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第一章
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しおりを挟むヒツジがいつも思い出すのは、農場のおじいさんと過ごした星のきれいな夜のことでした。
ヒツジはときおり、仲間たちが寝しずまったあと、犬を連れたおじいさんに迎えに来てもらって、満天の星の輝く夜の牧草地に連れていってもらうことがありました。そして皆で草むらに座って、きらきらと輝く星空を眺めたのです。
北の空にはポラリスという星が誇り高そうに輝いていて、その白くきらめくとくべつな星から、七つの光をむすんでいくと、こぐま座という星座になるのだと、おじいさんはヒツジに教えてくれました。おじいさんはそのほかにも、いろいろな星座のなまえを教えてくれました。
ヒツジはおじいさんが星を指し示しながら教えてくれる星座のなまえを、ひとつひとつ、草を食むように覚えていったものでした。
教えてもらった中には、おひつじ座というものもありました。ヒツジは、おじいさんに寄り添うように座って、美しい星空を見上げながら、あれがヒツジみたいに見えるという人間は、ほんとうに不思議なものだなぁと思っていました。
ヒツジには、ひとつひとつの星をむすぶということ自体が不思議で仕方ありませんでした。なぜなら、星たちはとても個性的で、おどったりうたったりしているのや、眠ったり考えごとをしているのや、ひとつとして同じものはなかったので、どれかとどれかを線でつないで、まったくべつのなにかに見立てるなんて、とてもできそうになかったからです。
それでも、ヒツジはたくさんの星座のなまえをおぼえました。季節ごとに、夜空をいろどる星座がかわるということも知りました。
けれどヒツジには、いつまで経っても、星はやっぱりそれぞれがとても美しすぎて、そんな星たちから、ちがうなにかを見出すということはできませんでした。
でもヒツジにとっては、星座について理解することよりも、おじいさんとそうやって過ごす夜のひと時のほうがずっと大切だったのです。
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