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18.始動2
しおりを挟む伯爵領に来てからも毎日がとても忙しい。
あっという間に建国祭まであと数日となった。
隣の領地とはいえ、風習や領地の特色など、異なる事がたくさんあり学ぶ事が山積みだ。
バラレンド侯爵領では染物が盛んであるが、ここでは織物が盛んだ。
(彼等が染めた糸で織れば最高の品物が出来上がるわ)
そんな事を考える。
領地の視察にも行ける日にはなるべく行くようにした。
今では領民達も私を受け入れてくれるようにまでなった。
ラウル様も日に日に忙しさが増しているようで、帰りも遅い。
「ラウル様…大変でしたら王宮に泊まられたらどうでしょうか…私は大丈夫ですから…」
会えなくなるのは寂しいが、ラウル様が身体を壊してしまう事の方が辛い。
「大丈夫です。私がフレミアに会いたくて…フレミアに会えば疲れなんて吹っ飛ぶのです」
「ラウル様…。ありがとうございます。私もラウル様に毎日会う事ができて嬉しいです。近頃はやはり建国祭の件で忙しいのですか?」
「それもありますが、先日王宮の方に大量の嘆願書が届けられまして。そこには、"ある領地では税を引き上げられた上、新たに沢山の課税を強いられている。治安は悪くなったのにも関わらず、領地の自警団は給与が払われず機能していない"と記されていたのです」
「そ、その領地ってまさか……」
「はい。フレミア様の予想通りバラレンド侯爵領です。しかし、侯爵家から提出された帳簿には税を上げた記載はありません」
「それは……」
おそらく不正だ。
領民への税を引き上げて、帳簿には以前通りの税しか徴収していないように記載し、多く徴収した分を懐に入れているのだろう。
(あれだけ帳簿の重要性を伝えたのに……!)
「私は領地も隣りという事で侯爵領の調査を受け持っているのですが、やはり不正は確かなものでした」
「そうですか…では…父達はきっと罰を与えられるでしようね…」
忠告を聞かなかったあの人達は仕方の無い結果だ。
しかし…領民達は大丈夫だろうか…。
「早く見つける事ができたので領民達への深刻な被害は少ないようです。すぐに解決されると思いますよ」
「そうですか…」
しかし、王宮に嘆願書をまとめて届けるなんて誰が取りまとめたのだろうか…
王宮に入る事ができるのは貴族の中でもそう多くは無い。
「そして…その上、別件で別貴族が認められていない植物を栽培していて、更にそれを金銭的に援助している貴族もいるようで…そちらの調査もあり今王宮は役職関係なく皆忙しいのですよ」
「まぁ…ラウル様。どうかお身体を大切にされてくださいね」
「フレミア、ありがとうございます。でも…もうすぐ全て決着が着きます。そう全て…」
ラウル様が遠い目をして少し考え込む。
「ラウル様…?どうかされましたか?」
「いえ…何ともありません。さぁ、休みましょうか。あぁ、早くフレミアと本当の夫婦となりたいです。その日を楽しみに頑張りますね」
(ほっ本当のとは…!?婚約ではなくて正式に結婚をするという意味よね!?)
顔を真っ赤にしていると、
「おやすみなさい」
そう言って、私の髪の毛を少しすくい上げ髪にキスをして部屋を出ていかれるのだった。
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