ミシオン王子とハトになったヴォロンテーヌ

ねこうさぎしゃ

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第一章

その3

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 王子は貧しい村々を渡り歩き、熱心な目で人々の様子を見ていました。ある村ではボロ布を着た小さな子どもが数人、王子の前にやって来て、食べ物を恵んで欲しいと乞いました。しかし食べ物を持っていなかった王子は、代わりに何枚かの金貨を渡そうとしましたが、子どもたちは首を振りました。お金をもらっても、買うべき品物がなかったからです。



 ミシオン王子が馬上で途方に暮れたようにしているのを見て、お供の貴族たちは、まるでハエを追い払うように子どもたちを押しのけました。
 やがて一行は、深い森の中に入りました。この森のどこかには、精霊たちの秘密の宮殿があり、信じられないくらいの宝物が隠されているという古い伝説があったので、貴族たちは今こそ真実を暴くときだと言って、どんどん奥に進んで行きました。万が一ほんとうに宮殿があれば、宝物を奪ってしまおうと考えていたのです。
 ミシオン王子は今しがた見た光景のことに気を取られていたので、我先にと馬を進める貴族たちの後を、ぼんやりとついて行っていました。そのため、森の中で道に迷ったことに、しばらくの間気がつきませんでした。日が落ちて、オオカミの遠吠えが夜の森に響くのを耳にすると、お供たちは一様に怯えて、恐怖に駆られた何人かが、闇雲に馬を走らせました。
 王子を含む残った者で、慌てて追いかけて行きましたが、崖があることに気がつかなかったお供たちは、馬もろとも落ちて、みんな死んでしまいました。
 ひとりきりになった王子はお供の貴族たちの死を悼みましたが、オオカミの声が間近に迫ったのを感じ、その場を立ち去りました。帰り道もわからず、すっかり途方に暮れましたが、不思議と心には何の恐れもありませんでした。
 しばらく森を彷徨っていると、ミシオン王子は幹のところに大きな洞《うろ》のある木を見つけ、馬の手綱を手近の枝にくくりつけて、自分はその洞の中で一晩を明かしました。


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