます。母がいない分地域の皆さんがご指導下さいますから、ああ八百屋さんもですよ。皆が私を育てて下さっているのです。ありがとうございます」
「いやぁ……ウチのせがれに爪の垢でも煎じて飲ませてやりてぇ。なぁお前」
「全くだよ!ってぇあたしらがしっかりしろって事だよ! 」
良い子だと皆が言ってくれる。でも本当に?
* * *
「委員長さん、おかげで助かりました。歳をとると横断歩道渡るのも命がけでねぇ」
「お手伝いできて良かったです。お家までお荷物持ちましょうか? 」
「そこまで甘えられませんよ。ヘルパーさんじゃないんだから。それにきっとあなたの親切を待っている人が他に居る事でしょう。ああ!これでは押し付けね!ごめんなさい。そしてありがとう。あなたには皆が助けられていますよ。まだ子供さんなのに本当に立派。あなたの様な子が増えたらこの国は安泰だわ」
「大げさですよ。私はできる事しかしていませんもの。では私は行きますね。どうかお気をつけて」
「ありがとう、委員長さん」
* * *
「立派な子」
「良く出来た子だね」
「本当に良い子」
「お手本みたいな子だよ」
「皆が委員長みたいだと良いのにね」
ますみはいつも思っていた。
「私は、 立派なんかじゃない…… 」
玄関で自分を誘いに来た友達が呼びかけて来る。
「いらっしゃい。誘いにきてくれてありがとう。でも私、お夕食の支度なのです。ごめんなさいね……」
ますみの申し訳なさそうな顔に同級生が不満な顔を浮かべる。
「え~?三年生なのに―? 」
「なんかますみちゃんって、いつも御用だよね。大人みたいでつまんないなぁ」
「ごめんなさい。また誘って下さいね」
去ってゆく友達を見送りながらますみはやや肩を落として微笑んだ。
* * *
「ますみちゃんは本当に良くできた子ね。お父さんの躾がいいのかしら。きゅうりおまけしちゃうね」
買い物先で時々言われる。
「よろしいのですか?ありがとうございます。母がいない分地域の皆さんがご指導下さいますから、ああ八百屋さんもですよ。皆が私を育てて下さっているのです。ありがとうございます」
「いやぁ……ウチのせがれに爪の垢でも煎じて飲ませてやりてぇ。なぁお前」
「全くだよ!ってぇあたしらがしっかりしろって事だよ! 」
良い子だと皆が言ってくれる。でも本当に?
* * *
「委員長さん、おかげで助かりました。歳をとると横断歩道渡るのも命がけでねぇ」
「お手伝いできて良かったです。お家までお荷物持ちましょうか? 」
「そこまで甘えられませんよ。ヘルパーさんじゃないんだから。それにきっとあなたの親切を待っている人が他に居る事でしょう。ああ!これでは押し付けね!ごめんなさい。そしてありがとう。あなたには皆が助けられていますよ。まだ子供さんなのに本当に立派。あなたの様な子が増えたらこの国は安泰だわ」
「大げさですよ。私はできる事しかしていませんもの。では私は行きますね。どうかお気をつけて」
「ありがとう、委員長さん」
* * *
「立派な子」
「良く出来た子だね」
「本当に良い子」
「お手本みたいな子だよ」
「皆が委員長みたいだと良いのにね」
ますみはいつも思っていた。
「私は、 立派なんかじゃない…… 」
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