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11.近づく
しおりを挟む今日はリブライ様がいらっしゃる日だ。
あの日から何度か打ち合わせを重ねて、今日はやっと完成した試作品をお見せする。
近頃は、静かな場所で話し合いたい為、店では無く家で打ち合わせをしている。
家の扉が開いてリブライ様が顔を出される。
「ようこそリブライ様。本日もご足労頂きありがとうございます。」
「こんにちは。セレーナ殿。今日は試作品を見せて貰える日だよね。色々とこちらの要望を聞いてもらってありがとう。楽しみだな…。」
「いいえ。ご期待に添える事ができたら嬉しいのですが…。早速ですが、こちらが試作品になります。」
ファサッと布を取る。
「おぉ!なんと素晴らしい!今までに無い見た目だね!」
「少し説明させてください。まず座席ですが、ドレスのままでも座る事ができるように幅を少し大きくしています。そして座る部分には、長時間座っても疲れないように特製のクッションをつけました。勿論生地はシルクです。車輪は、少し小さめにして小回りが効くようにして…尚且つ、少しの力で動かす事が可能になりました。見た目も、白色で可愛らしく仕上げてみましたが…。いかがでしょう…。……?リブライ様?」
少し微笑みながら、車椅子より私の方を見ているリブライ様に気付き、思わず赤面して名を呼んでしまう。
「あ、あぁ、勿論聞いていたよ。素晴らしい出来だ。見た目や機能だけではなく、至る所に母への気遣いが見える…。本当にありがとうセレーナ殿。貴女じゃなければこのように素晴らしい物にはならなかった。母の喜ぶ姿が目に浮かぶよ。」
ニコッと笑うその笑顔に思わず見惚れてしまいそうになり、ハッとする。
(いけないいけない。これではゲイトと一緒よ…!!)
しかし、見惚れるのにも無理はない。サラサラの金髪の髪を短く切り清潔感溢れ爽やかで、碧色の目はどこまでも透き通っている。何よりも笑顔が素敵なのだ。
「あ、ありがとうございます。では、この試作品を御夫人に合わせて調整致しますね!数日で終わると思います。」
邪念を振り払うように、そう答える。
「ありがとう。数日とは…さすがだね。確かにここの従業員はとても優秀だからね。」
「ありがとうございます…。」
従業員が褒められるのはとても嬉しい…。思わず私の頬も緩んでしまう。
2人で微笑みあっているとそこに…。
バンッ!!
ノックもされずに突然扉が乱暴に開かれた。
「誰だ!その男は!!!俺の妻に何している!!」
あろう事か、ゲイトがノックもせずに部屋に入り、リブライ様に向かってこのような事を叫んだのだった。
「ゲイト…!様…!」
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