旦那様の不倫相手は幼馴染

ちゃむふー

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5.あの日のこと

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私の頬に触れている旦那様の指が冷たい。
きっと、外からお帰りになってすぐこちらに来てくださったのですね。


「あの…。
 旦那様…?」


ハッとして、私の頬から旦那様の指が離れました。


「良かった…。うん、熱は無いようだね。顔色も悪く無い。」



「申し訳ございません、旦那様。
 恥ずかしながら、うたた寝してしまっていました…。」



「ふふっ。そうか。邪魔してしまって悪かったね。
帰ってきたのに、エリーゼの姿が見えないから部屋に来てみると、疲れて寝ていると聞いて…。また倒れてしまったかと取り乱してしまった…。びっくりさせてしまったね。」



(旦那様…。私の事をそんなに心配して…。)






(やっぱり旦那様は、いつでもお優しい。
私の事を大切にしてくださっている…。
伝わってくるのに。
信じなければいけないのに。
それなのに旦那様が分からない!!)




「エリーゼ…?」
旦那様が心配そうに私を覗きこんで、もう一度頬に触れようと手を伸ばされました。



私は咄嗟にその手を払い除けてしまいました。




「あっ…。も、申し訳ございませんっ。」
他の女性に触ったかもしれないその手で触って欲しく無い。そう思ってしまったのです。



「エリーゼ?やっぱりどこか具合が悪いのかい?」


「いえ、えっと…。」

うまく答えられない私を見て旦那様が、何かを悟ったように、



「そうか…。悪かったね。私に突然触られて…嫌だった??」

そう言う旦那様の泣きそうで、傷付いた顔を見て、私は心がチクリと痛む。



(なんで旦那様がそんな顔をするの!?
他の女性と腕を組んで歩いて!!宝石店に入って!!アクセサリーをプレゼントして!!オマケに愛人が乗り込んできたのよ!?
泣きたいのはこっちの方よ!!)

怒りがフツフツ上がってきた。


「もう、勝手にエリーゼに触れないよう努力するよ…。」

そう言って立ち上がり、部屋を出て行こうとする旦那様。


「………っのくせに!!!」



「…えっ?」
旦那様が振り返り驚いた表情をしているけど、もう止まらない。



「他の女性には簡単に触れるクセに!!!」

もう言葉遣いもめちゃくちゃだ。


「エリーゼ?いつ私が他の女性に触れるようなことがあったの?」



「私、見たんだからっ!
 旦那様がっ!カレン様と仲良さげに腕を組んで宝石店に入って行く所をっ…!!
私っ私には!!あんな風に!触れてくださらないのにっっ!!」


嫌だ。こんな風に話し合うつもりじゃなかったのに。
でも、言葉も涙も止まらない。
執事のセバスチャンも、侍女のマリアも見ているのに。
こんな妻は追い出されてしまうかもしれないのに。




「エリーゼ、落ち着いて?」


旦那様が、目配せしてセバスチャンとマリアを部屋から出す。妻のこんなみっともない姿見せたくないわよね…。





「カレンと…?あぁ、ジルと視察に行った日だね。仲良さげに…では無かったと思うけど…。
あの日エリーゼも城下町にいたんだね。見かけたなら声をかけてくれたら良かったのに…。」




「はぐらかさないでくださいっ!
 旦那様が…他の女性と腕を組んで宝石店に入って行く姿なんて見て、声をかけられるわけ無いですわ!!
しかも…。ジル様と視察に行ったなんて嘘までつかれて…。」




「嘘なんてついていないよ。」



「私っこの目で見ました…。」



「いや、ジルと視察にも行ったし、城下町にもいったし、カレンにも会った。
うーん…。ちょっと長くなるけど聞いてくれる?」




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