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22.公爵

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「それでは…次にフィオナ。お前は私の妻エリーゼに対し、自分の欲の為だけに侍女をたぶらかし毒殺を目論んだ罪、その他公爵家を侮辱した罪で死刑を命ずる!」


「くそっっっ!!!くそっっっ!!!
私は公爵夫人、公爵夫人だぁぁぁぁあ!!」


「衛兵よ。この煩い女を連れて行け。」


「はっ!!」


「くっ!ふっふふふふふ、ふはははは!
それでは、公爵!ウィル!お前らより先に死んで、暇つぶしにあの世でジュリアを虐め抜いてやるわぁ!!私をこのように扱った事、後悔するが良い…!!」



「…お前がジュリアと同じ所へ行けるわけがないだろう…。お前が行く所は…間違い無く地獄だ…。」


衛兵に引きずられ連れて行かれながらも捨て台詞を吐くフィオナに、お義父様が言いました…。


パタン と、扉が閉まり部屋に静寂が戻りました。



「しかし…きっと…私もジュリアとは同じ所には行けぬのだろうな…。
妻が死んでしまい絶望し自分の事しか考えず、そのせいで他家の令嬢が命を落とし…。息子とも向き合わず、あまつさえ、息子の妻をも危険に晒してしまった…。
ウィル…!エリーゼ…!本当に…すまなかった…!!」


「父上…。」

「お義父様、お顔をあげてください。
ひと昔前の遠い国の偉人の言葉で、
"あやまちて改めざる、これを過ちという。"
という言葉があります。過ちをおかしても、改める事ができたのなら…それは過ちではありません。
お義父様は私がこの公爵家に嫁いで来た時から、優しく見守ってくださいました。本当に感謝しております。そんなお義父様はきっと…ジュリア様と同じ所へ行く事ができますわ。」

自分の非を一切認める事ができないマリアとフィオナは残念ながら到底無理でしょうが…。


「エリーゼ…。貴女は強い女性なのだな。ありがとう。」


「いえ、出過ぎた事を申しました。」


「ウィル。お前にも長い間辛い思いをさせたな。幼いお前から母親を奪ってしまい、私自身ジュリアの死を受け入れられず、ジュリアとそっくりだったウィルの顔を見るのが辛かった…。」


「父上。分かっております…。」


「何とか立ち直り、お前と向き合おうとした時には既に遅く、もうお前は何にも興味を示さず、何も欲する事が無くなってしまっていたのだ…。私は自分の罪深さを痛感したが、遅かったな…。」


「遅くなどありません、父上。それに先程、母上の元に行くことができないなど言っていましたが…、まだまだ行かせませんよ。父上にはまだ公爵としてやる事がたくさんありますから!」


長年のわだかまりが溶け始め、旦那様の顔がなんだか穏やかになりました。
きっと、お義父様に申したい事はたくさんあるのでしょうが…。これから、今までの分向き合えると良いですね…。


「あぁ。その事だがな。私はウィル、お前に公爵の座を譲ろうと思っている。」



「「えっ!?」」





「父上…。ど、どこか具合が悪いのですか!?」


「いや、そうでは無いが、フィオナとマリアの陰謀を防ぐ事ができなかった責任や、今回の件で成長したウィルを見て、エリーゼが付いているのならこのアンハルト公爵家を任せても良いかと思ったのだ。」


旦那様はまだ20歳になったばかり。
この年で世襲される事は、この国ではとても珍しい事です。


「それにだ。公爵家領地の南の地方だが数年前に起きた災害の復興が遅れている。
私はその地へ行って、復興に力を入れたいと思っていたのだ。ジュリアとの思い出の地なのだ。」



「父上…。そういう事ならば…。はい。わかりました。私はまだまだ未熟で力不足ではありますが、精一杯努めさせていただきます。
エリーゼ…。こんな私だが、これからもどうか信じてついて来てほしい。」


「はい…!」



少し遅くなってしまいましたが…
これから夫婦2人力を合わせて頑張っていきましょう…!













次回、カレン目線です。
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