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第三章
その14
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ヒュブリス国王は、まるで憐れむような色をにじませて自分を見るミシオン王子にすっかり腹を立て、大声で叫びました。
「なんだその目は……! 貴様、わしを愚弄する気かっ。もうよい、首を洗って待っているがよいぞ!」
ヒュブリス国王はそう言うと、足音も荒々しく牢の出口に向かって歩きながら怒鳴りました。
「誰か、この愚かな王子の牢の前に立て! 怪しい動きをするようなら即刻首を刎ねろ!」
すると屈強なふたりの兵士が走って来て王子の牢の前に立ち、鋭い目でミシオン王子を睨みつけました。
ミシオン王子は静かに冷たい石の床の上に座りました。やがて固いパンと泥の混じった水が運ばれて、乱暴に牢の前に置かれたので、王子は牢のすき間から手を伸ばして引き寄せると、パンをちぎって自分の口に入れる合間に、兵士たちにわからないように気をつけながら、懐のヴォロンテーヌのくちばしの上にも落としたので、ヴォロンテーヌもできるかぎり体を動かさないように気をつけながらパンのかけらを食べました。
と、そのとき突然牢の入り口から大きな物音や叫び声が聞こえて騒がしくなったので、ミシオン王子の牢の前に立っていた見張り番の兵士がひとり、何事かと駆けて行きました。しかし騒ぎは収まるどころかますます激しさを増しながら、だんだんとミシオン王子のいる牢の方に近づいてくる様子だったので、残った兵士も急いで音のする方に走って行きました。
その瞬間、ヴォロンテーヌはミシオン王子の懐から素早く飛び出て、細い格子の間を身をねじ込むようにしながら通り抜けると、石壁に掛かっていた牢の鍵をくちばしに引っ掛け、ミシオン王子の牢の前に戻って来て投げ入れました。
「ありがとう、ヴォロンテーヌ!」
ミシオン王子は素早く鍵を拾うと牢の中から手を出して錠前に差し込み、急いで扉を開けました。そして傍らを飛ぶヴォロンテーヌと共に、出口を目指して勢いよく走りだしました。しかし角を曲がった途端、ちょうど相手も向こうから走って来ていたらしい大きな体の持ち主と、正面からぶつかってしまいました。ミシオン王子は半ば跳ね飛ばされる格好になりながら、しまったと思ってなんとか体勢を整え直して身構えようとしましたが、それより早く、
「ミシオン王子!」
と、ぶつかった相手が嬉しそうに叫んだのを聞いてよく見てみると、それはリーデルでした。
「リーデル! どうしてここへ?!」
「ルーメンに王子の危機だと言われ、ヴォロンテーヌの後について行くよう言われたのです」
リーデルは、王子のすぐそばでせわしなく羽をはばたかせている白いハトの姿のヴォロンテーヌを感慨深く見ながら言いました。
「とにかく、今はすぐさまここを出ましょう」
リーデルはそう言うと、先頭に立って出口に向かって走り出しました。途中、数人の兵士たちがぐったりと倒れている横を駆け抜けながら、リーデルは王子を振り返ると、
「数時間したら目を覚ましますよ」
と、笑いながら片目をつぶって見せたので、緊迫していた気持ちに少しゆとりが出て、ミシオン王子は思いがけずリーデルに出会えたことを感謝し、ますます心丈夫な思いになりました。
「なんだその目は……! 貴様、わしを愚弄する気かっ。もうよい、首を洗って待っているがよいぞ!」
ヒュブリス国王はそう言うと、足音も荒々しく牢の出口に向かって歩きながら怒鳴りました。
「誰か、この愚かな王子の牢の前に立て! 怪しい動きをするようなら即刻首を刎ねろ!」
すると屈強なふたりの兵士が走って来て王子の牢の前に立ち、鋭い目でミシオン王子を睨みつけました。
ミシオン王子は静かに冷たい石の床の上に座りました。やがて固いパンと泥の混じった水が運ばれて、乱暴に牢の前に置かれたので、王子は牢のすき間から手を伸ばして引き寄せると、パンをちぎって自分の口に入れる合間に、兵士たちにわからないように気をつけながら、懐のヴォロンテーヌのくちばしの上にも落としたので、ヴォロンテーヌもできるかぎり体を動かさないように気をつけながらパンのかけらを食べました。
と、そのとき突然牢の入り口から大きな物音や叫び声が聞こえて騒がしくなったので、ミシオン王子の牢の前に立っていた見張り番の兵士がひとり、何事かと駆けて行きました。しかし騒ぎは収まるどころかますます激しさを増しながら、だんだんとミシオン王子のいる牢の方に近づいてくる様子だったので、残った兵士も急いで音のする方に走って行きました。
その瞬間、ヴォロンテーヌはミシオン王子の懐から素早く飛び出て、細い格子の間を身をねじ込むようにしながら通り抜けると、石壁に掛かっていた牢の鍵をくちばしに引っ掛け、ミシオン王子の牢の前に戻って来て投げ入れました。
「ありがとう、ヴォロンテーヌ!」
ミシオン王子は素早く鍵を拾うと牢の中から手を出して錠前に差し込み、急いで扉を開けました。そして傍らを飛ぶヴォロンテーヌと共に、出口を目指して勢いよく走りだしました。しかし角を曲がった途端、ちょうど相手も向こうから走って来ていたらしい大きな体の持ち主と、正面からぶつかってしまいました。ミシオン王子は半ば跳ね飛ばされる格好になりながら、しまったと思ってなんとか体勢を整え直して身構えようとしましたが、それより早く、
「ミシオン王子!」
と、ぶつかった相手が嬉しそうに叫んだのを聞いてよく見てみると、それはリーデルでした。
「リーデル! どうしてここへ?!」
「ルーメンに王子の危機だと言われ、ヴォロンテーヌの後について行くよう言われたのです」
リーデルは、王子のすぐそばでせわしなく羽をはばたかせている白いハトの姿のヴォロンテーヌを感慨深く見ながら言いました。
「とにかく、今はすぐさまここを出ましょう」
リーデルはそう言うと、先頭に立って出口に向かって走り出しました。途中、数人の兵士たちがぐったりと倒れている横を駆け抜けながら、リーデルは王子を振り返ると、
「数時間したら目を覚ましますよ」
と、笑いながら片目をつぶって見せたので、緊迫していた気持ちに少しゆとりが出て、ミシオン王子は思いがけずリーデルに出会えたことを感謝し、ますます心丈夫な思いになりました。
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