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29.残るは…
しおりを挟むーーーラウル視点
会場は張り詰めた空気になったが、
「さあ、仕切り直しだ!この国のこれからの更なる躍進を願って!建国祭を始めようでは無いか!」
陛下が仰るとそう声高々に宣言されると、皆が気を取り直し建国祭が始められるのだった。
各地方の報告や、次年度の計画など滞り無く進んでいく。
「フレミア、驚かせてしまいましたよね…。フレミアに気を持たせておいて上手くいかなければ申し訳ないと今日まで明かす事はできませんでした」
そう言うと、フレミアは微笑む。
「確かに驚きましたが…でも、ラウル様を信じておりましたから…侯爵領についても色々と動いてくださりありがとうございました」
……頑張ってよかった…!
その笑顔を見て心の中でガッツポーズをするのだった。
その後正式に皆にフレミアとの結婚を報告もし、夜のパーティーまで休憩となった。
皇子に礼を言わなければ…。
そう思い、私の両親と話すフレミアに声を掛ける。
「皇子も別室で休憩をされるようなので、挨拶へ行ってきます」
「分かりましたわ、私はここでお義母様達とおりますね」
軽く手を振り、皇子のいる部屋に向かい扉をノックする
「誰だ」
「護衛騎士ラウルです」
「入れ」
部屋に入ると、皇子が座りながら拳を高く掲げた
部屋に誰もいない事を確認し、私も拳をあげる。
「ラウル!良かったな、全て上手くいったじゃないか!ジュリー?だったか?あれには最後に驚かされたが…」
確かにあの場であの状況で私の妻になると声高々に言った時は幻聴かと思った。
「全て皇子のおかげです。ありがとうございました。」
「親友の危機だからな。これからも私の右腕として活躍してくれよ、もう私には頭が上がらないだろう」
そう言って笑う姿は本当に昔と変わらない。
「はい、勿論。仰せのままに」
そう言って頭を下げる。
「しかし…お前も気付いただろうが、バラレンド元侯爵家にはまだ少々闇があるようだな…。これで全てが終わりという訳にはいかないのでは無いか?」
「…はい」
今回の事でバラレンド元侯爵家について詳しく調べる機会が多い中、不可解な事が出てきた。
まずは、バラレンド侯爵家は、前侯爵夫妻(つまりフレミアの祖父母)が相次いで突然死している事だ。
毒の形跡も無く、病死とされているが偶然にしてはあり得ない。
2人は中々恨みを買う人物だったようだ。何者かに殺害された可能性がある。
次に、バラレンド元侯爵の後妻として入ったローゼというフレミアの義母…。
オディロンの話によると、前侯爵と愛人関係だったという…。
もしかするとジュリーはフレミアの妹ではなく、叔母に当たるのかもしれない。
フレミアの父は知っているのだろうか。
そして…。
オディロンだ。
私の予想通りだと………。
「難しい顔をしているな、ラウル」
皇子にそう言われ、我に帰る。
「そんな難しい顔をするな。今日は待ちに待った結婚初夜だろ?お前の事だから真面目に待ってたのだろう?」
皇子がからかうように言う。
「まぁ…それはケジメと言いますか…」
「ほら、愛する妻の元へサッサと戻れ!バラレンド元侯爵家の処遇は後日決めよう。それまで王宮の牢獄に入れておく」
そう言われ、頭を下げ部屋を出て会場に戻る。
フレミアを探していると、名も知らぬ令嬢達が群がってくる。
先程、フレミアとの結婚を発表した所なのにこの令嬢達は何を考えているのだろうか…。
適当にあしらいフレミアを探して周りを見渡していると…
「ラウル様」
可愛い声がしてそちらに目をやると、
「フレミア…」
誰よりも愛しい妻が微笑み小さく手を振っていた。
人混みをすり抜けフレミアの元へ向かう。
(うぅ…抱きしめたい……)
夜のパーティーは、
早く帰って妻を抱き締める事ばかり考えてしまうのだった。
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