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26.断罪開始

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ジュリーがアボン様からの手紙を奪い取った時に、私は忠告した。

アボン様は辞めておきなさいと…。


まさか、麻薬の栽培や密輸をしているとまでは予想していなかったが…。


それでも、アボン様が捕らえられ妹の目が覚めれば良い。そう思ったが、皇子の次の言葉にそれどころの話では無かった事に気付く。



「麻薬を栽培する事はかなり金がかかるが…アボンに金銭的に援助している貴族までいた…」


その言葉に、妹が青い顔になる。


(ま、まさか……!!)


「そうだろう、バラレンド侯爵よ!!」


会場中が騒つく。
それはそうだ。
侯爵家がワルヤーク伯爵家の悪行に金銭的に加担していたとすれば大きな問題だ。

思わず口に手を当て、ラウル様を見るがラウル様は何一つ驚いていない。



「で、殿下?あの、その失礼ですが…人違いではないでしょうか…私には何が何だか全く分かりません…」

バラレンド侯爵は、何が起きたか全く理解できていない様子だ。


「バラレンド侯爵よ。お前の娘ジュリーがアボンへ2500万ドリーを渡している事は明らかになっている」


「へっ!?ジュリー!?それは本当なのか!?」

バラレンド侯爵の声が裏返る。
本当に知らなかったようだ…。



「ちっ!!違う!!私はアボン様がそんな悪い事をしているなんて知らなかったのよ!!アボン様に借金があるって言うから!!それを返したら結婚できるって言うから!!」


妹が子どものように喚き始めた。


「結婚…?ジュリーとやらよ。お前はアイロワニー伯爵家のラウルと婚約を結んでいたと聞いている。病により婚約を解消したとも。しかしすぐにアボンと結婚とは…?」


妹とは反対に無表情で淡々と問い詰める皇子。


「そ、そ、それは…」

「まさか、顔だけを見てラウルと婚約を結び、ラウルが顔に傷を負った事で結婚が嫌になり病に臥せったと嘘をつき婚約を解消をしたのか?」


「あ、あの…」


皇子に言われた事が図星だった妹は、何も言えずその場にペタンと座り込んだ。

それでも皇子は続ける。


「ラウルの傷は、私を守り負った傷である!!それを侮辱するのならば、私を愚弄するのと同じだ!!」


皇子がそう叫ぶと、ジュリーだけではなく何名かの貴族令嬢もビクッと肩を震わせた。


先程ラウル様に話しかけてきた令嬢達もブルブルと震えている。


「殿下!確かに娘は未熟にも、顔の傷を怖がり婚約解消を願いました…。そしてワルヤーク伯爵家へも大金を渡してしまいました…しかし、それはこちらも騙されていたのです!金を渡せば結婚すると、娘はその言葉を信じてお金を渡してしまいました!麻薬栽培とは無関係です!どうか、どうかお許しを!!」


無礼にも、義母が横から皇子へ意見した。


「バラレンド侯爵夫人か。では、その大金はどこから捻出したのだ?」


「それは…侯爵家の蓄えからで…」


「近頃、バラレンド侯爵家の領民が大量の意見書を提出してきてな。そこには税が大幅に引き上げられ、更に侯爵家が何も統治せず治安が悪くなり命の危機を感じると訴えていた」


「なっ…!!あいつら!!」


「提出された帳簿を見てみると税が上げられたなんて記載されていない。これは…どういう事だ?」



「そ、それは…きっと領民が嘘を……」


「ほぅ。ここまで来てしらばくれるか。例の物をここに」

皇子がそう言って付き人に目配せすると、帳簿を皇子に手渡した。


「ここに、バラレンド侯爵家の正しい帳簿がある。提出された物と見比べると…中々懐に入れたようだな」


「そ、その帳簿は侯爵家の…!!なぜそこに!!!」


「私には優秀な臣下がいると言っただろう?なぁ、ラウル」


「勿体なきお言葉です、皇子」


(ラ、ラウル様が!?)



ラウル様が一歩二歩と前へ進み出て、皇子の前に立った。


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