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1.突然の提案

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「私、あんな醜くて恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!毎日あんな顔を見るなんて死んだ方がマシだわ!!」



そう言って両親に泣きついているのは、ジュリー・バラレンド。侯爵令嬢であり、私の腹違いの妹だ。



私はフレミア・バラレンド。
バラレンド侯爵家の長女である。



「ジュ、ジュリー、今更そんな事を言わないでくれないか…?ジュリーがどうしてもアイロワニー伯爵家のラウル殿と結婚したいと言ったから何とか婚約を取り付けたのだ…。なのに今更こちらから婚約解消なんて世間に何と言われるか…」


気の弱い父はおどおどしてジュリーを宥めている。



「だって!!こんなの私が騙されたも同然じゃない!!この国中の女性を虜にしていたラウル様が、婚約後にあんなに醜い顔になるなんて!!」


そう言って妹は突伏して泣き始めた。



妹の婚約者であるアイロワニー伯爵家の次男であるラウル様は、20歳という若さで皇子の護衛騎士を務めている。


ラウル様はこの国の全ての女性達を虜にする程美しい外見の持ち主で、『華の騎士様』と呼ばれていた。



ジュリーはそんなラウル様に一目惚れをし、両親に頼み込んでラウル様と婚約に漕ぎ着けたのだった。



しかし婚約後に程なくして、皇子が何者かに狙われた。


護衛騎士達の働きにより事なきを得て刺客も捕まったが、皇子を庇ったラウル様は顔に大怪我を負ってしまったのだった。


一命は取り留めたものの、刃物に毒が塗ってあったのか顔の半分は青紫に変色して、大きな傷跡が残り、片目に眼帯をしなければならなくなってしまった。





その姿を見た人達は急に手のひらを返したように、今まで華の騎士様だと言っていたラウル様の事を、『醜草の騎士』と呼ぶようになった。



妹ジュリーもその1人だった。





「そうよ、あんな醜い顔になったラウルが悪いわ!ジュリーは悪くないわ。むしろ婚約解消の為に慰謝料を払って欲しいくらいだわ!あぁ、可哀想なジュリー!」


そう言ってジュリーの髪を撫でて励ます義母。
これはなんの茶番劇なのだろうか…。


「し、しかし…ラウル殿は皇子を守って傷を負ってしまった…いわば名誉ある傷だ…。それを理由にこちらから婚約破棄なんてしてしまえば、ラウル殿の事を気に入っている皇子も何と言うか……」


父が口をもごつかせながら答える。





「そんな事言ったって……!そうよ!!私の代わりにフレミアお姉様!!フレミアお姉様がラウル様の所へ行ってよ!!!それが良いわ!!!」





妹が閃いたように私に言うのだった。





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