上 下
22 / 36

22.最後の望み(義母視点)

しおりを挟む



そして数年後…。


風の噂で侯爵と侯爵夫人が立て続けに病死したと聞き、何とか色々な手を使い坊っちゃまと接触を図り、実はあの時の1度でお腹に子どもが宿り、貴方の子どもを育てている。だから侯爵家に連れて行けと詰め寄った。


お優しい坊っちゃまの事だ。
侯爵になった坊っちゃまに全ての権限があるはずだ。
すぐに喜び私を迎え入れる。

そう思っていたら……


「ローズ、すまない。私には妻がいるんだ。妻は両親に本当に苦労させられたんだ…それなのに侯爵家の為に頑張ってくれていて…。私もこれからは頑張って行きたいと思っているんだ。今から妻に少しでも罪滅ぼしをして行きたいと思っている。お金の事は何とかするから…すまないがもう関わらないでくれ…」



信じられない言葉が返ってきた。

本当にこれがあの坊っちゃま…?

私が居ないと生きていけなかった坊っちゃまが私を拒否した……??

私よりも妻の方が大切って事…??


……きっと…坊っちゃまの嫁だわ……

あんなに私に従順で可愛かった坊っちゃまを変えたのは……

あの女あの女あの女……!!!

アイツが居なければ坊っちゃまの隣には私がいたのに……!!


身分が高いっていうだけで難なく侯爵夫人になる事ができて…!!
前侯爵夫人どいつ侯爵夫人こいつも私を馬鹿にする…!



そうだわ…確か……
坊っちゃまの妻はよく領地に視察へ来ると言っていたわね…


……アイツが居なくなれば……







そして1年後…チャンスが巡ってきた。
バラレンド侯爵夫人が乗って来た馬車を領地で見つけたのだ。
このチャンスを逃すまいとジュリーを使い従者の気を逸らさせ、車輪の軸を斧でへし折っておいた。



(ふふふ、これで侯爵家へ戻る道中に大怪我でもして実家に帰れば良いわ)



そうすると何と、その1ヶ月後領地に侯爵夫人の訃報が伝えられたのだった。




(きっとあの時に大怪我でもしてそれが原因で死んだのよ!やったわ!!)



私は嬉々として侯爵家へ向かい(多くの人が挨拶等で出入りして居た為簡単に入る事ができた)、坊っちゃまに再び詰め寄った。

「坊っちゃま!私が居ますわ!!娘と共に私を侯爵家へ入れてくださいっ」


もう断る理由が無いからか、
あの女の呪縛が解けたからか、


「あぁ………」


力無くそう答え私を迎え入れ、その後も私がする事に何も異論を唱える事も無かった。



その後遂に、あの女の娘フレミアまでも追い出し全ては上手く行ったと思っていたのに……。





昔の事を思い出していると、扉がガチャっと開く音がした。




「あ、お母様~!どうしたんですか??私も言いたい事があったんです!もうすぐ建国祭じゃないですかー?私、新しいアクセサリーが欲しいけどお金無いからください!」


娘の言葉に目眩がする。


「ジュリー!貴女勝手に家のお金に手をつけたでしょう!返しなさい!!」


「え?無理ですよー!アボン様、借金があって困ってて…でも、結婚したら夫婦のお金ですし良いかなと思って…建国祭でプロポーズされるんです!」


借金がある伯爵家の息子なんて必要無い…。
そしてきっとアボンは返す気は無い…。娘の事だから書類で手続き等もしていないだろう。娘は騙されたに違いない…。


思わず絶望で倒れそうになる。


(ど、どうすれば…建国祭…そうだ!!)


建国祭にはアイロワニー伯爵家や、フレミア達も参加するはずだ。


「アイロワニー伯爵家に慰謝料請求をするわ!ラウルの顔の傷のせいで破談になり、お金を騙し取られたのだから責任を取って貰うわ!ジュリー!貴女は目一杯着飾り、何としても金持ちの貴族令息を捕まえなさい!!」


「お母様!私はアボン様がいるのだから!でも、着飾るのは大賛成よ」




……建国祭まであと2日。
何としてでも伯爵家から慰謝料をむしりとり、ジュリーの良き婚約者を見つける…!!


そして、この侯爵家を何としてでも立て直して見せる…!!







しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

婚約破棄? 私の本当の親は国王陛下なのですが?

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢として育ってきたウィンベル・マリストル、17歳。 サンセット・メジラマ侯爵と婚約をしていたが、別の令嬢と婚約するという身勝手な理由で婚約破棄されてしまった。 だが、ウィンベルは実は国王陛下であるゼノン・ダグラスの実の娘だったのだ。 それを知らないサンセットは大変なことをしてしまったわけで。 また、彼の新たな婚約も順風満帆とはいかないようだった……。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】え? いえ殿下、それは私ではないのですが。本当ですよ…?

にがりの少なかった豆腐
恋愛
毎年、年末の王城のホールで行われる夜会 この場は、出会いや一部の貴族の婚約を発表する場として使われている夜会で、今年も去年と同じように何事もなく終えられると思ったのですけれど、今年はどうやら違うようです ふんわり設定です。 ※この作品は過去に公開していた作品を加筆・修正した物です。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

姉の物を奪いたい妹と、等価交換の法則に従って行動する姉

マーサ
恋愛
年齢不相応に大人びた子供だった姉イレーナと無邪気に甘える妹ハンナ。どちらを両親が可愛がるかは火を見るより明らかだった。 甘やかされて育ったハンナは「姉の物は自分の物」とイレーナの物を奪っていくが、早くから社会経験を積んだイレーナは「世の中の真理は等価交換」だと信じ、ハンナの持ち物から等価値の物と交換していた。 物を奪っても上手くいかないハンナは、イレーナの悔しがる顔見たさに婚約者を奪い取る。 「私には婚約者がおりませんから、お姉様お得意の等価交換とやらもできませんわね」 王家主催のパーティで告げるも、イレーナは満面の笑顔で「婚約破棄、承知いたしました」と了承し……。 ★コメディです ★設定はユルユルです ★本編10話+おまけ3話(執筆済み) ★ざまぁはおまけ程度

私が張っている結界など存在しないと言われたから、消えることにしました

天宮有
恋愛
 子爵令嬢の私エルノアは、12歳になった時に国を守る結界を張る者として選ばれた。  結界を張って4年後のある日、婚約者となった第二王子ドスラが婚約破棄を言い渡してくる。    国を守る結界は存在してないと言い出したドスラ王子は、公爵令嬢と婚約したいようだ。  結界を張っているから魔法を扱うことができなかった私は、言われた通り結界を放棄する。  数日後――国は困っているようで、新たに結界を張ろうとするも成功していないらしい。  結界を放棄したことで本来の力を取り戻した私は、冒険者の少年ラーサーを助ける。  その後、私も冒険者になって街で生活しながら、国の末路を確認することにしていた。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

処理中です...