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21.哀れな女達
しおりを挟む「フィオナ、お前には再三確認したはずだ。
お前を愛する事は無い。
公爵家の仕事には一切関わらせない、
そして…契約婚は私の父が亡くなるまで…と。
そのかわりフィオナには、父が亡くなるまでの公爵夫人の肩書きと、何不自由しない生活を約束しようと…。」
前公爵様が亡くなるまで…??
前公爵様が亡くなったのは確か、2年前。
と、言いますと…。
もしかして今、フィオナ様は…。
「確かに…!確かに初めはそんな事を言っていましたが…!!しかし!しかし!!長い時間を共に過ごせばそのような契約は無効になるのだと…!!」
「なるわけないだろう。」
「しかし!旦那様は前公爵様が亡くなった時に、何も言わなかったでは無いですか!?」
「父の死や、ウィルの結婚でそれどころでは無かった…。お前とは長らく顔も合わせていなかったし、特段気にも留めていなかった…。そもそも、お前と結婚しているという意識が無かったと言うべきか…。」
お義父様は、フィオナ様を妻と認識すらしていらっしゃらなかったなんて…。
「そんな…。では…では…私は…前公爵が亡くなった時から公爵夫人では…無かった…?」
フィオナ様…いえ、フィオナがヘナヘナとその場にへたり込みました。
"公爵夫人"というその肩書きだけにしがみ付いていたその姿は、惨めでしかありません…。
そもそも…、フィオナが公爵夫人と思っていたのは…自分だけでしょう…。
その哀れな姿に、私は命を狙われたとはいえ同情すら感じます。
「エリーゼ。この公爵家に嫁ぎ恐ろしい目に合わせてしまった事を当主として謝罪する。すまなかった…。
ウィルが昨晩私の部屋に来て、"この件に関しては私に一任してほしい。"と申してきたので、その言葉を信じて任せようと思う。」
「お義父様。…はい。」
公爵家の権限として、使用人の罪なら自分達で裁く事ができます。
「父上…。ありがとうございます。
それでは!罪とその刑を言い渡す!!
まず…侍女マリア。唆されたとはいえ、私の妻エリーゼに毒を盛った罪、自分達の罪をカレンに擦りつけようとした罪、私やエリーゼを騙していた罪で、奴隷市場送りとする。」
「そんな…!私…ウィル様の正妻は諦めます!!エリーゼ…様に譲りますわ!!第二婦人でも…いいえ。愛人でも構いません…。どうか、どうかお側に置いてください…!!」
マリアが床に額を擦り付け懇願します。
「黙れ…!!これ以上エリーゼや私を侮辱するような事を言うのなら、ここでお前の首を切り飛ばしてやる…!
私はお前の事も一度もそのような目で見たことは無い。私が愛するのはエリーゼただ1人だけだ…!」
「嘘ですわっ!公爵様やウィル様は私達親子に良くしてくださいました…!産まれた時からウィル様と私は一緒にいるのです…!そんな、出会ったばかりのエリーゼに…。騙されているのですわ…。毒を盛ったのはエリーゼです!!きっとウィル様に毒を盛ったのです!!でなければこんなっこんな事には…!!うわぁぁぁぁぁん!!」
「お前にそのような感情を抱いた事は一度もない。近くに、良き母親がいるお前を羨ましく思い、妬んだ事はあったとしてもだ…。そして勘違いをするな。お前の命を奪わないのは、お前の母の今までの功績を鑑みてだ…!母に感謝するが良い。
衛兵よ。これ以上マリアが罪を重ねる前に牢に連れて行け!」
「はっ!!」
「嫌っ!!ウィル様っウィル様ぁぁぁあ!!」
マリアが引きずられ連れて行かれる…。
最後まで、嘘だ嘘だと叫びながら…。
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