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第一幕:子供の事情
第一場:教室で
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賑わう休み時間の教室中が注目した程にどっと起こった笑いがとり囲む中で、拾ったばかりのごみを屑籠に放ると、周りに反発するように彼は軽くあごをあげた。
おかしなことは言っていない、お前らがおかしいんだと、無言のままに眼差しで語る。
その様子にひときわ大柄な少年が明らかな侮蔑を声に混ぜて言った。
「ジャスティン君はいくつかなぁ?もう五歳になったのかなぁ? 」
「お前と同じ十歳だよマック」
そう呼ばれた大柄な少年は再び笑った。
「十歳にもなってなんだって?サンタがいる?おい聞いたかみんな」
周りの者達も口々に彼を馬鹿にするような言葉を漏らした。
「あのなぁ?ジャスティン、朝枕元にプレゼントがあるのはな?親が置いてんだよ! 」
「マック、そう言う事言っちゃかわいそうだよ。ジャスティンちは貧乏だからいつもプレゼント無いんだからさ」
「そうそう、買えない親だっているんだよ。察してやれよマック」
周りから浴びせられる声に眉を寄せるジャスティンだったが、取り囲みのさらに外から声が飛んできた。
「ちょっとひどいわよ!ジャスティンの家にはお母さんしかいないの知っててそんな事言うなんて! 」
「いいんだ、ニネット。こいつらは知らないだけなんだから」
ジャスティンが周りに聞こえるようにそう答える。
「おいおい、ニネット、まさかお前までサンタはいるとか言い出すんじゃないだろうな」
マックに振り返られた少女は小さく戸惑いの声を漏らしたが、わからないわと相手を見て答えた。
「わからないわ。夜中まで起きていた事がないんだもの。だから居ないなんて言えないわ」
するとマックの隣の少年がくすくす笑った。
「それは居るとも言っていないな。ニネットも苦しいよな、ジャスティンの味方をしたいけどそうできないんだから」
「何よネオ!じゃぁあなたは居ないって言いきれるの?なにかその証拠でもあるって言うの? 」
するとネオはじゃぁと意地悪い笑みを浮かべて言った。
「プレゼントが来ないジャスティンは悪い子だって事だ」
それはと口ごもるニネットだったがジャスティンは顔を伏せずに言った。
「見える形ばかりでプレゼントが来ると思うからそうなんだ。気づかない形でのものだってあるはずだ」
「それのどこに意味があるんだよ」
マックを始め周りがさらに笑った。
「サンタに手紙を書く、これこれこいうものくださいってな。親がそれを読んで買ってくる。これならわかる。けどな、サンタに手紙が届いたなら、サンタは何で子供が欲しがるものじゃなくて見えもしない貰ったかどうかもわからないもの置いて行くんだよ。そりゃ都合よすぎじゃないか?ジャスティンちゃん」
そうだそうだと野次が飛ぶ。
「もうやめなさいよ!大勢で寄ってたかって! 」
ニネットが二人の間に割って入ったがそれは逆効果にジャスティンを怒らせた。
「よしてくれ!それじゃ俺が間違っているみたいじゃないか」
「ジャスティン…… 私はそう言うつもりでは…… 」
勢いをなくすニネットの味方をしたのはマックだった。
「おいジャスティン、今のはお前がまずいぞ。ニネットはお前の味方をしたんじゃないか! 」
「へぇ そうかい」
ジャスティンはゆっくりと囲みをこじ開けて去ろうとした。
「まてよ、お前がそこまで言うのなら一つ賭けをしようじゃないか」
マックの申し出にジャスティンは足を止めて顔だけ振り向かせる。
「そこまでサンタがいるってならお前の中で確証があるのだろう。俺もいないって事に対してひっこめる気はねぇ。だから勝負だ」
「どういう事だよ」
振り向いたジャスティンを真っ直ぐ見ながらマックは言った。
「お前はサンタに手紙を出せ。『この街のどのツリーよりも大きなクリスマスツリーを下さい、他のものは一切要りません』ってな」
「ツリ―? 」
「ああそうだ。どのツリーよりもでかい奴だ、ロックフェラーに負けないような奴だぞ? 」
「そんなものが持ってこれるものか! 」
「サンタだろ?何でもありじゃないのか?世界中の子供へのプレゼントが入る袋ならでっかい木が入ったっておかしくないじゃないか」
再び笑いが起こった。
「それとも何かい?サンタには無理だってのか? 」
「いいだろう」
ジャスティンは低く言った。
「は?今なんて言った? 」
マックが耳を向け手をあてる。
「それでいいって言ったんだ」
「よし決まりだな」
満足そうに腕を組むマック。
「もしサンタが来たなら、今年俺に届いたプレゼントをお前にやるよ。最新式のゲームのセットさ。もちろんサンタの所にいる妖精には作れない代物だけどな」
「来なかったらどうすんだマック? 」
ネオが言う。
「べぇつに?こいつが笑い物になるってだけだろ?何もいらねぇよ。勝つってわかっているのにペナルティ科すのはひでぇからな」
「だったら、私があなたにあげるわよ! 」
ニネットが身を乗り出して言った。
「もしサンタが大きなツリーを持ってこなかったら、私の所に届いたプレゼントをあなたにあげるわ! 」
マックとネオが顔を見合わせる。
「おままごとのセットをもらったって嬉しかないからなぁ」
自分も子供扱いされ顔を真っ赤にするニネットだったがそれ以上何も言わなかった。
だったらとジャスティンは言った。
「朝礼で校長を押しのけて叫んでやるよ。俺がサンタがいるって信じていた間抜けだってな」
ヒューとマックは口笛を吹いた。
「上等だ。折角いい条件にしてやったのに。言いだしたのはお前だからな」
ジャスティンは相手を見つめたまま一度うなずいた後その場を後にした。
小さく笑い合うマックとネオをニネットは唇を結んで見ていた。
おかしなことは言っていない、お前らがおかしいんだと、無言のままに眼差しで語る。
その様子にひときわ大柄な少年が明らかな侮蔑を声に混ぜて言った。
「ジャスティン君はいくつかなぁ?もう五歳になったのかなぁ? 」
「お前と同じ十歳だよマック」
そう呼ばれた大柄な少年は再び笑った。
「十歳にもなってなんだって?サンタがいる?おい聞いたかみんな」
周りの者達も口々に彼を馬鹿にするような言葉を漏らした。
「あのなぁ?ジャスティン、朝枕元にプレゼントがあるのはな?親が置いてんだよ! 」
「マック、そう言う事言っちゃかわいそうだよ。ジャスティンちは貧乏だからいつもプレゼント無いんだからさ」
「そうそう、買えない親だっているんだよ。察してやれよマック」
周りから浴びせられる声に眉を寄せるジャスティンだったが、取り囲みのさらに外から声が飛んできた。
「ちょっとひどいわよ!ジャスティンの家にはお母さんしかいないの知っててそんな事言うなんて! 」
「いいんだ、ニネット。こいつらは知らないだけなんだから」
ジャスティンが周りに聞こえるようにそう答える。
「おいおい、ニネット、まさかお前までサンタはいるとか言い出すんじゃないだろうな」
マックに振り返られた少女は小さく戸惑いの声を漏らしたが、わからないわと相手を見て答えた。
「わからないわ。夜中まで起きていた事がないんだもの。だから居ないなんて言えないわ」
するとマックの隣の少年がくすくす笑った。
「それは居るとも言っていないな。ニネットも苦しいよな、ジャスティンの味方をしたいけどそうできないんだから」
「何よネオ!じゃぁあなたは居ないって言いきれるの?なにかその証拠でもあるって言うの? 」
するとネオはじゃぁと意地悪い笑みを浮かべて言った。
「プレゼントが来ないジャスティンは悪い子だって事だ」
それはと口ごもるニネットだったがジャスティンは顔を伏せずに言った。
「見える形ばかりでプレゼントが来ると思うからそうなんだ。気づかない形でのものだってあるはずだ」
「それのどこに意味があるんだよ」
マックを始め周りがさらに笑った。
「サンタに手紙を書く、これこれこいうものくださいってな。親がそれを読んで買ってくる。これならわかる。けどな、サンタに手紙が届いたなら、サンタは何で子供が欲しがるものじゃなくて見えもしない貰ったかどうかもわからないもの置いて行くんだよ。そりゃ都合よすぎじゃないか?ジャスティンちゃん」
そうだそうだと野次が飛ぶ。
「もうやめなさいよ!大勢で寄ってたかって! 」
ニネットが二人の間に割って入ったがそれは逆効果にジャスティンを怒らせた。
「よしてくれ!それじゃ俺が間違っているみたいじゃないか」
「ジャスティン…… 私はそう言うつもりでは…… 」
勢いをなくすニネットの味方をしたのはマックだった。
「おいジャスティン、今のはお前がまずいぞ。ニネットはお前の味方をしたんじゃないか! 」
「へぇ そうかい」
ジャスティンはゆっくりと囲みをこじ開けて去ろうとした。
「まてよ、お前がそこまで言うのなら一つ賭けをしようじゃないか」
マックの申し出にジャスティンは足を止めて顔だけ振り向かせる。
「そこまでサンタがいるってならお前の中で確証があるのだろう。俺もいないって事に対してひっこめる気はねぇ。だから勝負だ」
「どういう事だよ」
振り向いたジャスティンを真っ直ぐ見ながらマックは言った。
「お前はサンタに手紙を出せ。『この街のどのツリーよりも大きなクリスマスツリーを下さい、他のものは一切要りません』ってな」
「ツリ―? 」
「ああそうだ。どのツリーよりもでかい奴だ、ロックフェラーに負けないような奴だぞ? 」
「そんなものが持ってこれるものか! 」
「サンタだろ?何でもありじゃないのか?世界中の子供へのプレゼントが入る袋ならでっかい木が入ったっておかしくないじゃないか」
再び笑いが起こった。
「それとも何かい?サンタには無理だってのか? 」
「いいだろう」
ジャスティンは低く言った。
「は?今なんて言った? 」
マックが耳を向け手をあてる。
「それでいいって言ったんだ」
「よし決まりだな」
満足そうに腕を組むマック。
「もしサンタが来たなら、今年俺に届いたプレゼントをお前にやるよ。最新式のゲームのセットさ。もちろんサンタの所にいる妖精には作れない代物だけどな」
「来なかったらどうすんだマック? 」
ネオが言う。
「べぇつに?こいつが笑い物になるってだけだろ?何もいらねぇよ。勝つってわかっているのにペナルティ科すのはひでぇからな」
「だったら、私があなたにあげるわよ! 」
ニネットが身を乗り出して言った。
「もしサンタが大きなツリーを持ってこなかったら、私の所に届いたプレゼントをあなたにあげるわ! 」
マックとネオが顔を見合わせる。
「おままごとのセットをもらったって嬉しかないからなぁ」
自分も子供扱いされ顔を真っ赤にするニネットだったがそれ以上何も言わなかった。
だったらとジャスティンは言った。
「朝礼で校長を押しのけて叫んでやるよ。俺がサンタがいるって信じていた間抜けだってな」
ヒューとマックは口笛を吹いた。
「上等だ。折角いい条件にしてやったのに。言いだしたのはお前だからな」
ジャスティンは相手を見つめたまま一度うなずいた後その場を後にした。
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