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17.1人じゃない

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マジュー様達が帰られるのを見送り、


「さぁ、私達も帰るとするか。」

「はい。」

旦那様が差し伸べてくださった手を取り、お店を後にしました。


外は少し肌寒く、もう薄暗くなってきています。

馬車に揺られ今日あった事を思い出していると、


「エリーゼ、改めてまたデートしよう。
今日は疲れただろう?
帰り道、少しでも休んでおいて?誰も見て無いんだから…。ほら。」

そう言いながら、はにかんだ笑顔でご自身の肩をポンポンッと叩く旦那様のお言葉に甘え、旦那様の肩を拝借して少し眠る事にしました。


眠りにつくかつかないか、ウトウトしている時に旦那様が小声で、

「きっと、今夜は長くなるだろうから…。」

と言ったのを聞き、少し疑問に思いながらも眠りに落ちてしまいました。



---------


「エリーゼ。そろそろ着くよ。もう少しこうしておいて欲しかったけど…。私以外の人にエリーゼの寝顔を見られるのは少し…ヤキモチ妬いてしまうから…ね?」

元々優しかった旦那様ですが、この数日は輪をかけて甘やかされています…。



間も無く馬車が止まり、旦那様のエスコートでお屋敷に入りました。
当たり前ですが、お出迎えの列の中にマリアはいませんでした。


自室の前で、
「エリーゼは疲れただろうから、少しゆっくりしておいて。私は…少し野暮用があるから少し側から離れるけど、終わり次第すぐエリーゼの部屋に向かうよ。」

旦那様はそう言い残し、歩いていかれました。


私の部屋の前には護衛が5人…。と、セバスチャン。
部屋の中には侍女が5人…。

きっと旦那様はマリアがまた何かを企んでいるのか疑っているのでしょう。


私は部屋の鏡の前に立ち、侍女達が髪を直したり、服を着替えさせてくれたりする姿を見て、マリアの事を思い出しました。



家を出て行く前、旦那様とのデートだからと言って、いつもより張り切って用意をしてくれたマリア。

旦那様の為、私に毒を盛ったマリア。

1年間、寂しい時も寄り添ってくれたマリア。

(どれが本当のマリアかわからないわ…。)


しかしただ一つ分かる事は、どれも旦那様の為…。私のためでは無かった事。
旦那様は、マリアをこの屋敷から出す気は無い…。



(旦那様に私が不要だと思われたら…?
そうなれば…私はまたいつか命を狙われるかもしれない…。)


そう考えると、今まで強がってはいたものの身体が自然と震える。

コンコンッ

その瞬間、ドアがノックされ、
一瞬身構えましたが、


「エリーゼ。入るよ。」

旦那様の声がしてホッと胸を撫で下ろしました。

旦那様がいらっしゃると、
侍女達が礼をし部屋から下がりました。


「エリーゼ。震えている。」


「これは、その…。」


「当たり前だよね…。怖い思いをしたんだから…。でもこれからは、何があっても私がエリーゼを守るよ…。だから、信じて欲しい。」


「…はい。ありがとうございます。」

不安な事は拭えないけれど、"私を守る"というその言葉に決意を感じた私は、この屋敷に私は1人じゃ無い。旦那様がいらっしゃる。そう思え、少し震えが収まるのでした。









…………………………


やがて日が暮れて夜になり、
屋敷の者が皆寝静まった後、
薄暗い廊下を、ランプを持って歩く者がいた。




カツン…カツン…。



その者は、ドアの前に着くと当たりを2度3度見渡し、静かに部屋に入っていった…。











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