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月にのぼった野ねずみの一家~シャルル・ド・ラングシリーズ2
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ジェラルドは、もう嬉しくて楽しくて仕方がありませんでした。大笑いしながらギィに飛び掛かったり、逆に飛びつかれたりしながら、ひしひしと幸せを噛みしめました。
二匹は遊び疲れると、柔らかくて心地よい月の上に仲良く並んでごろりと寝転がりました。ブルーベリーのジャムよりももっと濃い藍色の空を眺めていると、ギィが感心したようにジェラルドに話しかけました。
「ジェラルド、ほんとうに強くなったなぁ。それに、昔はぼくの方がほんの少しだけ大きかったのに、もうジェラルドの方が大きいんじゃないかな」
「そうかな? ぼく、毎日みたいに、お父さんとレスリング遊びをして特訓してるんだ」
「うん、きっとそのおかげだね。すっかり力持ちになっているみたいだ」
「ほんとう? ほんとうにそうならいいな。ぼく、強くなりたいんだ。今度は大切な誰かを、ぼくが守れるように」
ギィはそれを聞くと、にっこりと笑いました。
「きみならできるさ」
「うん。……ねぇ、ギィ兄さん」
「なんだい?」
「ほんとうに、ありがとう……」
ギィは体を起こすと、ジェラルドを優しいまなざしで見ました。ジェラルドも起き上って、真剣な表情でギィを見つめました。ギィが何か大切なことを言おうとしていることがわかったからです。
「ジェラルド、ぼくからひとつ、きみに頼みがあるんだ」
「うん、なんでも言って。ぼく、なんだってするよ」
「約束してほしいんだ。ぼくの分まで、精いっぱい生きるってこと」
ジェラルドは思わず息を止め、ギィを見ました。
「ジェラルド、ぼくはこれからも、きみの中で生き続ける。だからきみは、きみ自身とぼくの分、二匹分の一生を精いっぱい生きる。楽しいときは二匹分楽しんで、悲しいときはその悲しみをぼくと分け合う。そうやって、大人になってからも、ずっとぼくをきみの中に住まわせて生きていく。どうかな? 約束してくれるかい?」
ジェラルドはあふれた涙をごしごしと腕でぬぐうと、ギィを見つめて何度もうなずきました。
「約束するよ。兄さんの分まで、兄さんと一緒に、力いっぱい生きる……」
「ありがとう、ジェラルド」
二匹は固く抱き合いました。
二匹は遊び疲れると、柔らかくて心地よい月の上に仲良く並んでごろりと寝転がりました。ブルーベリーのジャムよりももっと濃い藍色の空を眺めていると、ギィが感心したようにジェラルドに話しかけました。
「ジェラルド、ほんとうに強くなったなぁ。それに、昔はぼくの方がほんの少しだけ大きかったのに、もうジェラルドの方が大きいんじゃないかな」
「そうかな? ぼく、毎日みたいに、お父さんとレスリング遊びをして特訓してるんだ」
「うん、きっとそのおかげだね。すっかり力持ちになっているみたいだ」
「ほんとう? ほんとうにそうならいいな。ぼく、強くなりたいんだ。今度は大切な誰かを、ぼくが守れるように」
ギィはそれを聞くと、にっこりと笑いました。
「きみならできるさ」
「うん。……ねぇ、ギィ兄さん」
「なんだい?」
「ほんとうに、ありがとう……」
ギィは体を起こすと、ジェラルドを優しいまなざしで見ました。ジェラルドも起き上って、真剣な表情でギィを見つめました。ギィが何か大切なことを言おうとしていることがわかったからです。
「ジェラルド、ぼくからひとつ、きみに頼みがあるんだ」
「うん、なんでも言って。ぼく、なんだってするよ」
「約束してほしいんだ。ぼくの分まで、精いっぱい生きるってこと」
ジェラルドは思わず息を止め、ギィを見ました。
「ジェラルド、ぼくはこれからも、きみの中で生き続ける。だからきみは、きみ自身とぼくの分、二匹分の一生を精いっぱい生きる。楽しいときは二匹分楽しんで、悲しいときはその悲しみをぼくと分け合う。そうやって、大人になってからも、ずっとぼくをきみの中に住まわせて生きていく。どうかな? 約束してくれるかい?」
ジェラルドはあふれた涙をごしごしと腕でぬぐうと、ギィを見つめて何度もうなずきました。
「約束するよ。兄さんの分まで、兄さんと一緒に、力いっぱい生きる……」
「ありがとう、ジェラルド」
二匹は固く抱き合いました。
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