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19.前門の虎(マーガレット視点)
しおりを挟む屋敷の者がニケ様に報告するのは予想済みだ。
怒りを露わにしてゴードンに詰め寄るニケ様を見つける。
相変わらず麗しいお顔だ。
ニケ様はゴードンと違ってやはり騙す事は出来なかったが、次期当主のゴードンには逆らえず帰って行った。
邪魔な義父を連れて。
(小煩いジジィも片付いて一石二鳥だわ。)
ニケ様が、9カ月後に神殿長が帰ってくると言っていた。
聖女の検証をされたら、あの子が聖女では無い事がすぐにバレてしまう。
だから、、、。
(検証される前にあの子を消すしか無いわね。売り飛ばすか….。
あ、そうだわ。あの乳母のメラニーが気に入らないから、アイツのせいにしてやろう。
検証される直前に、乳母が妬んで毒を飲ませて殺してしまう事にしよう。
そしたら、子どもを失った私の事を皆同情の目で見るわ。
そして次こそ、金髪碧眼の男との子どもを産めば、悲劇を乗り越えて侯爵家を支えて行く健気な私の出来上がりよ…!!
それがニケ様の子どもだったら言う事無しねっ!!
我ながら最高のシナリオだわ!!)
とりあえずあと9カ月は遊んで暮らすとするわ!!!
そう、思っていたのに…。
あれから8カ月経った今日。
突然神官を名乗る者達がゾロゾロと屋敷へやってきた。
「こちらに聖女候補の赤子がいると聞き参りました。神殿長の命により、赤子と、その両親はすぐに神殿に参るように。」
「えっ!?なぜその事を神殿長が知っているの!?というか、神殿長が帰って来るの来月じゃないの!?」
誰が神殿に漏らしたのか…!!いや、そもそもまだ子どもは一歳になっていない。帰りが早まったのか!?
(まずいわ…。油断してたっ…!!)
「おお!もう神殿長のお耳に入られているのですね!やっとグレースが聖女認定されるのか!!私も聖女の父だ!!わははは!」
ゴードンは何も考えていないのだろう。自分の子どもがやっと聖女認定されるのかと喜んでいる。
しかし、検証されると困る…!!
何とか時間を稼がねば…!!
「ま、まぁ!神殿の方々直々に申し訳ないですわぁ!あの、ちょっと色々ありますので、後日神殿へ参りますわね!」
その間に子どもを消すしか無い…!!
「なりません。神殿長よりすぐに参るよう命じられています。すぐ支度をしてすぐに出発します。」
「そんなっ!あまりにも横暴ですわ!聖女である我が子が、ちょっと体調が優れなくて…。元気になってから…!!」
「聖女とは…この子の事か…?どこからどう見ても元気そのものでは無いか。」
1人の神官が子どもを抱いて現れた。隣にはメラニーも控えている。
「なっっっ!!勝手に…!!!」
「勝手にではありません。乳母に許可は貰いました。そもそも、許可などなくともかまいません。他では無い神殿長の命令でありますから。命令に背くのであれば、貴女は罪人になります。」
「うっ…。せめて…子どもと同じ馬車で、自分達だけで向かわせて頂く事は…。」
「それも聞き入れる事はできません。では、出発します。」
そうして、子どもを消す暇も、逃げる暇も無くただただ神殿の使い達の言う事に従い神殿に向かうしか無いのだった…。
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