上 下
11 / 27

11.近づく

しおりを挟む


今日はリブライ様がいらっしゃる日だ。
あの日から何度か打ち合わせを重ねて、今日はやっと完成した試作品をお見せする。

近頃は、静かな場所で話し合いたい為、店では無く家で打ち合わせをしている。


家の扉が開いてリブライ様が顔を出される。


「ようこそリブライ様。本日もご足労頂きありがとうございます。」


「こんにちは。セレーナ殿。今日は試作品を見せて貰える日だよね。色々とこちらの要望を聞いてもらってありがとう。楽しみだな…。」

「いいえ。ご期待に添える事ができたら嬉しいのですが…。早速ですが、こちらが試作品になります。」

ファサッと布を取る。


「おぉ!なんと素晴らしい!今までに無い見た目だね!」


「少し説明させてください。まず座席ですが、ドレスのままでも座る事ができるように幅を少し大きくしています。そして座る部分には、長時間座っても疲れないように特製のクッションをつけました。勿論生地はシルクです。車輪は、少し小さめにして小回りが効くようにして…尚且つ、少しの力で動かす事が可能になりました。見た目も、白色で可愛らしく仕上げてみましたが…。いかがでしょう…。……?リブライ様?」

少し微笑みながら、車椅子より私の方を見ているリブライ様に気付き、思わず赤面して名を呼んでしまう。


「あ、あぁ、勿論聞いていたよ。素晴らしい出来だ。見た目や機能だけではなく、至る所に母への気遣いが見える…。本当にありがとうセレーナ殿。貴女じゃなければこのように素晴らしい物にはならなかった。母の喜ぶ姿が目に浮かぶよ。」


ニコッと笑うその笑顔に思わず見惚れてしまいそうになり、ハッとする。

(いけないいけない。これではゲイトと一緒よ…!!)

しかし、見惚れるのにも無理はない。サラサラの金髪の髪を短く切り清潔感溢れ爽やかで、碧色の目はどこまでも透き通っている。何よりも笑顔が素敵なのだ。



「あ、ありがとうございます。では、この試作品を御夫人に合わせて調整致しますね!数日で終わると思います。」


邪念を振り払うように、そう答える。


「ありがとう。数日とは…さすがだね。確かにここの従業員はとても優秀だからね。」


「ありがとうございます…。」

従業員が褒められるのはとても嬉しい…。思わず私の頬も緩んでしまう。


2人で微笑みあっているとそこに…。





バンッ!!

ノックもされずに突然扉が乱暴に開かれた。



「誰だ!その男は!!!俺の妻に何している!!」



あろう事か、ゲイトがノックもせずに部屋に入り、リブライ様に向かってこのような事を叫んだのだった。


「ゲイト…!様…!」



しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

誰ですか、それ?

音爽(ネソウ)
恋愛
強欲でアホな従妹の話。

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!! 婚約破棄から幸せになる物語です。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...