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31.オディロンの正体(ラウル視点)

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ーーーーラウル視点



「ラウル様っ…」

屋敷を出て行こうとすると、侍女のリアーナに呼び止められる。


「どうしたんだい?」

「お仕事の前に申し訳ございません…しかし、どうしても気になってしまって…ラウル様にお聞きする事では本来無い事かもしれませんが…その…オディロンは…」


気まずそうにリアーナが言葉を選んで話す。


「オディロンはとりあえずは元侯爵家にいる。今日、変わらず私達の元で働いてくれないか声をかけてくるつもりだ」


オディロンはバラレンド元侯爵家の内情をこちらに流し、元侯爵領の領民の為に尽力した。

元侯爵家に罪はあっても、使用人には罪は無い。何も咎められないはずだ。


私がそう言うと、リアーナの心配そうな顔が明るくなった。


「ラウル様!ありがとうございますっ…!オディロンの事…よろしくお願い致します…!」


そう言って頭を下げるリアーナ。

なるほど…。
リアーナはきっとオディロンの事が…。


「分かったよ…。あ、フレミアはきっと疲れているだろうから夫婦の部屋に朝食を運んであげて」


「ふふ、きっとそうでしょうね。かしこまりました」


「では、行ってくる」


そう言って屋敷を出た。








王宮での仕事をこなし、ひと段落して元バラレンド侯爵家へ向かう。


牢獄にいる3人の様子を見に行こうともした。

フレミアの父は大人しく反省の意を見せているようだが、

フレミアの義母は、
「ラウルに!いえ、私の義息子に会わせろ!」
と叫んでいて、

ジュリーは
「私の旦那様に会わせて!」
と叫んでいるようだ。


今はこの2人の様子を見に行くべきでは無いと判断した。




バラレンド元侯爵家の屋敷の扉を開く。

フレミアや使用人達がいた時とは違い、埃っぽく華やかさは無いが、荒れている事は無さそうだ。



「ラウル様。いえ、侯爵様。お疲れ様でした」

声がした方を振り返ると、オディロンがいた。


「もう聞いているか…。オディロン、ご苦労だったな。色々と尽力してくれて本当に助かった。オディロンの力無しでは侯爵家を断罪する事は出来なかった」


「いえ、お役に立てて光栄です」

オディロンが恭しく礼をする。


「それで…オディロンはこの先どうするんだ?君さえ良ければ、このままこの屋敷で私達の元で働いてくれれば嬉しいのだけど。君ほど優秀な執事は逃したく無い」

準備ができ次第ここにまた越してくる予定だ。

昨夜、ここの屋敷には嫌な思い出もあるだろうから、新しく住処を構えようかとフレミアに提案したところ、ここの屋敷にはフレミアの実母との思い出が詰まっている場だからと言って、ここに住む事にした。



「侯爵様…そう言って頂き大変嬉しく思います…。しかし、これを機会に田舎に暮らす両親に少し親孝行をしようと考えていまして…」


オディロンが申し訳無さそうに微笑む。


「ほう…私が知る限り、君の両親は亡くなっていると思うのだが…」


そう言うと微笑みは崩さないままにオディロンの眉がピクリと動く。


「……侯爵様?どこまでご存知なのですかね…?」


「恐らく、全て知っていると思うよ。君は出身を偽りこの侯爵家の執事になったようだね」


「偽ってなどいませんよ。私は準男爵家の息子ですよ。世襲できずに今はありませんが…」



「息子?では無いだろう。準男爵の娘の息子…そして君の父親は……」


オディロンの顔が感情の無い表情になる。


「前バラレンド侯爵……つまりフレミアの祖父だろ…?君とジュリーとフレミアの父元侯爵は皆腹違いの兄弟なのでは無いか?」


「…………よく分かりましたね……」


「君とジュリーとフレミアの父は、髪色は違えど瞳の色がよく似ていて、特徴的な耳の形がよく似てい……」

「似てなどいないっっっ!!」


いつも冷静なオディロンが遮り叫ぶ。


「すみません…。取り乱しました…はは、そうか…あの忌々しい奴に私も似ているのか……。そうです。ラウル様が言う通りです。私の母は、フレミア様のお父様が小さい頃家庭教師をしておりました…。しかし…前侯爵が母に言い寄り関係を強要し、母は私を妊娠しました。そして……それを知ったあの男は……!」

悔しそうな顔をして吐き捨てるように言う。


「母を追い出した……!」



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