上 下
26 / 36

25.嫌な予感(ジュリー視点)

しおりを挟む

ーージュリー視点


いよいよやってきたわ…!建国祭に!!


もう、お母様がモタモタしているから遅くなってしまったじゃないの…。
久しぶりにアボン様にお会いできて、お話できるチャンスなのに……

さぁ、アボン様はどこかしら…?

会場を見渡すと、アボン様を見つけた。


久しぶりの再会だわ…!

お金を渡したあの日から連絡は無かったけれど、きっとワルヤーク伯爵の説得をされていたり、借金の整理が忙しかったに違い無いわ…!

きっと再会を喜び感動してくださるはずよ…!



そう思いアボン様に駆け寄ろうとすると、アボン様も私に気付いたようで目が合う。


が、アボン様が私を見る目は予想したものでは無かった。


(え?どうしてそのように汚い物を見るような目で見るの⁉︎そうだわ、連絡出来なかった事を気まずく思ってらっしゃるのね!)


「アボン様っ!会いたかったですわ!結婚の日取りはいつに致しましょう?」


アボン様が気にしないように明るく声をかける。


しかし、アボン様の次の言葉に耳を疑う事になる。


「な、何を言っているんだ?君は…」


「ど、どういう事ですの⁉︎」


「君は誰だ⁉︎誰かこの狂った令嬢を連れて行ってくれ!」


(く、狂った令嬢ですって!?)


「あら…?あれはバラレンド侯爵令嬢では無いですか…?」
「噂によると病で臥せっていると聞きましたが、随分お元気そうですわね」
「病では無くて、お気がふれてらしたのね」
「華の騎士様の次はアボン様を…?本当、綺麗なお顔が大好きなようね…」
「結婚ですって!妄想かしら?相手にされていないのに可哀想に…クスクス」


私たちの様子を見ていた周りの貴族達がクスクスと笑いながら囁き出した。


(しまったわ…!私は病気で寝込んでいる事になっていたわ…。アボン様!?冗談はここまでにして!!)


「アボン様っ⁉︎わ、私と結婚しようと仰って…」


周りの視線に耐えられず、思わずアボン様の腕に縋り付く。


その時。


「静粛にーー!!静粛にーー!!陛下、皇后、殿下のおなーーりーー!!」


そう号令がかかり、華々しく王家の方々が入場され、王座に着かれた。




「今日はこの国の建国祭であるぞ。この騒ぎは何だ。会場の外まで聞こえておるぞ」


そう言って陛下がこちらを見た。


すると、


「もっ申し訳ございません、陛下…!ジュリー!謝りなさい!!」


お母様が私の頭を掴んで頭を下げさせた。

(わ、私は何も謝るような事をしていないわ!!)


「おや?それにこの場に招かざる客が紛れ込んでいるようだな」


(招かざる客……?)


「先に地方の報告を聞いてから問いただそうと思っていたが、ちょうど良い。ルード。お前から話せ」


陛下が第一皇子であるルードヴィック皇子に促した。


「分かりました。では、陛下に代わり話します。この国で、栽培する事が禁止されている植物…つまり麻薬だ。それを密かに栽培し、隣国へ密輸している者が見つかった」


会場中が騒つく。

(そ、そんな人がいるなんて…!一体誰が!!)

他人事ながら驚く。そんな事したら重罪な事は元平民の私でも分かる。
国外追放….いや、死刑だろう…。



「そのような事をすれば重罪な事は誰でも知っている。そうだろう?ワルヤーク伯爵家の…アボンよ!!!」


「あ、あ、あ、アボン様ぁぁぁあ!?!?」


思わず叫んでしまう。

(嘘、嘘、嘘でしょう!?)

隣にいるアボン様を見ると、顔が真っ青になりガタガタと震えている。


「殿下、恐れながら私はそ、そ、そんな事していません…」

アボン様が震える声で答える。

「王家が証拠も無しにこのような事を言うわけが無いだろう?私にはとても優秀な臣下がいてな。密輸している記録、密輸相手、金の受取額まで全て調査済みだ!観念しろ!衛兵よ、アボンを捕らえよ!」


そう言われると、アボン様は力無くその場に膝から崩れ落ち、衛兵に肩を持ち上げられ無理矢理立たされ捕らえられた。

殿下は続ける。

「麻薬を栽培する事はかなり金がかかるが…アボンに金銭的に援助している貴族までいた…」


(アボン様が麻薬の栽培?密輸?それに……金銭的援助……?ちょっと待って……??まさかそれって……)

思い当たる節があり、血の気が引く。
膝が笑ってその場に崩れ落ちそうになる。



嫌な予感がする。



そして、次の殿下の言葉に嫌な予感は的中してしまった事を悟る。



しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

婚約破棄? 私の本当の親は国王陛下なのですが?

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢として育ってきたウィンベル・マリストル、17歳。 サンセット・メジラマ侯爵と婚約をしていたが、別の令嬢と婚約するという身勝手な理由で婚約破棄されてしまった。 だが、ウィンベルは実は国王陛下であるゼノン・ダグラスの実の娘だったのだ。 それを知らないサンセットは大変なことをしてしまったわけで。 また、彼の新たな婚約も順風満帆とはいかないようだった……。

婚約破棄に全力感謝

あーもんど
恋愛
主人公の公爵家長女のルーナ・マルティネスはあるパーティーで婚約者の王太子殿下に婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。でも、ルーナ自身は全く気にしてない様子....いや、むしろ大喜び! 婚約破棄?国外追放?喜んでお受けします。だって、もうこれで国のために“力”を使わなくて済むもの。 実はルーナは世界最強の魔導師で!? ルーナが居なくなったことにより、国は滅びの一途を辿る! 「滅び行く国を遠目から眺めるのは大変面白いですね」 ※色々な人達の目線から話は進んでいきます。 ※HOT&恋愛&人気ランキング一位ありがとうございます(2019 9/18)

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結】え? いえ殿下、それは私ではないのですが。本当ですよ…?

にがりの少なかった豆腐
恋愛
毎年、年末の王城のホールで行われる夜会 この場は、出会いや一部の貴族の婚約を発表する場として使われている夜会で、今年も去年と同じように何事もなく終えられると思ったのですけれど、今年はどうやら違うようです ふんわり設定です。 ※この作品は過去に公開していた作品を加筆・修正した物です。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。 結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに 「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……

処理中です...