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6.決心

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「やぁ、フィオナ。今日のドレスもよく似合っている。」


「ありがとうございます。ニケ様…少しお疲れですか…?」


「フィオナには分かってしまうか…。疲れてはいないんだ。今までまとまった休みを貰っていたのだけど、今日で休みが終わってしまって…。当分ここには来られそうに無いんだ…。今日もすぐ行かなければならないんだ。」

(そんな…。当分だなんて…。ニケ様に会えなくなる…。)

胸がドクドクと波打ち、張り裂けそうになる。

(そんなの嫌だ…!)


「ニケ様っ、あの…。」

「どうしたんだい?」

「先日のお話の件ですがっ…。お受けしても良いでしょうか…!」

「先日のお話…?まさか、プロポーズを受けてくれるの?」


「はい…。」

きっと今、耳の先まで真っ赤だろう。


「フィオナッ!!ありがとう!!本当に嬉しいよ。大切にするからね。遠征から帰って来たらすぐに迎えにくるから…!」


「はい…。それまで私、待っております…!遠征は、どれくらいの予定なんですか…?」


「1ヶ月はかかると思うんだ…。」


(「当分の間って1ヶ月かーい!!」)


そこにいた使用人全員が心の中でツッコミを入れたのだった…。







ニケ様を見送った後、
両親の元へ行く。


「お父様、お母様、お話があります。」

「フィオナか。」
「ニケ様は帰られたようね。」

「あの、お父様、お母様。私、ニケ様の求婚を受ける事にしました。」

「ふん、次戻って来たら家には入れんぞ?」
「ニケ様の元で次こそ幸せにしてもらえと言っているわ。」


「はい…。ありがとうございます。」



確かに、ニケ様はゴードンの弟ではあるが、ゴードンのせいで私が幸せになる事を諦める事になるなんてあり得ない。



修道女として生きていこうかと思っていた所だ。
どうせならニケ様と、ゴードンよりも幸せになろうと心に決めるのだった。









ーーーーー1ヶ月後


ニケ様が迎えに来て、再びサンダーム侯爵家へ行く日がやってきた。


「フィオナ!!会いたかった。でも…。本当に良いのかい?まあ、今更嫌だと言われても、はいそうですか。と言う気も無いけれど。」
少しはにかんだ笑顔で話すニケ様。


「はい。ニケ様と共に参ります。」


「嬉しいな。この日を楽しみに1ヶ月間頑張ったんだ。さあ、お手をどうぞ。」


ニケ様の手を取り馬車に乗り込む。
馬車を走らせながら、他愛も無い話をする。それがとても心地良く、楽しい。


「父にフィオナと結婚すると言うと、とても喜んでいたよ。住む所も、別宅に住んでくれと懇願されてね。王宮に近く私も助かるのでありがたく頂いておいたんだけど…。もちろんこの1ヶ月で改装して気に入る様にしておいたから。」


「まあ、お義父様が…。ありがたいですわね。お義父様の体調はいかがでしょうか…。」


お義父様は、長らく酷い目眩に悩まされていて、長い時間床に伏していた。
私がゴードンの不倫により一方的に離婚され追い出された時も、会えずじまいだった。


「父は、身勝手な理由でフィオナが追い出された事を後から知って、大きな怒りとショックで更に寝込んでしまったが、またフィオナが娘になると少し元気になっていたよ。また、落ち着いたら顔を見せてあげて欲しい。」


「そうなのですか…。……ニケ様。私、このままお義父様の元へ向かいたいです。」


「フィオナ…。父のためにありがとう。でも、今日はゴードンとあの女と顔を合わせてしまうかもしれない。」


「ゴードン?関係ありませんわ。お義父様に会いに行くんですもの。」

笑ってみせる。

「さすが、フィオナだ。では、父の元へ参ろうか。」


半年ぶりに懐かしの侯爵家に向かうのだった。


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