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15.報告
しおりを挟むーーーフィオナ視点に戻ります。
(遅いわね…。)
ニケ様が侯爵家に戻ったのは午前中。
もう、日が暮れようとしていた。
(早く伝えたい事があるのに…。)
はやる気持ちを抑える。
ガチャッ
屋敷の扉が開く。
「フィオナ。ただいま。」
「ニケ様…!お帰りなさいませ…!」
思わず顔が綻ぶ。
ニケ様の後ろから車椅子に座る義父が顔を出す。
「フィオナ…。少し痩せたのでは無いか…?」
「お義父様…!!お義父様の方がお痩せになって…!!」
車椅子に座る義父は以前よりも一層小さくなり、頬は痩けて、服から覗く手の指もかなり細い。
「不甲斐ないなぁ…。アイツが生きていたらこの姿を見て何と言うだろうか。」
「お義父様…。」
ニケ様のお母様は、ニケ様を産んでからまもなく亡くなったそうだ。幼いゴードンは母親の死が受け止めきれず、我が儘三昧になり、可哀想に思った使用人達も我が儘を咎める事が出来ず、今のゴードンの我が儘を増長させてしまったのかもしれない。
「ゴードンの元へ父上を置いておけないと判断して連れて帰った。これからはこちらで過ごして貰おうと思う。」
「それが良いですわね。…という事は、やはり聖女と言うのは…。」
「あぁ。思った通りあの女のでっち上げだった。すぐに聖女の検証が行われない事を良い事にな。そしてゴードンは愚かな事にそれを信じている。」
「しかし、それでも検証されたらすぐに分かる事では無いでしょうか…。」
「そうだ。検証されたら聖女で無い事が明らかになってしまう。だからきっとあの女は…。」
「もしかして…!!」
(検証される前に子どもを…!?)
「あぁ、検証される前に子どもを消すだろう…。あの女ならやりかねない。」
信じられない…。自分のお腹を押さえながら冷や汗が出る。
「それならば子どもが危険では…!!」
あのマーガレットの子どもであり、父親が誰か分からぬ子どもでも、子どもには罪は無い。
「それは大丈夫なはずだ。神殿長が戻るのは9ヶ月後だと言っておいた。それまでは無事だろう。世話役に信頼できる者も置いておいた。随時報告もする様に言っている。子どもが一歳になるまでに手を打ち、ゴードンとあの女を侯爵家から追い出す!」
「ニケ様…。頼りにしておりま…。うぅ…。」
我慢していたものの、激しい吐き気が襲う。
「ど、どうしたフィオナ!!」
「大丈夫です…。」
「大丈夫なものか!誰か!」
ニケ様がそう言うと、周りの者は駆け寄る事無く、優しい笑みを浮かべながらニケ様を見ている。
「その…。今日、ニケ様が侯爵家へ行かれている間にお医者様に見て頂いたのですが…。妊娠しているようなのです…。私も驚いたのですが、もう4ヶ月に入る所では無いかと…。」
計算的に、初夜の日の子どもという事になる。
目を見開き驚いたと思えば、私を抱きしめるニケ様。
「フィオナ!!嬉しいよ!!あぁ、私は何て幸せ者なんだ。ありがとう、フィオナ…。って、あ!!抱き締めたら苦しいか…!あぁ、でも抱き締めさせて欲しい。」
そう言って優しくニケ様が私を抱きしめる。
「フィオナの為に…。この子の為に…。侯爵家の皆の為に…。頑張らなければいけないね。」
「はい…。お互い支え合って行きましょう。」
そう言ってそっと抱き締めるニケ様をそっと抱き締め返すのだった。
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