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16.誕生
しおりを挟むお腹も随分と目立つようになってきた。
もういつ産まれてもおかしくない頃だそうだ。
義父の体調は変わらずだが、孫を抱く日を楽しみに少しでも長生きする!と意気込みを見せてくれていて、少し安心だ。
ニケ様は相変わらず侯爵家の公務と皇子の護衛にと忙しそうだが、私との時間も大切にしてくれ、いつも身体を気遣ってくれる。
何とも穏やかで幸せな日々だ。
ゴードンとマーガレットの聖女騒動が無ければ…。
マーガレットとゴードンは相変わらず我が者顔で侯爵家の屋敷に居座り、侯爵家のお金を使い贅沢三昧だそうだ。
ニケ様は、
"来たる時が来るまでの夢を見せてやっている。"
と言っていた。
マーガレットの子どもは、9ヶ月になった。母親であるはずのマーガレットは抱きもしないが、代わりに乳母が愛情たっぷりに育てすくすく健康に成長しているらしい。
そして、他家にもマーガレットが我が子を聖女と偽っている事は漏れていないようだ。
「ニケ様、お帰りなさい。今日は早いお帰りなのですね!」
「あぁ、ただいまフィオナ。他の護衛騎士達と皇子が奥さんが身重のヤツは早く帰れ!と言って、帰らされたのだ。」
「まぁ。本当に。あの方達は本当にいつも優しくて気の良い方達ですわね。第一皇子も素晴らしい方で、本当にこの国は安心ですわ。」
2度程、ニケ様の同僚の方々に会う機会があったが、皆有能で気さくな方ばかりだった。
とても仲が良く、私との仲を冷やかされて少年のように言い返すニケ様がとても可愛らしく見えたものだ。
「まぁ、皆悪い奴では無いな。」
少し照れ笑いするニケ様を見て私も微笑む。
「それにしてもいつ生まれてくるかな…?おーい。明日も非番だから今日産まれたらお父様は助かるぞー??」
そう言ってお腹を撫でるニケ様。
「まぁニケ様ったら…。この子のタイミングで産まれてきます…うっ…いたたたた。」
「えっ!?」
「収まりましたわ…。もしかしたら、陣痛というものが始まったかもしれませんわ…。」
「だっ、誰かー!!」
いつもは頼りになるニケ様が慌てふためいている。
「ふふっニケ様ったら大丈夫ですわ!いたたたた。」
医者が駆けつけ、お産の準備が始まる。
痛みがどんどん増してくるが、不思議と不安は無い。
何度も迫り来る痛みを耐え流し、何度も気を失いそうになるが、痛みで我に帰る。
(私のお母様もこのような痛みを耐えて私を産んでくれたのね…。)
一日中かかり、やっと…!
「奥様!!もう一踏ん張りです!もう髪の毛が見えています!!次で産んでしまいましょう!!」
最後の力を振り絞る。すると…。
「おぎゃぁ~!!」
と、同時に扉がバーーン!と開く。
「ニッニケ様ッッ!!まだ事後処理等終わっておりませんので…。」
そう産婆に言われるニケ様だが、あまり聞いていない…。自分の母親がお産で亡くなったと聞いているので特に心配だったのだろう…。
でも、ずっと扉の外で待っていてくださった事が心から嬉しい。
「フィオナッ!ありがとう、ありがとう…!!子どもの顔を見せてくれ!~~~~っ!!!可愛い…!!なんっっって可愛い子なん………!えっっ…!!!」
顔中の筋肉が緩んで、我が子を愛でていたニケ様が急に真剣な顔になる。
「ど、どうされましたか…!?子どもに何か…!?」
「額に……。十字の刻印が……!!」
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