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14.破滅へのカウントダウン2(ゲイト視点)
しおりを挟む~4日後の朝
朝起きて朝食を食べに居間へ向かうと、机の上にいつもとは違う朝食がポツンと置いてあった。
「そういえば今日は家に誰もいないってセレーナが言っていたな…。今日はセレーナが作ったのか。お、俺の好きなオムレツがあるぞ。」
近頃はセレーナも料理はしなかったが、嫁いで来た時はよく料理をしていた。
(嫁ぐ前は毎日していたからとか何とか言っていたな…。)
オムレツを切ってみると、トローッと卵が流れる。
「やっぱりオムレツは半熟だ。やっぱりセレーナは俺の好物をわかっているなぁ~。…うん、美味しい。」
1人で食事をとりながら考える。
思い返せばセレーナは良い妻だ。
使用人が少ない為、家事も進んでするし、商会の仕事も難なくこなし、さらにセレーナのお陰で商会は急成長している。顧客や従業員、両親からの評判も素晴らしい。
(そろそろ俺もフラフラせず、後継としてちゃんとするかな…。)
「ん、ベーコンの焼き具合も最高だ。」
食事を終え、支度をして店に向かう。
セレーナも両親もいない。
従業員達は、3人が居なくとも手を抜く事無く黙々と仕事をこなしている。
ゲイトも仕事をしようとするが何をして良いかわからない。従業員に聞くのも気が引けたので、手持ち無沙汰になり店先に出た。良い天気だ。
行き交う人をボーッと見ていると、知っている顔がこっちへ手を振りながら向かってくる。
「ゲイト様~っ!」
「なっ…!」
(ダリアだ。まさか店にやってきた…。信じられない。いやしかしこれは逆にチャンスなのでは無いか…?ダリアと別れよう。)
「あ、あぁ、ダリア元気そうだな。ちょっと話でもしないか…?ここじゃちょっと目立つから移動しよう。」
「はい!私もゲイト様とお話したかったのです~っ!そのために来たのですよ?ほら!作戦考えなくちゃいけないですもんねっ!ほら!…奥様をお、い、だ、すっ!」
「なっ!!」
最後は小声で俺の肩に手を置き、耳に口を近づけて耳元で囁くダリア。
(ここは店の前だっ!こんな所従業員や客に見られたらマズいだろっ!)
パッと店を見ると、数人の従業員がこちらをチラチラ見ていたが、目が合うとすぐに自分の手元に目線を戻していた。
(見られている…。まずいぞ…。セレーナや父上に報告されたらまずい!そもそも店にくるとかどれだけ馬鹿なんだこの女は!!)
ダリアの肩をグッと手で押し離した。
「ゲイト様…??」
ウルウルとした目でこっちを見る。
(くぅー見た目だけは良いんだこの女は。)
「ほら、2人でゆっくり話そう!ちょっとあの曲がり角を曲がった所で待っておいてくれ!」
「2人きりで…?あぁなるほどっ!もーゲイト様ったら…!わかりました!早く来てくださいねっ!」
ダリアが嬉しそうに駆けていく。
(とりあえず誰にも見られない所へ行こう。)
金を取りに店に入る。
(店の金を使うのは今日で最後だ。今日ダリアと別れて、明日からちゃんと働いて返したら大丈夫だ。)
自分に言い聞かせて
店のレジの引き出しを開ける。
「な、、無い、、。」
硬貨1枚も入っていないのだ。
「くそっ!」
(なんで今日に限って!!)
窓の外を見ると、曲がり角を曲がった所で待っておけと言ったダリアが、だんだん近づいて来て、こちらをチラチラと見ている。
(早く行かないと店の中にまで入って来かねない…!!とりあえず行こう…。)
ダリアの元へ向かった。
「ゲイト様ー?今日はどこの宿屋へ行きますか~??」
「いや…えっと…。」
(宿屋に入る金が無い…。しかし…外で話すのは、取引先や客に見られたらまずい…。)
「ゲイト様ぁ??」
(そうだ!今日は家に誰もいないと言っていたな…!!家なら誰にも見られないだろう。)
「ダ、ダリア。今日は宿屋じゃなくて、家に来ないか…?」
(別れ話をしにだけどな…!)
「えっ!!良いんですかっ!?ついにお家に…!私の将来のお家ですものねっ!私、嬉しいです!!」
(ま、まずいぞ…。このまま穏便に別れられるだろうか…。)
ゲイトは頭を抱えつつも、ダリアを連れて家へと向かうのだった。
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