ミシオン王子とハトになったヴォロンテーヌ

ねこうさぎしゃ

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第四章

その6

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 ヒュブリス国王はミシオン王子にそれまでの非礼を詫び、今後はミシオン王子と王子の国のために忠義を尽くすことを誓い、自ら国を王子に差し出しました。
 戦いに勝利したミシオン王子たちは、勝鬨《かちどき》をあげながら国に帰還しました。しかし凱旋の途中、それまでずっと王子のそばを離れることなく飛んでいたヴォロンテーヌがさっとどこかへ飛んで行ってしまいました。ミシオン王子は飛び去るヴォロンテーヌを追いかけようとしましたが、共に戦った兵士たちが歓声を上げてミシオン王子を取り囲んで歩いたので、王子は気持ちを抑えてひとまずはそのまま国に戻ることにしました。
 王子が国に入ると、待ち構えていた国民が熱烈にミシオン王子と王子の軍を迎えました。やがて一行が王宮に戻ると、王宮の前の広場にパラン国王とジェニトリーチェ王妃が待っていました。ふたりは王子とその軍を称え、皆に褒賞を出すことを宣言しました。それから、改めてミシオン王子を称賛しました。
「王子よ、なんと素晴らしき、雄々しき我が息子。おまえはこの国の英雄だ。王子には特別な褒美をやろう。なんでも望みを言うがよい」
 ミシオン王子は両親の前に膝をつくと、
「それでは、ここにいるリーデルを、我が国の軍の将としてください。彼はわたしの危機を何度も救ってくれました。この度の戦いでも、兵たちをうまく指揮し、その活躍はめざましいものでした。彼こそ英雄です。リーデルの功績を讃えてください」
 そう言った後、ミシオン王子はリーデルを振り返り、
「リーデル、これからも我が軍の将として、わたしの相談役として、そして無二の友人として、わたしを助けてくれないか」
 リーデルはミシオン王子の言葉に驚いていましたが、すぐに膝をついて王子に頭を垂れました。
「ミシオン王子、すべてあなたの仰せのままに」
 リーデルの活躍を間近に見ていた兵士たちにも異論はなく、リーデルを讃えて歓声を上げました。その様子を見ていたパラン国王は満足そうに頷いて、王子の望み通りにすることを約束しました。
 ミシオン王子は更に深く両親の前に頭を下げると、きっぱりとした口調で言いました。
「それから、ヴォロンテーヌとの結婚をお許しください。ヴォロンテーヌはか弱きハトになっていながら、勇敢にもわたしと共に戦い、自分の命をかけて何度も敵の槍からわたしを守ってくれました」
 と願い出ました。
 それを聞いた兵士たちはあの苛烈を極めた戦場で、ミシオン王子を守り、自分たちの士気を高め続けてくれたハトが、ひとりの乙女であることを知って驚きましたが、口々にヴォロンテーヌを褒め称えだしたので、パラン国王とジェニトリーチェ王妃は困惑して渋い顔をしました。
「しかし、王子よ。ハトになってしまった娘との結婚など、聞いたこともない」
「それに、ハトの娘さんは今どこにいるのです?」
  両親の問いかけに、ミシオン王子はかたい決心のあらわれる目を上げました。
「父上、母上。わたしはヴォロンテーヌを心から愛しています。ヴォロンテーヌがハトであろうとも、わたしの気持ちに変わりはありません。わたしはヴォロンテーヌを捜しに参ります。どれだけ年月がかかっても、必ずヴォロンテーヌを見つけ出します」
 ミシオン王子のヴォロンテーヌへの強く純粋な愛に、パラン国王もジェニトリーチェ王妃も心を動かされると共に、臆病で我が儘だった自分たちの息子である王子が、一途に愛を貫こうとしている気高い姿を見て、王子がすっかり別人のように変わったのもヴォロンテーヌという娘のおかげかもしれないと思いました。そしてそこにいたすべての人々も、皆一様にミシオン王子の愛の強さを感じて、ひしひしと沸き上がる感動に心を打たれていました
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