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30.夫婦

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建国祭が終わり屋敷へ戻る。

少し遅くなったものの、屋敷へ入ると使用人の皆がズラリと並び笑顔で迎え入れてくれた。


「「旦那様!奥様!お帰りなさいませ!」」



旦那様と奥様だなんて…まだ少し照れくさい。


「「ただいま…」」

ラウル様と少し顔を見合わせて答えた…と思えば、


「さあさ、さあさ、奥様はお疲れでしょうから、すぐ湯浴みの準備を致しますね~!」


あれよあれよの間にリアーナに連れて行かれる私…。



リアーナの手により私の髪の毛とお肌はツヤツヤに仕上がっていく。

「あ、あのリアーナ…?いつもよりなんだか気合いが入っていない…?」


「当たり前ですわ!なんと言っても今夜はラウル様と夫婦になっての初めての夜ですもの!!」


「そう…だけれども…今日はラウル様もお疲れだし…もうお休みかもしれな」

「ラウル様に限ってそれはあり得ませんっ!!さ!できました。お綺麗ですよフレミア様、いえ奥様!」


そう言って上機嫌で部屋を出て行くリアーナ。


(リアーナがあんな風に言うから何だか意識してしまうわ…私、変じゃないかしら…)


自分の寝衣を確認していると、扉がノックされる。


「どうぞ」


「フレミア」


ラウル様が顔を覗かせる。
楽な格好のラウル様も素敵だ。


いつも通り、お茶を飲みながら向かい合い、今日あった事を話し合う。


「さぁ…今日は疲れたのでは?そろそろ休もうか。」

そう言ってラウル様が私に手を差し伸べる。


「はい…」


返事をして
差し伸べられた手をとる。


「抱きしめても…良いですか」


真っ直ぐ見つめられ胸が早鐘を打つ。
ラウル様の瞳に吸い込まれそうになる。

「…はい…」

返事をするや否やラウル様に抱き締められる。


「…フレミア…これからもっと大変な事もたくさんあると思いますが、どうかこれからも共に歩んで欲しい」


「…はい、はい…!」


もっとたくさん伝えたい言葉はあったのに、上手く言葉にできず、そっと抱きしめ返すと、急にフワリと身体が浮く。


(あれっ!?)

一瞬何が起きたのか理解できなかったが、ラウル様の顔が近づき状況を把握する。

お姫様抱っこをされている…!!


(ラッラウル様のお顔が近いっ!というかあんなに細くていらっしゃるのにこんなに私を軽々と…!いえ、ラウル様は護衛騎士でいらっしゃるから当たり前…!?ではなくてっっ!!あぁ…)

頭がオーバーヒートしてしまう…

ラウル様はそんな私を見て、満足気に微笑み寝床へ歩みを進める。


そしてそっと下ろされ口付けされる。

「フレミア…心から愛しています」

「私も…ラウル様を愛しています」


愛する人と身体を重ねる事ができる事の幸せを噛み締めるのだった…








そして朝…

「う…ん……」

小さな物音で目が覚める。

「あ、起こしてしまいましたか?よく…眠れましたか?」


ラウル様は既に制服を着てサーベルを腰に刺していた。

侯爵夫人初日より寝坊だ…


「おはようございます。ラウル様、もうお時間ですか…?申し訳ございません…」

「いや、フレミアの寝顔が可愛くて、私が起こしたくなかったのです。本当は今日くらいゆっくりしたいのですが…。まだバラレンド元侯爵家の後処理がありますからね」

義母、父、妹からの聴取や、処罰の決定、現状把握…確かにする事はたくさんあるだろう。

「ラウル様…お願いがあります」

「何ですか?」

「元実家への処罰を下す際、私も同席してもよろしいでしょうか…」

「それは可能だと思いますが……わかりました。そうしましょう」


義母や妹は良いが、最後に父に会いたい。そう思ったからだ。
きっとこの機会を逃せば会う事は2度と無いだろう。


娘として父親らしい言葉を貰いたいから…?
今までの事を謝って欲しいから…?

自分でも分からないが、会わないと後悔すると思った。



「では、行って参ります。本日、侯爵家にも行ってきます。そしてフレミア。もし……」


何か言いかけてラウル様が次の言葉に詰まる。


「もし…?」


「いえ、帰ってからお話します」


ラウル様は少し寂しそうに微笑み、部屋を出ていかれたのだった。




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