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Ⅰ
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「ところで、ピエール。なにやら、さきほどから、ぶつぶつとひとりごとでも言っているようでしたが、いったいどうしたのですか」
「どうもこうもないさ。俺は、もうずいぶんと長いこと、ここに打ち捨てられたままなのさ。なんだって俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。それを思うと腹立たしくて、情けなくて。なんだってあいつは、もっとしっかり俺のことを抱いておかなかったんだ」
「あいつ?」
ピエールは投げやりなため息をつきました。
「エレーヌ・ロームのことさ。俺の持ち主だった女の子だよ」
シャルルはステッキを左手に持ちかえると、帽子の位置をちょんちょんと直しながら言いました。
「なるほど。そのエレーヌ・ロームと言う子は、いまはどうしているのです?」
「さあね。俺の知る由もないさ」
「それで、あなたはどうしてここに置き去られることになったのですか」
ピエールの破れた耳が、一瞬ぴくりと震えるように動きました。それから低い声で、事の顛末を話し出しました。
「どうもこうもないさ。俺は、もうずいぶんと長いこと、ここに打ち捨てられたままなのさ。なんだって俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。それを思うと腹立たしくて、情けなくて。なんだってあいつは、もっとしっかり俺のことを抱いておかなかったんだ」
「あいつ?」
ピエールは投げやりなため息をつきました。
「エレーヌ・ロームのことさ。俺の持ち主だった女の子だよ」
シャルルはステッキを左手に持ちかえると、帽子の位置をちょんちょんと直しながら言いました。
「なるほど。そのエレーヌ・ロームと言う子は、いまはどうしているのです?」
「さあね。俺の知る由もないさ」
「それで、あなたはどうしてここに置き去られることになったのですか」
ピエールの破れた耳が、一瞬ぴくりと震えるように動きました。それから低い声で、事の顛末を話し出しました。
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