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23.そして誰もいなくなった
しおりを挟む「セレーナ様!!ぜひ私もそちらで働かせてください!!」
「セレーナ様!!私もついて行きます!!」
「セレーナ様!私もお願いします!明日からでも働けます!!」
一斉に従業員が詰め寄ってきた。
「皆さん…ありがとうございます…!!でも、皆さん本当に良いのですか…?」
「もちろんです!セレーナ様はいつも私達の事を気遣い、優しい言葉をかけてくださいました…!」
「私なんて、子どもが病気にかかり治療費がかかるだろうってお金を貸していただいて…。治って返そうとしたら、"快気祝いよ!"と返済を断られて…。私、あの時からセレーナ様について行くと決めたのです!!」
「それなら私だってあの時…!」
次々と声が上がる。
…嬉しい。両親を突然亡くして突然やってきた新参者の私をここの従業員の皆は暖かく受け入れてくれた。
義両親に叱られながらも必死になって頑張る姿を認めてくれたのだ。
その為に義両親はわざと私に厳しくしたのだろう。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てっ!!全員が辞めたらローランド商会はどうなるのだ!!誰が働くのだ!誰か商品を作るのだ!!」
「そ、そうよ!!1人くらい残りなさいよ!!」
ゲイトとダリアが喚いているのを無視し、従業員と共にテキパキと店内の整理をする。
「あ、こちらの機会もセレーナ様が手がけた物ですね~。」
「これもです!」
「セレーナ殿が手掛けた物は全て表に停めてある荷車に乗せてくれ。3台では足りなかっただろうか。」
リブライ様が従業員にそう指示した。
「えぇ!?荷車を用意してくださっていたのですか!?ふふ!リブライ様、用意周到すぎますわ!私は後日運び出そうとしていたのに…。」
「善は急げというものだ。もうここには2度と来る必要は無い!」
「そうですわね。」
店内の物がどんどん荷車に詰まれ、みるみる内に店の中が空っぽになっていく。
その様子をゲイトとダリアはポーッと見ているだけだった。
そして全てを荷車に乗せて、店を去る前にゲイトに言った。
「そしてお金ですが、利益の97%は私が手掛けた物なので、残り3%を置いていきますね。」
「3%!?」
「はい。帳簿もありますので確かです。正しくは97.4%は私なので2.6%を渡すのですが、まけてあげます。」
そう言って、300万ドリーを机の上にポンっと置いた。
ダリアが咄嗟にその300万ドリーに飛び付こうとした。
「あ、でも慰謝料の返済でとりあえずこれもいただいておきますね!」
と、ヒョイっと取り上げた。何もない机にダイブするダリア。
「なので、残りの返済は4910万ドリーでお願いします。」
「ちょ、ちょっと待て、、3%で300万という事は…。セレーナは1億近い金を持って行くのか…?」
「あら、誓約書の文字はキチンと読めないのに、お金の計算はできるのですね。」
「そ、そんなに持って行くのなら慰謝料なんていらないじゃないか…!?」
「それとこれは別ですので…。私、ゲイト様に裏切られてとても傷付いたのですから…。毎月月末に他の者に請求に向かわせますので必ず払ってくださいね?でないと…。もっと怖い所からお金を借りて貰いますね!?」
1番怖いのはセレーナ様だ…。
見ている従業員は全員そう思ったのだった…。
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